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企業収益の改善とその日本経済への含意

2005年 9月20日
日本銀行調査統計局

日本銀行から

 以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら(ron0509a.pdf 456KB)から入手できます。

要旨

  1.  景気が回復を続ける中、企業の収益は2002年度以降、大幅に増加している。今回の企業収益の改善には、(1)幅広い業種で収益が高水準になっていること、(2)固定費が大幅に削減され、その後も総じて抑制されていること、(3)緩やかな物価下落と増収増益が並存してきたこと、といった特徴がある。
  2.  こうした特徴を持つ今回の増益の基本的な背景としては、(1)金融危機の経験や経営に対する市場規律の高まりから、企業が本腰を入れてリストラに取り組んだこと、(2)総じて良好な世界経済環境に恵まれたこと、(3)債務、設備、雇用に関する「三つの過剰」の後退などを背景に、内需の回復に広がりがみられるようになってきたこと、の3点が重要であったと考えられる。
  3.  2005年度については、海外経済がやや減速することや、固定費もこれまでと同じようには抑制されにくくなるとみられることなどから、2004年度までのような大幅な増益は難しいと予想される。しかし、既に高水準に達している企業収益が、当面の設備投資を支えていくとみられ、また雇用者所得への波及も徐々に明確になってきている。配当や自社株買いなど株主への資金還元も進み始めた。これらを背景に内需が底堅さを増し、それが再び企業収益を支えるという好循環は、少しずつにではあるが、しっかりしたものになってきている。
  4.  しかし、少子高齢化や財政赤字問題など、日本経済が直面している問題の大きさを考えると、国民所得の源泉である企業の収益力や成長力が、なお一層強化されていくことが望まれる。収益機会も多いが競争も厳しいグローバル市場の動きに機動的に対応し、日本企業がその価値を一段と高めていくことができるかどうかは、日本経済の将来に重い意味を持つものと考えられる。