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東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局 第3回共催コンファレンス

:「2000年代のわが国生産性動向 — 計測・背景・含意 —」の模様

2010年2月2日
日本銀行調査統計局

要約

東京大学金融教育研究センター(CARF)と日本銀行調査統計局は、2009年11月26、27日の両日にわたり、日本銀行本店にて、「2000年代のわが国生産性動向 — 計測・背景・含意 —」と題するコンファレンスを共同開催した。本稿はその模様を取りまとめたものである(プログラム参照)。

2005年11月の第1回共催コンファレンス「1990年代以降の日本の経済変動」および2007年11月の第2回共催コンファレンス「90年代の長期低迷は我々に何をもたらしたか」では、主としてバブル崩壊後の長期低迷局面に焦点を当て、わが国経済の直面する様々な課題が論じられた。第3回目に当たる今回のコンファレンスは、2000年代入り後の生産性動向(計測結果、背景分析、理論・計測上の留意点)を題材に議論を行うことによって、(イ)わが国経済は90年代の長期低迷から脱出したのか、(ロ)マクロ生産性や経済成長率を中長期的に高めていくには何が必要なのか、といった問題意識に応えるためのヒントや考え方のフレームワークを共有することを目的とした。

コンファレンスでは計10本の論文が報告され、それぞれ活発な議論や質疑応答が行われたほか、全体の総括討議も行われた。以下はその要旨である。

  1. (1)2000年入り後にみられたわが国の労働生産性あるいはTFPの加速については、景気循環的な現象に過ぎなかったという意見と、循環を超えて構造的な改善もあったという意見に分かれた。生産性の短期変動から循環要因を完全に取り除くことの難しさを指摘する意見は多く、また、統計データが遡及改定される可能性もあるため、最終的な評価はさらなるデータの蓄積を待って行うことが妥当とされた。
  2. (2)2000年代における生産性上昇の背景については、IT財の生産セクターにおける技術進歩、中国などアジア諸国との生産分業体制の確立、企業リストラによる一時的な効果などが挙げられた。しかし、IT技術の利用面に目を向けると、製造業の生産現場での成功例はあるものの、非製造業の生産性あるいは企業経営全体の効率化に対しては、組織資本や人的資産の蓄積不足もあって、目立った成果が上がっていないことが指摘された。また、退出が効率的に進んでいないなど、わが国企業部門の新陳代謝機能は引き続き弱く、その背後には労働市場の硬直性や金融市場における非効率な資金配分、企業ガバナンスの欠如など、90年代の低迷の原因となった問題が未解決のまま残されていることを指摘する意見も多く出された。
  3. (3)マクロレベルの生産性を中長期的に高めていくことが、1人当たりの経済成長や所得水準の上昇を達成するうえで極めて重要であることは、参加者の間で合意された。その一方で、生産性を産業レベルで横断的に比較する場合には、(イ)産業ごとの需要構造(所得、価格に対する弾力性)の違いや、(ロ)サービス産業等で特にみられる生産性の計測誤差に留意しないと、その評価や政策的な含意を間違える危険があることが、理論モデルの構築や実証分析、統計作成実務の紹介を通じて具体的に示された。また、こうした生産性に関する知識や研究の成果を社会に広く浸透させる意味でも、サービス分野を中心に統計データの整備がさらに進むことが望まれる、とされた。

日本銀行から

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