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「BIS国際与信統計の日本分集計結果」の解説

2016年6月
日本銀行金融市場局

作成部署、作成周期、公表時期等

作成部署
金融市場局総務課市場統計グループ
作成周期
四半期
公表時期
3・6・9・12月
公表方法
インターネット・ホームページ

1.「BIS国際与信統計の日本分集計結果」とは?

(1)統計の定義

「BIS国際与信統計」は、国際決済銀行(Bank for International Settlements、以下、BIS)が、世界の主要31か国・地域(以下、報告国)(注1)に本店を持つ銀行の国際的な与信状況をグローバル・ベースで取りまとめた四半期統計です。日本銀行では、このうち、日本に本店を持つ銀行(以下、邦銀)の動向について取りまとめた計数を「日本分集計結果」として公表しています。

  • (注1)図

(2)統計作成の目的

「BIS国際与信統計」では、報告国に本店を持つ銀行が、どの国・地域(統計作成に参加していない国・地域を含む)に向けて与信活動を行っているかを明らかにすることを目的としています。また、「日本分集計結果」を用いることにより、邦銀の国際的な与信行動を明らかにすることも可能です。

(3)統計作成の背景と歴史

1980年代前半におけるラテン・アメリカの債務危機を契機として、先進国の中央銀行では、各国の銀行による国別与信状況をこれまで以上に正確に把握する必要があるとの認識を強めました。これを受け、1983年末から、BISを中心に、グローバル・ベースでの「BIS国際与信統計」が開始されました。その後、発展途上国も報告国に加わったほか、先進国向け与信も集計対象に加わりました。さらに、カントリーリスク(注2)の捉え方が、与信先の所在地から、最終的にリスクを負う主体の所在地に変化したことを受け、各国中央銀行で検討を続けた結果、2004年12月末分から、「最終リスクベース」の項目を大幅に拡充するなど、統計の内容を見直しました(注3)

2.作成方法

(1)対象金融機関

原則として、特別国際金融取引勘定(Japan Offshore Market勘定)保有の承認を得ている邦銀(国内の本支店に加え、海外支店や海外現地法人を含む)が対象となっています。このため、日本分集計結果をみることで、邦銀の海外支店や海外現地法人の活動も含め、全体として、邦銀がどの国にどれだけの与信を行っているかを把握することができます。

(2)対象計数

対象金融機関の国際部門債権を対象としており(信託勘定を含みます)、「所在地ベース」と「最終リスクベース」があります。いずれの計数も、海外支店や現地法人を合算した連結ベースとなっており、対象となる取引の範囲に、本支店間や海外現地法人との取引は含まれません。

1)所在地ベース

「所在地ベース」とは、与信先の所在地により一律に国・地域別の分類をするものです。例えば、米国所在の日系企業に対する与信も、米国所在の米国企業に対する与信も全て「米国向け」とみなす考え方です。
対象とする取引の範囲には、(a)クロスボーダー与信(邦銀の国境を越える取引から生じる債権)、(b)海外における非現地通貨建て現地向け債権が含まれます。このほかに別項目として、(c)海外における現地通貨建て現地向け債権・債務を集計しています(下表参照)。

▽所在地ベースにおける対象債権の範囲

BIS国際与信統計における国際部門債権の範囲画像

  • シャドー部分が「所在地ベース合計」の範囲。なお(c)は別項目として集計。

2)最終リスクベース

「最終リスクベース」とは、与信先の所在地ではなく、「与信の最終的なリスクがどこに所在するのか」を基準に、国・地域別の分類を行います。具体的には、他行の海外店に対する与信は同行の本店が所在する国への与信とみなすほか、保証やクレジット・デリバティブ、担保等による信用リスクの移転を勘案します。この結果、例えば、英国金融機関のニューヨーク支店に対する与信は、「米国向け」ではなく「英国向け」と捉えます。また、米国所在の米国企業に対する与信に英国金融機関の保証が付されている場合は、「米国向け」ではなく、「英国向け」と捉えます。最終リスクベースの分類を行うことで、与信先の所在地に関わらず、実質的にみて、どの国にどれだけの与信を行っているのかを把握することができます。
対象とする取引の範囲には、上記「所在地ベース」で示した(a)、(b)の債権に加え、(c)の債権も含まれます。このほかに、リスクの全体像を把握するために、オフバランスの与信である「デリバティブ関連与信」、「支払承諾勘定残高」、「コミット済未実行残高」を別項目として集計しています。

