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「FSBレポ統計の日本分集計結果」の解説

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2020年10月
日本銀行金融市場局

作成部署、作成周期、公表時期等

作成部署:
金融市場局総務課市場統計グループ
作成周期:
月次
公表時期:
原則として、翌月第15営業日
公表方法:
インターネット・ホームページ
データ始期:
2018年12月

1.「FSBレポ統計の日本分集計結果」とは?

(1)統計の概要

「FSBレポ統計の日本分集計結果」は、日本に所在する金融機関のレポ取引の動向を取りまとめた月次統計です。

2015年11月、金融安定理事会(Financial Stability Board、以下、FSB)は、レポ取引等について粒度の高いデータを定期的に収集・集計するため、国際的な基準を示す報告書を公表しました。これを踏まえ、わが国では、金融庁及び日本銀行が、FSBの提言する基準に沿って国内におけるレポ取引等のデータを収集しています。

日本銀行では、収集したレポ取引等のデータの一部を、「FSBレポ統計の日本分集計結果」として公表します。

(2)統計作成の目的

本統計の目的は、わが国において、FSBの提言する基準に沿って収集したレポ取引等データを統計ユーザーに広く還元するとともに、わが国金融市場の安定性向上や金融機関のリスク管理、各種規制における適用状況のモニタリング等に役立てることです。

2.作成方法

(1)対象金融機関

日本に所在する金融機関(外国金融機関の在日拠点を含む)のうち、原則としてレポ取引の取引金額上位約50先を対象金融機関とします。海外に所在する金融機関は対象外です。レポ取引等のデータのカバレッジを確保する観点から、対象金融機関を見直す可能性があります。

(2)対象取引

対象金融機関が取引当事者として行ったレポ取引を対象取引とします。レポ取引とは、1)現先取引及び2)証券貸借取引を指します。

1)現先取引

現先取引とは、同種同量の債券等を将来の所定期日に所定価額で買い戻す特約付きで、現金と交換に債券等を特定期日に売却する取決めに基づく取引です。現先取引の標準契約書である債券等の現先取引に関する基本契約書、MRA(Master Repurchase Agreement)やGMRA(Global Master Repurchase Agreement)、その他各国の基本契約書等に基づく取引を指します。

なお、統計資料に掲載されるフローデータのうち、「1-1.日本円取引」は、現金通貨が日本円の現先取引について公表します。ストックデータのうち、「2.現先取引及び証券貸借取引」(現金通貨が日本円の取引「2-1.日本円取引・取引相手別」と、外貨の取引「2-2.外貨取引・取引相手別」、「2-3.外貨取引・現金通貨別」に分けて公表)に集計される現先取引は、担保(取引対象債券等)の種類を限定していないため、全ての証券を対象に含みます。一方、「3-1.日本円/日本国債等」は、担保(取引対象債券等)の種類を日本国債等に限定し、かつ、現金通貨が日本円の取引を公表します。また、「3-2.外貨/債券」は、担保(取引対象債券等)を債券に限定し、かつ、現金通貨が外貨の取引を公表します。

本取引では、便宜上、証券の出し手(現金の受け手)を資金調達サイドまたはレポサイド、証券の受け手(現金の出し手)を資金運用サイドまたはリバースレポサイドと称します。

現先取引

  • 現先取引のイメージ図。詳細は本文のとおり。
2)証券貸借取引

証券貸借取引とは、当事者の一方(貸出者)が、他方(借入者)に債券等を貸し出し、当事者間で合意された期間を経た後、借入者が貸出者に同種同量の債券等を返済する取引です。証券貸借取引の標準契約書である債券貸借取引に関する基本契約書、株券等貸借取引に関する基本契約書、MSLA(Master Securities Lending Agreement)やGMSLA(Global Master Securities Lending Agreement)、その他各国の基本契約書等に基づく取引を指します。但し、無担保取引または制度信用取引に紐付く証券金融会社との貸借取引は、対象取引には含みません。

なお、統計資料に掲載されるストックデータのうち、「2.現先取引及び証券貸借取引」と「4-1.日本国債/日本円」に集計される証券貸借取引は、現金を担保とした証券貸借取引を公表対象とします。この際、「2.現先取引及び証券貸借取引」に集計される証券貸借取引は、貸借証券の種類を限定していないため、全ての証券を対象に含みます。一方、「4-1.日本国債/日本円」は、貸借証券の種類を日本国債に限定し、かつ、現金通貨が日本円の取引を公表します。

