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GDPギャップの推計と供給サイドの構造変化

2001年10月
宮尾龍蔵

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には[要旨]を掲載しています。

要旨

GDPギャップの大きさを正確に推計することは、マクロの政策判断にとって欠かすことのできない視点である。本稿は、経済企画庁(2000)および鎌田・増田(2001)に立脚し、わが国のマクロ生産関数に基づくGDPギャップ推計の問題を取り上げる。ここでは特に、鎌田・増田(2001)で論じられた「従来型」と「修正型」の2つの推計方法を取り上げ、両者の妥当性について、総供給関数/フィリップス曲線との整合性―ここではインフレ率とGDPギャップとの共和分関係―という観点から比較検討する。その結果、共和分関係は、従来型からは支持されなかったが、修正型からは一貫して支持され、修正型GDPギャップの妥当性が確認された。また同じフィリップス曲線に関する構造変化について検証したところ、1990年代に入り、曲線の傾きが緩やかになった可能性が示唆された。最後に、インフレの予測力についても比較してみたが、修正型の共和分モデル(構造変化付き)を考慮したモデルの予測パフォーマンスが最も高く、修正型GDPギャップの優位性が再び示された。