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構造改革、イノベーションと経済成長

2017年4月13日
青木浩介*1
原尚子*2
古賀麻衣子*3

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

本稿では、1990年代以降、日本の生産性が米国と比べて大きく後退した背景について、世界で最も先進的な技術を有する国――フロンティア国――との生産性格差に着目した内生的成長モデルに基づいて考察する。
本稿の分析から得られた主な知見は、次の4点である。
第1に、生産性の低い国がフロンティア国との生産性格差を解消するには、フロンティア国の技術を模倣することによって生産性を高める成長経路(キャッチアップ成長経路)から、自力でのイノベーション創出によって成長する経路(イノベーション成長経路)へと、適切なタイミングで移行する必要がある。しかし、財・労働市場の効率性が低いほど、こうした移行が遅れ、フロンティア国との生産性格差が全く縮小しない「停滞の罠」に陥りやすくなる。
第2に、企業によるイノベーション創出と政府による構造改革の間には補完的関係がある。企業による積極的なイノベーション創出によって経済規模が拡大するならば、政府はより積極的に構造改革に取り組むようになる。他方、政府による構造改革で財・労働市場の効率性が向上するならば、企業はより高い収益が期待できるイノベーション創出に注力するようになる。
第3に、本稿のモデルを主要先進国の生産性データに当てはめたところ、日本経済は、1980年代後半までは望ましいキャッチアップ成長経路にあったが、その後、イノベーション成長経路への移行が失敗し、停滞の罠に向かう経路をたどった可能性があるとの結果が得られた。本稿で示した企業と政府の補完的関係を踏まえると、1990年代以降の日本経済は、企業によるイノベーション創出と政府による構造改革の双方が滞る悪循環に陥っていたと解釈できる。
第4に、日本経済が望ましいイノベーション成長経路に復するには、企業がイノベーション創出に取り組むとともに政府が構造改革を実行する、という好循環を生み出すことが重要となる。これには、企業と政府の少なくともいずれかの行動変化が必要である。また、労働市場の摩擦を解消するような企業の雇用慣行の見直しや、家計の就業意欲の高まりといった労働市場の変化も、望ましい成長経路への回帰を後押しする効果がある。

JEL分類番号
O11, O43

キーワード
経済成長、構造改革、生産性格差

  1. *1東京大学 E-mail : kaoki@e.u-tokyo.ac.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : naoko.hara@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail : maiko.koga@boj.or.jp

日本銀行から

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