▽最終リスクベースにおける対象債権の範囲

BIS国際与信統計(最終リスクベース)における対象債権の範囲画像

  • シャドー部分が「最終リスクベース合計」の範囲。

(3)報告基準時点

毎年四半期末(3、6、9、12月末)時点の計数が報告されています。但し、1999年以前は、半期毎(6、12月末)の報告です。

(4)報告通貨単位

全て百万米ドルで報告されています。なお、米ドル以外の通貨については、各報告基準時点における為替レートの月末終値により米ドルに換算されています。

(5)調査方法

日本銀行は、「外国為替及び外国貿易法」に基づき提出される報告書(「国別対外債権残高報告書」)や、日本銀行に提出されるその他の報告を加工・集計し、「日本分集計結果」を作成しています。

(6)利用上の留意点

金融機関からの誤報告等が発見された場合、速やかに計数の訂正を行っています。原則として、計数入手後もっとも近い公表日に、最大で過去12期に亘って訂正を行っています。

3.主な項目の内容

(1)掲載項目

1)所在地ベース

邦銀のクロスボーダー与信および非現地通貨建て現地向け与信残高を(注4)、(a)相手先国・地域別、(b)部門別、(c)期間別にそれぞれ分類しています。また、邦銀の現地通貨建て債権・債務残高についても、相手先国・地域別に分類しています。

  • (注4)2014年12月末計数から、与信残高合計の内数として非現地通貨建て現地向け与信残高を掲載しています(一部推計値を含みます)。

2)最終リスクベース

邦銀のクロスボーダー与信および現地向け与信残高を、(a)相手先国・地域別、(b)部門別に分類し、「デリバティブ関連与信」、「支払承諾勘定残高」、「コミット済未実行残高」と併せて「公表データ」に掲載しています。なお、クロスボーダー/現地向け別の与信残高を、相手先国・地域別に分類し、「時系列データ」に掲載しています。これらの計数の内容については、以下の「(2)掲載項目の簡単な解説」をご覧ください。

(2)掲載項目の簡単な解説

1)所在地ベース

(a)「相手先国・地域別」

取引相手先の所在地に応じて、BISが取りまとめるグローバル・ベースの国際与信統計の国・地域別区分を基に分類しています(約130か国・地域)。
2014年12月末計数から、「国際機関」向け与信のほか、発展途上国の4つの地域(アフリカ・中東、アジア・太平洋、欧州、ラテンアメリカ・カリブ海諸国)について、いずれの国にも分類されない「その他」向けの与信を新たに計上しています。

(b)「部門別」

取引相手先の部門を「公的部門(各国の中央・地方政府、社会保障基金、中央銀行、および政府が出資する金融機関で預金の受け入れをしていない機関・事業法人・国際機関)」、「民間銀行部門(預金を受け入れることができ、自己勘定において与信を行っている金融機関)」、これら以外の「民間その他部門」に分類しています。また、2014年12月末計数から、「民間その他部門」の内数として「非銀行金融機関」を掲載しています。「非銀行金融機関」には、「民間その他部門」に分類される主体のうち金融機関(証券投資信託、保険・年金基金、 補助的・非仲介型金融機関、その他の金融仲介機関等)が含まれます。

(c)「期間別」

取引の残存期間に応じて、「1年以内」、「1年超2年以内」、「2年超」に分類しています。なお、期間の定めのない与信(株式等)は残存期間の分類を行っていないため、期間別内訳の合計は、与信残高合計に一致しません。

