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中小企業の資金繰りを巡る論点

ABLと電子記録債権による売掛金の活用

2011年6月30日
金融機構局 代田豊一郎、今久保圭、西岡慎一

要旨

わが国企業の資金繰りは、東日本大震災の発生以降も、総じてみれば大幅な悪化を免れ、改善した状態にある。しかし、中小企業の中には、資金繰りの逼迫が常態化しているうえに、直接的な被災の有無にかかわらず、震災後にその厳しさを増した先もある。試算によると、中小企業の半数は、銀行借入の担保になり得る不動産などの保有が少なく、借入制約に直面しやすい状況にある。また、そうした企業は、収益率が低く、内部留保や手元流動性の蓄積が進みにくいほか、売上の相当額が売掛金の形で即座に資金化されずにいる。この売掛金を効率的に資金化することができれば、資金繰りの改善に繋がり得る。ABL(動産・債権担保融資)や電子記録債権による売掛金の活用は、中小企業の資金繰りを円滑にする有力な手段になるであろう。企業の円滑な資金繰りは、企業の成長力強化の観点からも不可欠と考えられる。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行金融機構局 今久保圭(kei.imakubo@boj.or.jp)までお知らせください。