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「全国企業短期経済観測調査」における欠測値補完の検討

2001年 8月
宇都宮浄人
園田桂子

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (cwp01j11.pdf 1,142KB) から入手できます。

(要旨)

 現在の全国企業短期経済観測調査(短観)では、設備投資額などの計数項目において欠測値が発生した場合、欠測値に各層の回答値の平均を代入する形で、母集団推計を行っている。しかし、今後、回答率の低下等が生じた場合に備え、より適切な欠測値補完の方法を検討することが必要である。

 短観は、現在のところ95%程度の回答率を得ているが、設備投資という項目単位でみると、調査回別では、3月調査回で回答率が低くなる傾向がある。一方、欠測値となった企業の属性をみると、2割程度の層で、設備投資、売上高の金額の小さい企業に欠測が発生する傾向がみられたが、全体としてみれば、はっきりとした関係はみられない。

 短観の場合、実態に近い平均値を偏りなく求めることが主眼である。したがって、欠測の発生メカニズムが層内の企業の属性と独立であるとき、現行の欠測値補完方法に理論上の問題があると言い切れない。ただし、層内のばらつきを考えると、欠測企業が偶々平均値と大きく乖離してしまう場合を考慮する必要がある。また、代替手法を考える場合には、迅速な処理を妨げないような簡単な補完方法が求められる。

 そこで、短観の代表的な計数項目である設備投資、売上高、経常損益について、(1)現行の方法(「平均値補完」、Mean Imputation)、(2)回答のある直近調査回の値の代入(「横置き補完」、Cold Deckの一手法)、(3)前回調査回の値に層内の回答者の前回調査比(3月調査時における計画の場合は、初回調査であることから前年比)伸び率を乗じた値の代入(「伸び率補完」、Hot Deckの一手法)の3つを選択肢として比較検討したところ、現行「平均値補完」よりも代替手法の方が精度は高いとの結果になった。

 また、代替手法として、「横置き補完」と「伸び率補完」を比較すると、シミュレーションによって結果の分かれるケースがあったが、総じてみれば、「横置き補完」を示唆していると判断された。

 さらに、3月調査における翌年度計画の半期毎の値を補完する手法を比較検討したところ、売上高は、前回調査で回答のあった当年度計数の上期・下期計数をそれぞれ代入する方法(「上期・下期別補完」)が望ましいという結果になった。一方、経常損益、設備投資は、業種や規模によって精度の高い補完方法が異なる結果となったが、全体としてみると、経常損益は、「上期・下期別補完」、設備投資は、前回調査で回答のあった当年度計数と年度総額が一致するように計数を等分して代入する方法(「等分補完」)が望ましいと判断された。