2)最終リスクベース

(a)「相手先国・地域別」

与信の最終的なリスクの所在地に応じて、BISが取りまとめるグローバル・ベースの国際与信統計の国・地域別区分を基に分類しています(約130か国・地域)。

(b)「部門別」

上記「1)所在地ベース」の(b)「部門別」を参照。

(c)「クロスボーダー/現地向け」

海外支店および海外現地法人の最終リスクベースでの現地向け与信を「現地向け与信」に計上し、それ以外の与信を「クロスボーダー与信」に計上しています。

(d)「デリバティブ関連与信」

取引所を介さず相対で行っているデリバティブ取引の正の市場価値を与信とみなし、最終リスクベースで計上しています。

(e)「支払承諾勘定残高」

金融機関の顧客が第三者に対して負担する債務の支払等を、金融機関が保証しているもの(他の金融機関からの借入金に対する保証、手形の保証、外国為替取引に伴うL/Cの発行、債券の発行保証等)の残高を、最終リスクベースで計上しています。

(f)「コミット済未実行残高」

コミットメントライン(注5)契約額のうち、融資限度額から借手の実行残高を差し引いた額を、最終リスクベースで計上しています。

  • (注5)借手企業と貸手金融機関とが予め合意した期間・融資限度額の範囲内で、借手企業の要請に基づき、金融機関が金銭を貸しつけることを法的に約束(コミット)する契約で、借手企業は、この融資枠の範囲内であれば、契約期間中、契約内容に従い、いつでも金融機関から借入を行うことができます。

4.その他

(1)公表時期等

報告基準時点から約3か月後に公表されています。なお、所在地ベースの債権残高は、1990年6月末分から入手が可能です。但し、先進国(一部の国を除く)向け債権残高は、1997年12月末分から公表が開始されました。
最終リスクベースの債権残高は、1998年6月末分から公表が開始されましたが、対象範囲が限定的であったことから、統計の大幅な見直しに伴い、2004年12月末分から本格的に所在地ベースの計表とは別に公表されています。

(2)用語説明

「国際決済銀行(Bank for International Settlements)」

1930年に設立された中央銀行をメンバーとする組織(本部:スイス、バーゼル)です。ドイツの第1次大戦賠償金支払いに関する事務を取り扱っていたことが行名の由来ですが、それ以外にも当初から、中央銀行間の協力促進のための場を提供しているほか、各国中央銀行からの預金の受入れ等の銀行業務も行っています。加盟先は2015年6月末現在で60先あり、日本銀行は1994年9月から理事会メンバー(総裁がBIS理事)です。G10総裁会議が開催されるほか、同会議の下でグローバル金融システム委員会、バーゼル銀行監督委員会、決済・市場インフラ委員会等が活動を行っています。

「特別国際金融取引勘定(Japan Offshore Market勘定)」

一般に、国境を越える資金取引に対して、国内取引に適用される金融上および税務上の制約を受けることなく、比較的自由に取引を行うことができる国際金融市場をオフショア市場と呼びます。日本では、オフショア取引を行いたい金融機関は、財務大臣の承認を得て特別国際金融取引勘定(Japan Offshore Market勘定)を開設し、通常の国内取引に係る資金と区別した上で取引を行う必要があります。

「債務危機」

一国の対外債務がその対外支払能力を超えて累積し、海外からの銀行借入等の債務返済が困難な状況になることをいいます。例えば、1982年のメキシコ危機等が有名です。

(3)「BIS国際資金取引統計」との比較

BISが取りまとめる統計のうち、銀行の国際部門債権を対象とする統計としては、「BIS国際与信統計」のほか、国際金融市場における銀行部門を通じた資金移動の把握を目的とした「BIS国際資金取引統計」(詳細については、「BIS国際資金取引統計の日本分集計結果の解説」を参照)があります。両者を比較すると、前者は、(a)各報告国の銀行が、特定の国・地域に対する与信リスクをどのくらい抱えているかを連結ベースで把握できること、(b)部門別や期間別の区分について詳細な情報を取得できること、等がメリットとして挙げられます。