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間接的に計測される預金・貸出サービス価格の推計手法について

金利データを使用したユーザーコスト・アプローチによる預金・貸出サービス価格の推計とその問題点*1

2003年 7月
大森徹

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(概要)を掲載しています。全文は、こちら (cwp03j10.pdf 162KB) から入手できます。

概要

 銀行業の預金・貸出サービス価格の計測手法として、貸出や預金の利子率と適当な「参照利子率」の差額を「間接的に計測される預金・貸出サービス価格」と認識する考え方が存在する。実際に、英国統計局(ONS)、米国労働統計局(BLS)では、このような計測手法によって預金・貸出サービス価格を計測することが検討されている。
 本稿では、英国ONS、米国BLSでの先行研究の内容、問題点を整理したうえで、日本において、公表されている金利データを利用して「品質一定」条件を満たした預金・貸出サービス価格を間接的に計測することが可能かという点を検討した。その結果、(1) 貸出金利について「品質一定」条件を満たし、かつ指標性を有する金利データが利用可能ではないこと、(2) 現行の企業向けサービス価格指数(CSPI)において個別のサービス価格のウエイトの作成に利用されている産業連関表と、本稿で検討した預金・貸出サービス価格の計測手法の考え方には理論的に解決困難な問題があること、が判明した。このため、「間接的に計測される預金・貸出サービス価格」をCSPIに取り込むことは困難であるとの結論を得た。

  1. *1本稿の作成にあたっては、中島隆信教授(慶應義塾大学)より有益なコメントを頂戴した。なお、本稿で示された意見、見解は、筆者個人に属し、日本銀行ならびに同調査統計局のものではない。また、本稿のあり得べき誤りは全て筆者個人に属する。