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トレンド・インフレ率の新推計―トレンド・インフレ率推計システム(TIPS)の開発と分析結果―

2016年11月21日
高橋耕史*

要旨

景気循環や一時的なショックの影響を除いたインフレ率の趨勢的な水準は、トレンド・インフレ率と呼ばれる。トレンド・インフレ率は、民間経済主体による超長期のインフレ予想に相当し、中央銀行のインフレ目標政策への信認を前提とすれば、中長期的にはインフレ目標値に一致していく。ただし短期的には、適合的、ないしはバックワード・ルッキングな予想形成や、インフレ目標の信認度の変化などの影響で、両者は乖離し得る。

この点を踏まえ、本稿では、トレンド・インフレ率推計システム「TIPS(Trend Inflation Projection System)」を提案する。TIPSは、トレンド・インフレ率を、(1)実績のインフレ率の長期変動成分に基づく適合的な予想と、(2)インフレ目標によるフォワード・ルッキングな予想、の2つの要素の加重平均で定式化し、そのウェイトであるインフレ目標の信認度の変化も勘案している。

推計結果によると、トレンド・インフレ率は、2013年初に日本銀行の目標インフレ率引き上げにより大きく上昇し、その後も緩やかに上昇している。もっとも、中長期の予想インフレ率は、2014年後半以降、下振れて推移していた。これは、最近の予想インフレ率が、モデルが示す以上に適合的であった可能性を示している。推定されたモデルをもとに、近年の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比を要因分解すると、2013年初以降、トレンド・インフレ率とともに緩やかに上昇したあと、2014年後半以降は、原油価格下落などの要因から、再び押し下げられている姿となった。

キーワード
コアインフレ、トレンド・インフレ率、インフレ目標

JEL分類番号
C53、E31、E37、E58

本稿の作成に当たり、日本銀行の敦賀智裕氏、中村康治氏、関根敏隆氏、一上響氏、白塚重典氏、吉羽要直氏、武藤一郎氏、法眼吉彦氏、片桐満氏(現・IMF)およびNarek Ohanyan 氏(アルメニア・アメリカン大学)、Lawrence Christiano 氏(ノースウェスタン大学)、Rhys Mendes 氏(カナダ中央銀行)、Gregory Bauer 氏(カナダ中央銀行)、代田豊一郎氏(北海道大学)から有益なコメントを頂いた。また、井上紗貴氏からは、計数作成においてご協力を頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、あり得べき誤りは筆者個人に属する。本稿の内容と意見は筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  • 日本銀行調査統計局 E-mail : kouji.takahashi-2@boj.or.jp

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