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金融政策効果のレジーム変化:円滑遷移VARモデルによる分析*1

2003年 7月
粕谷宗久
福永一郎

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(概要)を掲載しています。全文は、こちら (cwp03j07.pdf 1,630KB) から入手できます。

概要

 1990年代以降の日本経済は、歴史的な低金利政策の継続にも関わらず、低迷の域をなかなか脱しない。デフレ下の名目金利ゼロ制約や構造変化の遅れなどが大きな要因としても、それらが大きな問題となる1990年代後半以前まで含めた経験は、これらの要因とは別に、金融緩和政策の効果そのものが従来考えられているよりも弱かったのではないかという印象を与える。本稿では、日本のデータに照らして、金融政策の実体経済に与える効果が、どのような状況で、どのように変化してきたのかを実証的に明らかにする。実証結果によれば、実質生産(変化率)、貸出態度判断DIの変化に伴い、金融政策効果の有意な変化が見られた。具体的には、不況ほど政策効果は大きいが、過度の不況は効果が反転するという変化と、貸出市場での貸出態度が厳しいと政策効果は大きいが、過度に厳しいと政策効果は反転するという変化が有意に検出された。

Keywords:
monetary policy, policy effect, financial accelerator, nonlinearity, smooth transition model, multiple regime switching

JEL classification:
E52, E32

  1. *1本稿作成の過程で、岩本康志氏、奥村綱雄氏、北坂真一氏、齊藤誠氏、塩路悦朗氏、福田慎一氏、細野薫氏、竹田陽介氏、渡部敏明氏、2002年度統計研究会参加者の方々、また日本銀行スタッフの方々から有益なコメントをいただいた。有永(清水)恵美氏、吉田住枝氏には研究の補助をしていただいた。本稿に示された意見・見解は筆者個人のものであり、日本銀行あるいは同調査統計局のものではない。