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ヘッジファンドの投資行動変化と金融市場への影響

〜ポジションの集中および投資対象拡大と市場流動性リスク〜

2006年11月30日
東尾直人
寺田泰
清水季子

要旨

ヘッジファンドは、大量の資金流入や世界的な株価上昇等を背景に、近年その投資行動を変化させてきている。ヘッジファンドのデータベース1等を分析したところ、株式買い持ち(ロング)ポジションの拡大、新興国市場・コモディティ市場に対する投資の増加、ヘッジファンド戦略間の相関の高まりなどが観察された。ヘッジファンドは金融市場への流動性供給や市場の効率性向上の観点から、市場で重要なプレゼンスを有しており、その投資行動が一方向に偏る場合や、特定の市場、とりわけ規模が小さく流動性の低い市場に集中する場合には、市場価格変動を増幅させる可能性がある。投資行動の偏りや特定の市場への集中は、ヘッジファンドに投資する投資家にとっても、リスク分散効果の低下等の形で影響を及ぼしている可能性がある。中央銀行は、ヘッジファンドの投資行動の変化を適切に把握するとともに、市場参加者との緊密な情報交換等を通じて、ショック時にも市場流動性が安定的に確保されることをサポートする役割を果たすことが期待されている。

  1. 本稿におけるデータベースとは、Lipper TASS Databaseを指す。06/8月末の登録ファンド数は4,310。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するものです。
ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

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