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短期金融市場におけるマイナス金利取引

2005年 1月 5日
日本銀行金融市場局

日本銀行から

 以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら(ron0501a.pdf 416KB)から入手できます。

要旨

 量的緩和政策の下では、無担保コール市場などでマイナス金利取引が観察された。市場では、為替スワップ市場においてマイナスの金利(円転コスト)で円資金を調達した外国銀行が、短期金融市場にマイナス金利で資金を放出した、と指摘されている。為替スワップは、ある時点での通貨売買と、将来時点での反対売買を同時に約定する取引である。見方を変えると、一定期間、異なる通貨で運用・調達を行う取引である。外貨資金を原資に円資金を調達することを円転、円資金を原資に外貨資金を調達することを円投と呼び、その際のコストをそれぞれ円転・円投コストと呼ぶ。

 為替スワップ市場は、輸出入企業、投資家、そして銀行などが、対顧客取引のヘッジ、資金繰り、および裁定・積極的なポジション操作など、多様な取引を持ち込む市場である。その市場において、円転コストは、1990年代後半に、邦銀の信用力に対する懸念を主因としてマイナス化した。近年、邦銀の信用力は回復しつつあるが、それでも、円転コストがマイナス化するケースが頻発している。

 理論上の想定では、リスクの存在しない世界において、円転・円投コストは、それぞれ、円・ドルのリスクフリー・レートと等しくなる。現在であれば、円転コストはゼロ%近辺となることが想定される。しかし、実際の市場では、円・ドルに対する需給圧力の相対的な大きさの影響を受けて、円転・円投コストが振れることは十分に起こりうる。

 期末・年末越えの資金手当てや、ドル金利などの見通しに基づくポジション構築、さらには邦銀の信用力を巡る内外市場における見方の相違などを反映して、ある一定期間の取引においてドルに対する選好が強まることがある。円のリスクフリー・レートがゼロ%近辺まで低下しているなかにあって、為替スワップ取引でドルの希少性(需要)が高まると、円転コストのマイナス化は容易に発生する現象である。

 こうした特定資産の希少性に基づくマイナス金利取引は、他の市場でも観察されている。例えば、国債レポ市場における、国債貸借の裏側にある資金貸借レートであるSCレポレートは、頻繁にマイナス化している。これは、国債の特定銘柄に対する需要増加の効果が、ゼロ金利下ではマイナス金利というかたちで顕在化することによるものである。