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サービス産業の生産性分析

〜 政策的視点からのサーベイ 〜

2009年12月
森川正之*1

要旨

 本稿は、サービス産業の生産性の産業間比較、国際比較に関する集計データでの観察事実を概観した上で、筆者自身が行った分析を含めてサービス産業の生産性に係る研究を選択的にサーベイし、サービス産業の生産性について何がわかっているのかを確認するとともに、今後の研究課題や必要なデータ整備について考察する。

 サービス産業の生産性分析は豊富な統計データが存在する製造業に比べて大きく遅れているが、どういうサービス企業・事業所の生産性が高いのか、どのような政策が生産性向上に寄与しうるのかに示唆を与える研究成果もいくつか現れてきている。例えば、高生産性企業のプラクティス普及、それら企業の市場シェア拡大や参入・退出を通じた新陳代謝の活発化、良好な労使関係や企業統治メカニズムの整備は、生産性向上に寄与する可能性が高い。税制、労働市場制度・慣行、土地利用・時間使用パタンなど産業横断的な諸制度・慣行もサービス産業の生産性に関わっていると見られる。そもそもサービス産業の生産性が低いのかどうかについては多くの留保が必要だが、生産性を向上させる余地は大きいと考えられる。

 基礎統計の制約からサービス産業の生産性については、解明されていないことの方が多いのが実情である。サービス産業の生産性向上に関する的確な政策を企画・立案するためにも、サービス産業の企業・事業所レベルのデータの整備・充実とその十分な活用が望まれる。

キーワード:
サービス産業、生産性、産業構造

JEL Classification
D24; L80

本稿は、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局第3回共催コンファレンス「2000年代のわが国生産性動向−計測・背景・含意−」(2009年11月26日、27日)での報告論文を改訂したものである。報告論文自体は、森川(2008e)を基礎に大幅な加筆修正を行ったものである。指定討論者の乾友彦氏のほか、コンファランス参加者の亀田制作、中島隆信、福田慎一、宮川努、宮越龍義、門間一夫、八代尚宏の各氏からコメントをいただいたことに感謝する。本稿のうち意見にわたる部分は全て筆者の個人的見解である。

  1. *1経済産業研究所;(E-mail: morikawa-masayuki@rieti.go.jp)

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