このページの本文へ移動

ネットワーク分析からみた国際的な銀行与信関係の発展

2007年9月
須田侑子*1
服部正純*2

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

 本稿では、国際決済銀行(BIS)が公表している「国際与信統計」を利用して、国際的な銀行与信関係の発展を新しい手法により検証している。すなわち、国際的な銀行与信関係をある国の銀行が他国の経済主体と「結び付き(link)」を持つ「ネットワーク」として捉え、ネットワーク分析で利用される代表的な統計量を計測することにより、国際銀行与信ネットワークの形状の特徴の変化を検証している。その結果、国際的な銀行与信関係は、時間を通じて一段と緊密化してきたことがわかった。具体的には、過去と比べて、2国間に銀行与信関係が存在する確率を表すコネクティビティ(connectivity)は高く、ある国が他国に与信関係を介してつながる平均距離(average path length)は短く、1国が銀行与信関係を介して結び付きを持つ国の数を表す平均リンク数(average degree)は多く、与信関係が集中している度合いを示すクラスター係数(clustering coefficient)は大きくなっているという結果が得られた。また、国際金融市場の大きな混乱(1997年の東アジア通貨危機や1998年のLTCM実質破綻など)は、国際銀行与信ネットワークの発展に大きな影響を与えていなかったことが確認された。本稿では、これらの検証結果から、国際的な銀行与信関係の発展に伴うコストとベネフィットの両面を考察している。まず、コストについては、ある国に金融危機が発生した場合、その影響がより直接的に多くの国に伝播するようになっているため、国際金融市場のシステミックリスクは高まっているとみられる。一方で、ベネフィットについては、国際的な資本やリスクの面で、国際金融市場の効率性が一段と高まることが期待される。

キーワード
BIS国際与信統計、ネットワーク、位相的統計量、システミックリスクト

  1. *1金融機構局 E-mail:yuuko.suda@boj.or.jp
  2. *2金融機構局(現金融研究所)E-mail:masazumi.hattori@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。

商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談下さい。転載・複製を行う場合は、出所を明記して下さい。