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東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局第8回共催コンファレンス:「近年のインフレ動学を巡る論点:日本の経験」の模様*

2019年6月27日
日本銀行調査統計局

要旨

東京大学金融教育研究センターと日本銀行調査統計局は、2019年4月15日、日本銀行本店にて、「近年のインフレ動学を巡る論点:日本の経験」と題するコンファレンスを共同開催した。そこでは、インフレ予想の形成過程とそのインフレ動学に対する影響、賃金上昇が抑制されるメカニズム、消費者物価指数の計測誤差、社会厚生を最大化するインフレ率などに関する計6本の論文が報告された。また、全体の総括討議も行われ、(1)現時点で2%の物価安定目標を達成していないのはなぜか、(2)物価安定目標が長期にわたって未達成であることは社会厚生からみて問題があるのか、という二つの論点が議論された。

第一の論点については、インフレ予想形成に歴史依存性があるもとで、過去の長期にわたるデフレの経験の影響がみられていることに加えて、賃金の上方硬直性も影響しているとの意見が多くみられた。もっとも、このところ賃金に下押し圧力をもたらしてきた弾力的な労働供給による影響は、遠からず減衰する、すなわち「ルイスの転換点」を迎えるとの見方も示された。

第二の論点については、まず、名目為替レートの変動が実体影響に悪影響を与える可能性などを踏まえると、他の中央銀行と同程度の物価安定目標は維持した方がよいとの意見などが聞かれた。その上で、物価安定目標が達成されていないことについての社会厚生上の評価は分かれた。すなわち、インフレのコストを巡る一連の先行研究や報告論文における結果にもとづき、これに伴う厚生費用が必ずしも大きくない可能性が指摘された一方、これらの研究は失業に伴う厚生費用を過小評価しているとの声も聞かれた。また、複雑な現実経済をより的確に描写できるような理論モデルを用いた分析が可能となるまで、結論は留保すべきとの見方も示された。

  • 本稿で示されたコンファレンス内での報告・発言内容は発言者個人に属しており、必ずしも日本銀行、あるいは調査統計局の見解を示すものではない。

日本銀行から

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照会先

調査統計局経済調査課経済分析グループ

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