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なぜイールド・カーブは、生産、インフレ、金利を予測できるのか?

アフィン期間構造モデルによる分析 (要旨)

2004年 7月
一上 響 *1

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

以下には日本語の(要旨)を掲載しています。

なお、全文は英語のみの公表です。

  1. *1調査統計局 e-mail: hibiki.ichiue@boj.or.jp

(要旨)

満期の異なる金利間のスプレッドを観測することで、将来の生産、インフレ、金利をある程度予測できることが、多数の研究により実証されているが、その理由は解明されていない。本稿では、米国のデータを用いて、多変量自己回帰モデルに無裁定制約を課した金利期間構造モデルを推計し、その理由を特定することを試みた。

実証結果によると、債券保持者が、インフレ率が高い場合に、将来の生産の不確実性に対してより高い期間プレミアムを支払うため、期間スプレッドがインフレ・ショックに対して敏感に反応する。一方で、同ショックに対する生産、インフレ、金利のインパルス応答の持続性が高いことから、期間スプレッドがこれらの経済変数に対して予測力を持つことが分かった。

本稿におけるもう一つの重要な発見は、長期金利と短期金利の期間スプレッドよりも、長期金利間のスプレッドの方が、予測のパフォーマンスが高い場合が多いということである。実証結果によると、インフレ・ショックが起こったときに、金融政策当局が短期金利の誘導目標を漸進的にしか変更しないことが、短期金利を用いたスプレッドの予測力を低下させていると考えられる。