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税務データを用いた分配側GDPの試算

2016年7月20日
藤原裕行*1
小川泰尭*2

要旨

我が国の経済の実態を把握するうえで最も重要な統計であるGDP統計を、税務データを用いて分配側から推計するとどうなるのだろうか。現行GDP統計では、「GDPにおける三面等価の原則」に従い、分配側GDPは、支出側、生産側GDPに等しくなるように、営業余剰・混合所得を調整している。本稿では、米国の例も参考にしながら、税務データ等を利用し、営業余剰・混合所得の直接推計を試みる。また、その際、現行GDP統計では毎月勤労統計、労働力統計等から推計している雇用者報酬についても、税務データから推計した。得られた結果からは、支出側、生産側GDPと、本稿で試算された分配側GDPとは大きなかい離がみられた。こうしたかい離がなぜ生じているのかについてはさらに詳細な分析が必要であり、本稿で試みた直接推計の手法についてもなお改善の余地があろうが、ここでの試算値は、日本経済をみるうえで、ひとつの視座を与えるものと思われる。

本稿の作成にあたっては、総務省自治税務局より『市町村税課税状況等の調』、『道府県税の課税状況等に関する調』に関する資料の提供を受けた。また、北村行伸氏(一橋大学)、菅幹雄氏(法政大学)、中村洋一氏(法政大学)、西村清彦氏(東京大学)、深尾京司氏(一橋大学)、宮川努氏(学習院大学)など学識経験者や日本銀行の多くのスタッフから有益なコメントをいただいた。記して感謝の意を表したい。なお、本稿の内容は、筆者たちが属する組織の公式の見解を示すものではなく、内容に関しての全ての責任は筆者たちにある。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail:hiroyuki.fujiwara@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail:yasutaka.ogawa@boj.or.jp

日本銀行から

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