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株価の動的相関の推定に関する実証分析

2015年7月13日
磯貝孝*

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

本ペーパーでは、東京証券取引所(第1部)に上場されている株式の収益率の動的相関に着目した実証分析を行った。具体的には、個別銘柄間の動的相関を観察するために2種類のサンプル・ポートフォリオを作成し、各ポートフォリオについて多変量DCC-GARCHモデルを用いて動的相関行列を推定した。サンプル・ポートフォリオは、ネットワーク理論を応用して生成した収益率の相関の高い銘柄グループに基づくものと、各グループの平均収益率から構成したものを用いた。同モデルの推定結果は、いずれも銘柄間の相関の時系列的な変化の存在を示唆するものであった。同時に、サンプル・ポートフォリオによってパラメータの推定結果には目立った差異が認められた。次に、推定したDCC-GARCHモデルを用いて、相関行列の最大固有値を相関の強さの代理指標とみなしてその推移を計算した。相関行列の最大固有値は、リーマンショックや東日本大震災などの市場の混乱時に高い値を示す傾向がうかがわれた。こうした動的な相関の変化がサンプル・ポートフォリオのリスク量(VaR、ES)に対してどのような影響を及ぼすのか、数値シミュレーションによって試算したところ、相関の強まりが無視し得ないリスク量の増加につながることがあるとの結果が得られた。VaRに関するバックテストにおいても、動的な相関に基づくリスク量計算は、固定された相関を用いた場合に比べ、性能の向上がみられた。

キーワード:
株価収益率、動的相関、DCC-GARCH、クラスタリング、ポートフォリオリスク

  • 日本銀行金融機構局 E-mail : takashi.isogai@boj.or.jp

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