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わが国の間接金融中心の金融構造は変化したのか?

2002年 6月25日
越智誠

日本銀行から

経済点描は、景気動向や中期的な経済テーマ、あるいは経済指標・統計に関する理解を深めるための材料提供を目的として、日本銀行調査統計局が編集・発行しています。ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (rkt02j02.pdf 43KB) から入手できます。

要旨

 わが国の金融構造に関する特徴のひとつとして、銀行など金融機関を経由して資金が流れる、いわゆる間接金融が中心となっている点が指摘されてきた。もっとも、過去10年程度といった長い目で見ると、こうした傾向に変化の兆しも窺われる。実際、企業や政府など国内非金融部門の資金調達に占めるウェイトの変化をみると、依然米国に比して高い水準にあるものの、借入が低下する一方で証券が上昇しており、確かに直接金融が拡大しているように見える。

 一方、これを資金の供給主体である家計側からみると、全く異なる姿が浮かび上がる。1990年度末と2001年度末における家計の金融資産を比較すると、元々米国に比して著しく高かった現金・預金のウェイトがさらに高まったほか、保険・年金準備金1)のウェイトも上昇した。これに対し、証券のウェイトは大幅に低下している。言うまでもなく預金や保険・年金の資金はそれぞれ銀行等や保険会社など金融機関に払い込まれるものであり、家計の金融資産という観点からはむしろ間接金融が拡大しているように窺われる。

 近年、わが国では、このように一見矛盾する二つの事象が同時に生じているが、これはどのように解釈すれば良いのであろうか。そこで、以下では、資金の流れの変化という切り口からこの謎に迫ってみたい。

  1. 1)保険・年金準備金の保険は、積立型商品のみを対象としており、掛捨型商品は含んでいない。また、年金は、個人年金や企業年金を対象としており、公的年金は含んでいない。