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金融イノベーションと金融法制

2005年 1月
日本銀行企画局

日本銀行から

 以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら(ron0501c.pdf 142KB)から入手できます。

要旨

 金融市場や金融機関は、経済の先行きを巡るさまざまな不確実性が存在する中で、情報生産やリスク・マネジメントといった機能を果たしながら、経済活動に必要な資金の仲介を行い、効率的な資源配分の実現や経済の発展に寄与している。

 近年の情報技術革新やそのもとでの金融イノベーションは、上記のような金融市場や金融機関の機能を高め、資源配分の効率化や金融政策の効果波及メカニズムの向上に貢献するものといえる。同時に、このようなメリットを経済が十分に享受していくためには、技術や実務の変化に適切に対応し、これをサポートしていく法制面での基盤整備が不可欠となる。こうした取り組みは、わが国金融市場を国際的に競争力のある市場としていく上でも重要である。

 こうした中で金融法制が直面した課題は、以下の3つの視点から整理できる。

 一つ目は、情報技術革新などを取り込んだ新しい金融取引をサポートしていくという視点である。このような視点に立って、近年、広範な証券のペーパーレス化・無券面化など、従来は紙ベースの技術に立脚する面が強かった法制を電子的な取引に対応するものに改めていく作業が進められた。また、「証券化商品」や「市場型間接金融」など、リスクやリターンの新しい組み合わせを実現したり、資金の運用・調達におけるエージェンシー・コストを引き下げることを可能とする新たな取引・商品の発達を促す方向での法整備も行われた。

 二つ目は、リスク・マネジメントという視点である。すなわち、金融機関をはじめとする市場参加者が直面するリスクが一段と多様化・複雑化する中、市場参加者自身によるリスクの管理・削減に向けた取り組みをサポートしていく観点から、例えば、取引当事者によるネッティング契約の有効性を明確にするといった法整備が進められてきた。

 三つ目は、投資家保護という視点である。すなわち、金融商品の裾野や販売チャネルが拡大する中、これらに関する情報開示の確保や、不適切な説明などにより損害を被った投資家への事後的な救済を拡充させていくという観点からも、いくつかの法整備が行われてきた。

 金融法制を含めた各種の制度的インフラについては、今後とも、(1)技術革新や顧客ニーズを反映した新しい金融取引・商品の発達や、市場参加者のリスク・マネジメントの取り組みをサポートするものとなっているかどうか、(2)透明性の高いものとなっているかどうか、さらに、(3)投資家保護が十分に確保されているかどうか、といった観点から、検証が続けられていく必要があろう。