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米国の製造業における1980年代〜90年代の経営改革

2015年3月9日
日本銀行調査統計局
通傳友浩*1
西岡慎一*2

要旨

1990年代に低下したわが国製造業の収益力は、2000年代以降、回復傾向にあるが、収益率の水準は、米国の製造業などと比べるとなお低位である。一方、米国の製造業は1970年代を中心に収益力の低下に直面したが、1980年代から90年代にかけて、多方面にわたる経営改革を行い、収益力を向上させた。この経営改革の主なものとして次が挙げられる。(1)1970年代にかけて採られた多角化戦略が非効率経営を招いた点を踏まえ、選択と集中を徹底したほか、アウトソーシングや海外生産シフトなどの活用を進めた。(2)経営陣を内部昇格者から外部CEO・社外取締役にシフトさせるなど、ガバナンス構造を変化させた。

上記の経営改革は、企業経営に大きな変化をもたらしたほか、米国の経済全体にも影響が及んだ。その主なものとして次の3点を指摘できる。(1)製造業の雇用吸収力は低下したものの人材の高度化が進められ、収益力は向上した。収益力向上は、株価の上昇や配当の増加につながり、国内需要の喚起に一定の貢献を果たした。(2)不採算分野からの撤退や新規分野の創出が行われるなかで、製造業内での産業構造が変化し、コンピュータ関連など高付加価値分野がシェアを伸ばした。(3)米国の産業構造の変化に合わせ、輸出における主力品目も変化し、海外生産シフトが進みつつも、米国輸出は比較的高い伸びを保った。

わが国製造業においても、当時の米国と同様の取り組みが行われてきているが、収益力の一段の向上を目指す観点からは、事業の選択と集中やガバナンス改革などの面で大胆な経営改革を実施してきた米国製造業の事例が、ひとつの参考となり得る。

  1. *1E-mail : tomohiro.tsuuden@boj.or.jp
  2. *2E-mail : shinichi.nishioka@boj.or.jp

日本銀行から

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