このページの本文へ移動

最近の米国の金融規制をめぐる動き

金融持株会社に関する規制を中心に

2001年 2月 8日
野々口秀樹

日本銀行から

日本銀行国際局ワーキングペーパーシリーズは、国際局スタッフによる調査・研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは国際局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せください。

以下には、(要旨)を掲載しています。

要旨

米国では、Gramm-Leach-Bliley Act of 1999(GLB法<金融近代化法>)が1999年11月に成立して以降、FRBをはじめとする金融監督当局によって多くの関連規則が制定されている。このうち、金融持株会社1に関する連邦行政規則をみると、まず、金融持株会社に転換するための適格要件を定めた最終規則が制定されている。このなかで金融持株会社への転換の可否については、自己資本や経営管理の評定を軸に、外国基準との同等性などの要因を加味して判断する包括的な枠組みとなっている。これによって、自己資本が充実し、経営管理の状況が良好と判断される金融機関は、金融持株会社に転換して、より幅広い金融業務に進出する自由度を得ている。具体的に、これまで公表されている金融持株会社の業務に関する規則を見ると、新たに、不動産、電子商取引、情報技術(IT)、マーチャントバンキングなどの業務の展開が認められている。こうした中、マーチャントバンキングに関連して、銀行の非金融会社に対する株式投資に新たな自己資本規制を導入することや、大規模金融機関を念頭において、劣後債の発行によって市場機能を活用することなど、金融監督の新たな方向性も模索されている。その一方で、現在進められているバーゼル合意の見直しを背景として、主に中小金融機関等を念頭においた自己資本規制の簡素化の提案もなされている。

こうした一連の金融監督上の動きは、最近の米国における大規模金融機関と中小金融機関の二極化という実態を反映した二分法(bifurcated approach)に基づく金融監督体制の整備を図るひとつの流れとして捉えることができる。

これらは、一義的には米国の国内法に関連する事柄であるが、米国内で活動するわが国の金融機関等にも少なからず影響する事項を含んでいることから、その簡単な概要を以下に紹介したい。なお、詳しい内容、あるいは法令上の厳密な解釈等については、原文2を当たって頂きたい。また、GLB法の基本的背景については日本銀行調査月報2000年1月号掲載論文「米国における金融制度改革法の概要」を参照して頂きたい。

  1. 金融持株会社(Financial Holding Companies)の傘下において、銀行、証券、保険やマーチャントバンキングなど、広い範囲の「本源的な金融業務あるいはこれらの金融業務に付随する業務(financial in nature or incidental to such financial activity)」および「金融業務の補完的業務(complementary to a financial activity)」を営むことが可能となった。
  2. 原文については GPO(米国政府出版局)から、また、それぞれの規則の制定等にかかる公表文等はFRBウェブサイト(外部サイトへのリンク)から閲覧が可能。

以上