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労働市場における硬直性の日米比較と構造調整

2003年 9月 8日
石崎寛憲
加藤涼

日本銀行から

日本銀行国際局ワーキングペーパーシリーズは、国際局スタッフによる調査・研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは国際局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せください。

以下には、(概要)を掲載しています。

概要

本稿では、労働市場に硬直性が存在する場合、どのような構造調整が社会的に最適であるかを考察する。異なる産業間で生産・需要ショックが生じた時に、労働市場(または資本市場)に硬直性がある場合、生産要素の移動にコストがかかるため、不況が生じうることが多くの先行研究によって指摘されている。本稿では、まず日米両国の労働市場にどの程度の硬直性が存在するかを実証分析によって検証する。分析の結果として、米国に比べて日本の労働市場の硬直性の程度が高いことを示す統計的なエビデンスが複数の観点から確認された。さらに、実証分析で得られた労働市場の硬直性の程度を所与として、日米両国における最適な構造調整のパスを、社会計画者問題(Social planner's problem)の動学解をシミュレートすることで導出し、両者の比較を試みる。この結果、日米両国での構造調整に要する期間や一時的失業のボリュームの違いなど、いくつかの興味深いコントラストが明らかとなった。最後に、シミュレーション結果に基づいて、望ましい構造改革のあり方について、理論・実証、両面からの考察・提言を行う。

Key words:
job creation/destruction, sectoral reallocation, social planner's problem