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リスクの観点からみた金融統合の効果と影響*1

2001年 1月29日
大橋一成
濱田秀夫
隅田慶子

日本銀行から

日本銀行信用機構室ワーキングペーパーシリーズは、信用機構室スタッフ等による調査・研究成果をとりまとめたもので、内外の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは信用機構室の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せください。

全文は、こちら (fwp01j01.pdf 197KB) から入手できます。

  1. *1本ペーパーはG10D Working Party on Financial Sector Consolidation作成のレポート("Summary Report and Individual Chapters"<G10D Home Page address: www.bis.org(外部サイトへのリンク)>)の執筆に参加した筆者等が、日本に関する部分(ChapterIII: Effects of consolidation on financial risk, 5. Effects of consolidation in Japan)を同Working Partyの諒解を得た上、筆者個人の意見等も加味しつつ加筆・修正を行ったものである。本稿の作成にあたり、多数の市場関係者、有識者および日本銀行スタッフの協力を得た。記して感謝したい。なお、本稿の内容および意見は執筆者個人に属し、日本銀行、あるいは信用機構室の公式な見解を示すものではない。

 1990年代半ば以降、世界的に巨大金融機関の再編が相次いでいる。わが国においても、金融システムが落ち着きを取り戻した1999年頃から、主要銀行、証券会社、保険会社等の統合が急ピッチで進展している。こうした金融再編の動きは、金融機関等1 が、(1)日本版ビッグバンによる金融の自由化やグローバル化に備えて、生き残りのための抜本的な経営リストラに取組もうとしていること、(2)IT技術の飛躍的な発展に伴い、「規模の経済」および「範囲の経済」がより大規模、広範囲に働くのではないかとの期待が強いこと等、が背景となっているように窺われる。

 金融再編と様々な金融リスクの間の関係については、現状、評価が分かれている。すなわち、一方で、金融再編によって巨大金融機関や金融コングロマリットが誕生すると、こうした金融リスクの集中が進展するため、金融システムは、これまで以上にリスクの波及(contagion)に対して脆弱になる可能性がある点を懸念する論調も見られる。他方、金融再編に伴い、リストラが十分に実施されれば、収益力や自己資本の量および質の改善等を通じて、個々の金融機関のリスク耐久力が増大する結果、金融システム全体がシステミック・リスクに対して強固になるのではないかとの見方も存在する。

 金融再編の進展の影響についてみると、株式持合いの解消や貸出債権の圧縮のニーズが高まり、株式市場や債券市場等の直接金融の成長が促されるといった側面も、既にみられはじめている。直接金融市場の発達は、資金仲介の経路を多様化するという意味でリスク分散効果を期待できる一方、アジア危機やロシア危機で経験されたように、市場発の金融危機は、急速に世界中に波及するリスクも存在する。

 このように、現在の金融再編の動きは、特に、信用秩序維持という観点から、監督当局や中央銀行にとって、複雑な課題を投げかけているといえる。以下では、最近の主要金融機関の統合の動きが、わが国の金融システムに与える影響について、主に「リスク」という観点から考察するとともに、そこでの議論をベースに若干の政策的インプリケーションを導きだすことを試みる。

  1. 本稿において、金融機関とは、基本的に銀行等の預金取扱金融機関を念頭に置きつつも、特に断りのない限り、証券会社、保険会社等のその他の金融機関も含む概念と定義する。