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新しいケインズ経済学の下での最適金融政策分析:裁量とコミットメントの意義

2005年11月 2日
企画局
三尾 仁志

日本銀行から

 日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するものです。ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

 内容に関するご質問は、日本銀行企画局 加藤までお寄せ下さい。

 以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (rev05j15.pdf 385KB) から入手できます。

要旨

 マネタリー・エコノミクスの分野では、社会厚生を最大化する金融政策のことを「最適金融政策」と呼ぶ。本稿では、現在の経済変数の水準が、将来の経済変数に対する予想に依存して決まるという性質を持つ「新しいケインズ経済学」の基本モデルを用いて、最適金融政策を分析する。この分析によれば、経済の総需要面にショックが発生する場合、中央銀行は金融政策によってインフレ率とGDPギャップを完全に安定化することができる。他方、経済の総供給面にショック(価格ショック)が発生する場合、中央銀行は金融政策によってインフレ率の変動を抑える程、GDPギャップの変動を大きくせざるを得ないという状況に陥る。このとき、中央銀行が将来の金融政策について公表し、その実行を約束(コミットメント)できるなら、将来のインフレ率に対する予想に影響を及ぼすことで上記のような状況を改善し、社会厚生を高めることができる。本稿では、現実の金融政策運営を考えるにあたり、こうした分析がどのように役立つか、あるいはこうした分析にどのような限界があるかについて考察する。