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断続的な設備投資(Lumpy Investment):
Generalized
(S,s) モデルに基づいた実証分析

2006年7月
池田大輔*1
西岡慎一*2

要旨

ミクロデータでみた設備投資は、比較的滑らかに変動するマクロデータとは対照的に、断続的に変動することが米国の実証研究で報告されている。一方、日本を対象とした実証例は乏しい。こうした状況を踏まえて、本稿は、わが国製造業の設備投資が断続性を持つか否かについて、Caballero and Engel(1999)のGeneralized(S,sモデル)モデルに基づき、実証分析を行った。実証分析の結果、米国と同様に日本の製造業においても、設備投資の断続性が有意に存在することが示された。これは、マクロの設備投資は、各企業の最適資本ストックからの乖離幅の分布に依存し、その分布が最適資本ストックからの乖離を拡大させる方向へ歪むほどマクロショックに対する反応が大きくなることを意味する。加えて、設備投資の条件付実施確率は、設備投資待機期間が長くなるほど高まることが確かめられた。さらに、推計結果を利用してモデルの数値解析を行い、設備投資の断続性をもたらす固定費用を試算したところ、固定費用は粗利潤の約20%との結果を得た。

キーワード:
断続的な設備投資(lumpy investment)、Generalized(S,sモデル)、固定費用、ハザード関数

本稿の作成にあたり、嶋恵一助教授(弘前大学)、阿部修人助教授(一橋大学)のほか、日本銀行スタッフから数多くの有益な示唆を受けた。記して感謝したい。もちろん、有り得べき誤りは全て筆者達に帰するものである。また、本稿に記された意見・見解は筆者達個人のものであり、日本銀行及び調査統計局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail: daisuke.ikeda@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail: shinichi.nishioka@boj.or.jp

日本銀行から

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