「生活意識に関するアンケート調査」(第6回)の結果
1998年 6月 1日
日本銀行情報サービス局
(日本銀行から)
以下には、調査結果の概要を掲載しています。調査結果を含む全文は、こちら (ron9806a.pdf 134KB) から入手できます。
(はじめに)
日本銀行では、政策・業務運営の参考とするため、本店や支店を通じた広報活動のなかで、国民各層の意見や要望を幅広く聴取するよう努めていますが、その1つの手法として、平成5年以降、毎年、全国20歳以上の男女個人4,000人を対象に「生活意識に関するアンケート調査」を実施しています。この調査は、日本銀行が四半期毎に行っている「企業短期経済観測調査(短観)」のような統計指標としての調査ではなく、生活者の意識や行動を大まかに窺う一種の世論調査です。
(調査概要)
・調査実施期間…平成10年3月20日(金)〜3月30日(月)
・調 査 対 象 …全国の20歳以上の男女個人
・標 本 数 …4,000人(有効回答者数3,213人<有効回答率80.3%>)
・抽 出 方 法 …層化2段無作為抽出法
・調 査 方 法 …設問票によるアンケート調査(訪問留置法)
(調査結果の概要)
○ 今回で第6回目となる「生活意識に関するアンケート調査」では、家計支出減退の背景を探ることを念頭において、「経済構造の変化が進む中での生活者の意識と行動がどのように変わっているか」という観点から生活者に対し実体経済活動や金融に関する様々な質問を試みたが、その結果について要点は以下の通り。
1.現在関心を持っている経済問題
○ 現在生活者が関心をもっている経済問題としては、以下のように「景気」、「金融システム問題」への関心が高まっていることが特徴。
1) 「景気」に対する関心が最も高く(回答者全体の7割が「関心あり」と回答)、かつ昨年同時期実施の前回調査<以下同じ>対比でも、大きく関心が高まる形となった(前回対比+10%)。
2) 「金融システム問題」は、抽象的なワーディングでもあり、これまで関心の低い項目であったが、今回は、「景気」と並んで前年調査を大きく上回り、「雇用」・「収入」に近い関心を持たれている。
3) 昨年の消費税率引上げ直前に実施された前回調査(9年3月19日〜30日調査)で注目の集まった「物価」については、今回調査では大きく関心が低下(同−12%)。
2. 最近の生活者の景況感と消費意識
(1)景況感
○ 前回調査と比べ以下のように「悪くなっている」との回答が拡がり、先行き厳しさが増す形となった。
1) ここ数回の調査では、いずれも「1年前に比べて景気が悪くなっている」と判断した人が「良くなっている」と判断した人を上回っているが、その割合は、前回、前々回調査が、回答者全体の3割程度であったのに比べ、今回調査では全体の7割に達しており、景況感悪化の拡がりがみられる。
2) また「悪くなっている」と答えた人のうち、約半分が「不景気はこれまで経験したことがないくらい深刻で、企業の自助努力等では対応に限界があろう」とし、先行展望も含めネガティブな見方。
3) なおこうした景気判断に当たっては、先の「金融システム問題」への関心の高まりとも絡むが、「マスコミを通じて」判断したという人の寄与度がかなり高まっている。
(2) 現在の暮らし向き
○ 自分の暮らし向きについては、1年前に比べ「苦しくなってきた」との回答が半数弱となっているが、同時にほぼ同程度の人が「どちらとも言えない」としており、「景況感」における「悪くなっている」(全体の7割)に比べると、全体に占める割合は限られている。
(3)収入、支出
○ 生活者の収入、支出状況については、1年前と比較して、収入、支出のいずれにおいても、「増えた」とする人の割合が減り、「減った」とする人の割合が増加した。この結果、この1年間で支出を「減らしている」人が「増やしている」人を上回る割合は、前回調査対比で、大きく上昇した(17%−>35%<+18%>)。これをさらに収入の増減別で区分してみると、この1年間で収入が「減った」層よりも、むしろ、収入が「増えた」層、もしくは収入が「変わらない」層で支出を抑制する傾向が強いという特徴がみられた。さらにこのように支出を抑制していると答えた人々に対し、その理由を尋ねたところ、最も多くの人が「将来の仕事や収入に不安があるから」と答えたほか、「税制や医療保険制度の改正等に伴う負担増」、「年金や社会保険の給付が少なくなるとの不安」といった点についても、各々半数近くの人々が、支出抑制の理由として指摘しており、最近の消費支出の抑制の動きには、足許の雇用、所得環境の悪化といった要因もさることながら、将来に対する不安感が、生活者の消費マインドに影を落とし、これが支出面に影響を及ぼしていることが窺われた。
(4) 基本的な支出スタンスと減税の使い道
○ さらに今後の支出に関する基本的なスタンスについて、半数以上の人が「現在の収入よりも将来の不安があるかないかで支出は変わる」と答えているほか、減税等により収入が増えた場合の使途に関しても、「その殆どを支出する」と答えた人は2割弱にとどまる等、当面、生活者の慎重な支出態度が続くことが窺われた。
3.日本経済の成長力に対する中長期的評価
○ 次にこうした将来展望に関連して、生活者が日本経済の成長力に対し、どのような評価を行っているかをみると、以下の通り。
1) 「日本経済はなお成長を続けられる」と答えた人は全体の2割弱であったのに対し、全体の半数以上の人が、「あまり成長は期待できない」と回答している。こうした傾向は、すべての年齢層に共通であり、わが国経済の将来に対する生活者の悲観的な見方の広がりを示した。
2) 「あまり成長は期待できない」と答えた人にその理由を尋ねたところ、「高齢化・少子化」、「財政問題の深刻化」、「金融システム問題」といった、日本経済の直面する中期的な構造要因を挙げる人が最も多かった。
4.雇用環境の変化と生活者の就労意識
○ 雇用環境と生活者の就労意識についての結果をみると、1)まず雇用や事業の現状については、全体の8割弱の人が何らかの不安を感じているほか、企業のリストラについても、引続き3割超の先において実施されており、2)その内容も「給与カットや賃金制度の見直し」といったドラスティックなものの割合が相対的に高まっている。こうした中、生活者の就労意識は、この2年ほどの間に、「実力主義」、「転職」を前向きに捉える人の比率が若干高まったものの、一方で「年功制」、「終身雇用」を支持する人の割合もほとんど変わっていない。
5.最近の金融システム問題の受け止め方
○ 一方金融機関経営、金融システム問題については、7割強の人が関心を示し、最近の金融機関の経営破綻に際しても、全体の4分の3が仕事・収入や自分の貯蓄に何らかの不安を感じている。これに伴い預金保険制度に関する認知度は前回調査対比高まったが、それでも依然として回答者全体の半数弱が同制度を「まったく知らない」と回答している。こうした中、金融自由化や自己責任原則に対しては、生活者の受け止め方に大きな変化は見られていない。
