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失われた20年における全要素生産性の成長率低下の原因について

―バランス・シートの毀損による影響の定量評価

2016年3月22日
武藤一郎*
須藤直**
米山俊一***

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

1990年代以降の日本経済の長期低迷(いわゆる「失われた20年」)は、何によってもたらされたのだろうか?長期低迷の原因として、大別すると、これまで二つの見方が挙げられてきた。一つ目の見方は、全要素生産性(Total Factor Productivity、TFP)の成長率の鈍化に注目する立場である。1990年代以降、TFPの成長率は顕著に低下しており、先駆的な研究であるHayashi and Prescott(2002)は、こうしたTFPの動きを外生的な技術水準の推移と解釈すると、長期低迷を教科書的な成長モデルによって説明できることを示している。もう一つの見方は、1990年代に生じた二つの金融に係る危機――1990年代初頭のバブル崩壊および1990年代後半の銀行危機――に注目する立場である。バブル崩壊や銀行危機は、銀行や企業のバランス・シートを毀損したが、先行研究の幾つかは、こうしたバランス・シートの毀損が金融仲介機能を損ない、経済活動の収縮に帰結したと指摘している。当論文では、銀行を組み込んだ動学的一般均衡モデルを構築し、バランス・シートの毀損とTFPの関係性を考察することで、この二つの見方を整合的に解釈することができることを示している。モデルでは、バランス・シートの毀損は、銀行部門の効率性を直接的に低下させる経路と、実体経済へのデフレ圧力を通じて生産活動の効率性を押し下げる間接的な経路の二つを通じて、TFPの成長率を鈍化させる。1980年以降の日本のデータを用いて推計すると、(1)仮にバランス・シートの毀損、とりわけ銀行部門のバランス・シートの毀損が発生しなかった場合、1990年代のTFPの成長率は実際に観察された成長率の2倍になること、(2)バランス・シートの毀損がTFPに与える二つの経路のうち、銀行部門の効率性を通じた経路は定量的に小さく、実体経済の生産活動の効率性を通じた経路が主たる役割を果たしていたこと、が分かった。

JEL分類番号
E20、E51

キーワード
失われた20年、全要素生産性(Total Factor Productivity)、バランス・シート問題

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