このページの本文へ移動

企業の期待成長率における行動バイアス

2017年7月21日
古賀麻衣子*1
加藤晴子*2

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

本論文では、企業の期待成長率にみられる統計的な傾向を確認したうえで、そうした傾向が設備投資や研究開発投資に与える影響について実証分析を行った。企業レベルの個票データを用いて得られた結果は、次の通りである。
第一に、企業の期待成長率には、楽観的あるいは悲観的な方向への系統的な偏り、すなわち行動バイアスがあることが確認された。本稿では、先行研究に基づき、企業が良いニュースと悪いニュースのどちらを受け取ったにせよ、成長率の予測値が実績値を平均的に上回る傾向を「楽観バイアス」と呼び、平均的に下回る傾向を「悲観バイアス」と呼んでいる。本稿の実証分析によると、マクロ経済や個別企業を取り巻く現在の状況あるいは過去の経験が、こうした楽観・悲観バイアスを生み出している可能性がある。
第二に、企業の期待成長率における行動バイアスが、設備投資や研究開発投資に影響を与えている可能性が示された。具体的には、楽観的な企業ほど、設備投資や研究開発投資を積極的に行い、悲観的な企業ほどこれらに消極的な傾向がみられた。また、過去の金融危機局面において流動性不足に直面した経験のある企業ほど、設備投資を抑制する傾向にあるとの結果が得られた。
これらの結果は、マクロ経済や金融環境が、従来想定されてきた経路に加えて、企業の行動バイアスを生じさせるという追加的な経路でも、企業の経済行動に影響を与えうることを示唆している。

JEL分類番号
D84, E03, E22

キーワード
期待、企業、行動バイアス、設備投資、楽観バイアス、悲観バイアス、サーベイデータ

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : maiko.koga@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : haruko.katou@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局(post.prd8@boj.or.jp)までご相談下さい。転載・複製を行う場合は、出所を明記して下さい。