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人口動態の変化と実質金利の趨勢的な関係 ―世代重複モデルに基づく分析―

2018年6月13日
須藤直*1
瀧塚寧孝*2

要旨

出生率の低下や長寿化に伴う人口構造の高齢化と、実質金利の趨勢的な低下は、過去数十年、多くの先進国で共通して観察されており、こうした高齢化が今後も進むとの見方のもとで、実質金利がゼロを下回る水準まで低下するとする分析も存在する。本稿では、日本経済を模した世代重複モデルを用いて、少子高齢化が実質金利に与える影響を分析している。分析の結果、過去50年間に生じた実質金利の低下幅640ベーシスポイントのうち、270ベーシスポイント程度が、出生率低下による労働力人口の減少と長寿化に伴う予備的貯蓄といった人口動態の変化に起因することが分かった。一方で、先行き50年間に予想される人口動態の変化については、実質金利を現在の水準から大きく乖離させる程の効果は持たないこともわかった。これは、今後、出生率低下の鈍化と長寿化の頭打ちによって、実質金利への追加的な下押し圧力は弱まるものの、これまでの長寿化に起因する予期的貯蓄は引き続き継続することで、足許までの人口動態要因の影響は残存することによる。国によって時期のずれはあるものの、過去と将来についてのこうした人口動態の変化のパターンは、先進各国で共通に観察されることから、当分析の結果は、今後、他の国々においても、人口動態の変化による実質金利の低下が終息に向かう可能性を示唆している。

JEL分類番号
E20、J11

キーワード
実質金利の低下、少子高齢化、世代重複モデル

本稿は、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ No.18-E-1Population Aging and the Real Interest Rate in the Last and Next 50 years --A tale told by an Overlapping Generations Model--」の日本語訳版である。本稿の作成に当たり、Selahattin Imrohoroglu氏、Jinill Kim氏、一上響氏、小田剛正氏、黒住卓司氏、斎藤雅士氏、須合智広氏、敦賀貴之氏、長野哲平氏、永幡崇氏、西崎健司氏、藤原一平氏、吉羽要直氏、11th Annual Workshop of the Asian Research NetworkThe 26th Annual Society of Nonlinear Dynamics and Econometrics Symposium、大阪大学社会経済学研究所セミナー、日本銀行のセミナー出席者から有益なコメントを頂戴した。もちろん、あり得べき誤りは筆者らに属する。本稿に示されている内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行および企画局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行企画局 E-mail : nao.sudou@boj.or.jp
  2. *2日本銀行企画局 E-mail : yasutaka.takizuka@boj.or.jp

日本銀行から

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