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スロー・トレード:世界貿易量の伸び率鈍化

2016年10月20日
日本銀行国際局
高富康介*1
中島上智*2
森知子*3
大山慎介*4

要旨

世界の貿易量(実質輸入)は、2008年の金融危機以降伸び率が鈍化し、世界の実質GDP成長率を下回る状況が続いている。こうした世界の貿易量の伸び率鈍化は「スロー・トレード」と呼ばれ、地域別にみると新興国において、財別にみると資本財、中間財、耐久消費財において顕著な現象である。

世界貿易量の伸び率鈍化の背景は、(1)世界の実質GDP成長率の低下、(2)世界の需要構造の変化、中国での内製化進展、グローバル・バリュー・チェイン(Global Value Chain)の拡大一服などに伴う貿易の所得係数(構造的な所得弾性値)の低下、(3)短期的な負のショックの影響、という3点に整理できる。定量分析によると、金融危機以降の世界貿易量の伸び率鈍化分のうち7割方が2つの構造要因——世界の潜在成長率の低下と貿易の所得係数の低下——に起因する。一方、残りの3割は負の需給ギャップや短期的な負のショックなど循環要因による。

世界の貿易量の先行きを展望すると、構造要因による伸び率鈍化分が直ちに回復するとは考えにくいが、循環要因の影響は次第に小さくなると期待される。本稿の分析で推計された金融危機後の貿易量の所得係数が1.0程度であることを考慮すると、世界貿易量の伸び率は世界の実質GDP成長率並みまで回復すると見込まれる。ただし、英国とEUとの経済関係や新興国での調整の進捗など、貿易を取り巻く不確実性はなお大きい点には、注意が必要である。

  1. *1日本銀行国際局(現総務人事局<ウィスコンシン大学マディソン校留学中>) E-mail : takatomi@wisc.edu
  2. *2日本銀行国際局(現総務人事局<国際決済銀行出向中>) E-mail : jouchi.nakajima@bis.org
  3. *3日本銀行国際局 E-mail : tomoko.mori@boj.or.jp
  4. *4日本銀行国際局 E-mail : shinsuke.ooyama@boj.or.jp

本稿の作成では、日本銀行スタッフから有益なコメントを得たほか、西崎健司と稲場広記の分析を参考にした。また、Charlotte Emlinger 氏(CEPII)からデータを提供していただいた。記して感謝の意を表したい。残された誤りは、全て筆者らに帰する。なお、本稿の内容と意見は筆者ら個人に属し、日本銀行の公式見解を示すものではない。

日本銀行から

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