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金融機関におけるシステム外部委託の現状について

(地域金融機関377行庫へのアンケート調査結果から)

2008年8月20日
日本銀行金融機構局

はじめに 〜 本稿の趣旨

 金融機関のコンピュータ・システム(以下、システム)に関する開発・運用業務については、従来から外部委託1が進展してきており、委託先への依存度が高まってきている。また近年では、複数金融機関によるシステムの共同委託(共同システムの利用)が広範化しているほか、委託先から海外も含む第三者へ再委託するケースが見受けられ、大手金融機関等ではASP、SaaS2といった新しい委託形態も現れつつある。

 こうした委託形態の多様化に伴い、委託元である金融機関から見ると、システムは「ベンダーによって提供されたものを利用する」という色彩が濃くなり、委託構造が重層化するにつれ、委託先管理の実効性を確保することが困難化しているように窺われる。

 こうした状況を踏まえ、日本銀行では、数年前からシステムの委託先管理を重点調査対象とし、考査等を通じて金融機関の対応状況を確認してきたが、勘定系等の重要システムにおいても、委託先管理が十分でない事例が少なくないのが実情である。

 今般、こうした問題意識から、金融機関におけるシステムの外部委託の現状に関し、アンケート調査を実施した。本稿はこのアンケート結果をもとに、システム外部委託の現状を概観するとともに、委託先管理にあたっての基本的考え方を示そうとするものである。各金融機関において、委託先管理の改善・向上に取り組んでいくうえでの参考材料として活用していただくことを期待している。

  1. 本稿においては、「外部委託」という用語を、「他の企業に業務委託を行い当該企業の日常的な管理の下で業務執行が行われる」ケースを想定して使用している。一方、「派遣社員受入」のように、他の企業への業務委託(人員の派遣依頼)は行われているものの、業務執行の日常的な管理を委託元金融機関自身が行っているケースについては含めていない。なお、外部委託は、「アウトソーシング」と同義で用いている。
  2. Application Service Provider、Software as a Serviceの略。ユーザーが必要とするシステム機能を既存サービスとしてネットワークを経由して提供する点で共通する。SaaS(サース)については、(1)インターネット経由で利用する、(2)ユーザー側がアプリケーションの設定をカスタマイズできる、といった特徴があり、最近各業界で利用が広がりつつある。

アンケート調査の概要

実施時期  :2008年4月
対象金融機関:377行庫(うち地域銀行109行、信用金庫のうち日本銀行取引先268信金)
対象システム:勘定系システム

本件に関する照会先

日本銀行金融機構局

システム関連考査担当 03-3277-1932
江見 明弘、水崎 玲

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融機構局までご相談ください。
転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。