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ビジネスサーベイにおける欠測値補完の検討

—全国企業短期経済観測調査(短観)のケース—

2012年8月7日
平川貴大*1
鳩貝淳一郎*2

要旨

ビジネスサーベイにおいて、回答が得られないデータ(欠測値)をどのように処理するかは、統計の精度や信頼性を維持・向上する上で、重要なテーマである。全国企業短期経済観測調査(短観)では、調査先企業のご協力を得て高い回答率を達成しているものの、調査回によって欠測値が相応に存在する。このうち、売上高や設備投資計画等の計数項目において欠測値が発生した場合は、「欠測した企業の前年度の回答計数」を補完した上で、集計結果を取りまとめている。

こうした補完方法は、経済環境が安定している時期においては、前期から今期にかけての計数の変動が比較的小さいことから、妥当と考えられる。その一方で、経済環境が大きく変動するような局面においては、この間の動きを適切に反映していない前期の回答計数がそのまま代入されるため、景気の実感からやや離れた集計結果につながる恐れがある。特に近年、リーマンショックのような大きな経済変動が発生したことを踏まえると、短観においても、より精度の高い補完方法の有無を検討することは重要と考えられる。

このような問題意識のもと、本稿では、短観における現行の欠測値補完方法とその代替方法について、2004年から2010年までのデータを基にシミュレーションを行い、統計精度を比較した。その結果、設備投資額、売上高、経常利益の主要3項目の全てにおいて、「現行の補完方法より精度が高いかほぼ同等であるような代替方法が存在する」という結論が得られた。

本稿は、昨年秋に開催された、欧州委員会・OECD共催のFifth Joint EC-OECD Workshop on Recent Developments in Business and Consumer Surveys(2011年11月17〜18日、於ブリュッセル)において、筆者が報告した内容に基づき作成したものである。
本稿の作成にあたっては、青木浩介氏(東京大学)、宇都宮浄人氏(関西大学)、西郷浩氏(早稲田大学)ならびに、前田栄治氏、櫻庭千尋氏、関根敏隆氏、鎌田康一郎氏、小早川周司氏、亀田制作氏をはじめとする日本銀行の各氏から有益なコメントを頂いた。また、本稿で検討した欠測値補完方法やシミュレーションの詳細は、調査統計局経済統計課スタッフとの議論に基づいている。ここに記して感謝したい。
本稿に示されている意見は、筆者個人に属し、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではない。また、あり得べき誤りは全て筆者個人に属する。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : takahiro.hirakawa@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : junichirou.hatogai@boj.or.jp

日本銀行から

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