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「業務継続体制の実効性確保に向けた確認項目と具体的な取組事例(増補改訂版)」別冊:東日本大震災において有効に機能した事例と同震災を踏まえた見直し事例

2012年1月31日
日本銀行金融機構局

はじめに

日本銀行では、業務継続体制を整備するうえで「整備が必要な項目」を整理するとともに、わが国金融機関における先進的な取組事例等を紹介する目的で、2008年5月に「業務継続体制の実効性確保に向けた確認項目と具体的な取組事例」を公表した。2010年3月には、新型インフルエンザ等の感染症に着目した対応を追加するとともに、多くの金融機関において取り組まれている基本的な事例に「◎」印を付した増補改訂版を公表した(以下、「確認項目と取組事例」)。

2011年3月に発生した東日本大震災では、観測史上最大の巨大な地震や津波によって多くの人命が失われ、建物等の倒壊も多数にのぼった。また、その後発生した原子力発電所の事故により、周辺地域への立入が制限され、多くの方が長期間にわたり避難を余儀なくされたほか、電力の供給不足も広範囲に及んだ。震災は金融機関にも大きな被害・影響をもたらしたが、震災発生後も、わが国の金融機関は全体として安定的に業務を継続し、金融インフラとしての機能を維持した。これは、被災地に所在する金融機関をはじめとする関係者が、震災後の業務継続に尽力した結果であるが、その背後には業務継続体制の整備に向けた日頃からの地道な取り組みがあると思われる。

東日本大震災の経験を踏まえ、被災シナリオや業務継続計画の十分性を改めて点検し、その実効性のさらなる向上に取り組んでいる金融機関は少なくない。本稿では、被災地に所在する金融機関等や震災後に体制の見直しを図っている先にヒアリングを行った結果等に基づき、震災に際して有効に機能した対応や、震災を契機に見直されている事例を紹介する。なお、業務継続体制整備の基本的な枠組みは「確認項目と取組事例」に示されており、本稿はその別冊との位置づけである。

本稿では、まず、東日本大震災において有効に機能した事例と同震災を踏まえた見直し事例について、全般的な整理を行った(とりわけ多くの金融機関で取り組まれているものに「◎」印を付した)。

次いで、今回の経験を通じて、改めてその準備が重要と考えられる「津波」、「停電」、「拠点が長期間使用不能となる事態」に着目し、整備が必要な項目と具体的な対応を紹介する。

東日本大震災で大きく注目された「津波」については、震災での被害の大きさをみると、沿岸部における準備が大切であるとともに、地震発生直後に迅速な対応が求められる危機管理の観点も重要であることが浮き彫りになった。本稿では、こうした観点から沿岸部に拠点を置く金融機関に整備が求められる項目を整理した。

「停電」については、これまでの突発的な停電だけでなく、被災地での長時間に及ぶ停電や電力の供給制約に伴う計画停電といった新しい事態にも対応できるよう、整備が必要な項目と取組事例をまとめた。

地震、津波、原発事故で経験した「拠点が長期間使用不能となる事態」については、「確認項目と取組事例」の枠組みが基本となるものの、長期間の閉鎖に対して特有の取り組みが必要となる部分もあるため、これを整理した。

もとより、業務継続体制の整備については、各金融機関の置かれた環境や立場によって被り得る災害や期待される対応水準が異なるうえ、対応策には多様なアプローチがあり得る。また、本稿で紹介する事例には、総論的なものから技術的なものまで様々なものが含まれている。各金融機関においては、「確認項目と取組事例」とともに本稿も参考にしながら、自らにとって適切な対応を検討し、業務継続計画の実効性を着実に高めていくことが期待される。

日本銀行としては、業務継続体制の整備について金融機関との議論をさらに深め、ひいては被災時におけるわが国の金融・決済システムの安定性向上に繋げていきたいと考えている。

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融機構局までご相談ください。
転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

金融機構局考査企画課システム・業務継続グループ

富岡 則行、小嶋 健一
E-mail : csrbcm@boj.or.jp

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