こうした現金を担保とした証券貸借取引では、便宜上、証券の出し手(現金の受け手)を資金調達サイド、証券の受け手(現金の出し手)を資金運用サイドと称します。

現金を担保とした証券貸借取引

  • 現金を担保とした証券貸借取引のイメージ図。詳細は本文のとおり。

また、「4-2.日本株/現金及び代用有価証券」に集計される証券貸借取引は、日本株を貸借する証券貸借取引を公表対象とします。この際、現金を担保とした取引及び代用有価証券を担保とした取引を合算したうえで、公表します。

こうした株券等貸借取引では、株式の出し手(担保の受け手)を株式運用サイド、株式の受け手(担保の出し手)を株式調達サイドと称します。

日本株を貸借する証券貸借取引

  • 日本株を貸借する証券貸借取引のイメージ図。詳細は本文のとおり。

(3)報告範囲

対象金融機関が実施した対象取引は、全て報告対象です。すなわち、海外に所在する法人を取引相手とする取引や、本店・海外拠点間の取引、同一グループ内の別法人との取引、国際機関との取引等も、報告対象です。他方、国内における同一法人内の内部取引や、対象金融機関の海外拠点が他の海外拠点と行った取引、個人との取引、対象金融機関が助言のみ行った取引、各国中央銀行及び国際決済銀行(Bank for International Settlements:BIS)との取引等は、いずれも報告対象外です。

取引類型に応じた報告義務の有無

  • 取引類型に応じた報告義務の有無を例示した図。詳細は本文のとおり。

(4)公表計数の単位

取引金額は、取引通貨に応じた報告計数を「準備預金制度事務における邦貨換算率」で円に換算した後、億円単位で公表します。レポレートの有効桁数は、小数点第2位です。

(5)利用上の留意点

対象金融機関からの報告が遅れた場合や誤報告等が判明した場合には、原則として、もっとも近い公表日に、最大で過去12期に亘って遡及訂正を行います。このほか、取引社数が1社または2社に限られる項目など、個社情報の秘匿を十分行うことができないと判断される項目については、非公表とします。

3.主な項目の内容

(1)掲載内容

本統計の掲載内容は、日次の「フローデータ」と月次の「ストックデータ」で構成されます。さらに、ストックデータについては、「現先取引及び証券貸借取引」、「現先取引」、「証券貸借取引」、「取引レート」の4項目で構成されます。詳細は、統計資料をご参照ください。

(2)掲載項目の簡単な解説

フローデータ/ストックデータ

1)フローデータ

フローデータでは、わが国の営業日に発生した新規約定取引の取引金額を、約定時に定めた取引スタート日別に公表します。ロールオーバーを伴う取引の場合、契約当事者が能動的に契約内容を更新する場合は、ロールオーバーの都度、新規約定分として対象取引に含みますが、エバーグリーン取引(満期日が自動更新される取引)は新規約定分に含みません。

2)ストックデータ

ストックデータでは、取引対象債券等のサブスティテューション(注)や中途解約を反映した上で、月末時点における取引金額を公表します。

  • (注)サブスティテューションとは、取引対象債券等を取引期間中に差し替える仕組みのことを指します。

対象金融機関のサイド

表 対象金融機関のサイド
資金運用サイド
(証券の受け手)
対象金融機関のうち、現先取引や証券貸借取引における証券の受け手(現金の出し手)側から報告された取引金額等を集計したものです。
資金調達サイド
(証券の出し手)
対象金融機関のうち、現先取引や証券貸借取引における証券の出し手(現金の受け手)側から報告された取引金額等を集計したものです。
株式調達サイド
(担保の出し手)
対象金融機関のうち、貸借証券が株式の証券貸借取引における株式の受け手(担保の出し手)側から報告された取引金額等を集計したものです。なお、この場合、担保には現金と代用有価証券(債券、株式等)の双方が含まれます。

証券種類

本統計における証券種類の定義は、以下のとおりです。

表 証券種類
国債等 日本国債等 政府等発行債券(国債、地方債、政府保証債等)のうち、円貨建てであるもの。
日本国債等 日本国債 国債のうち、円貨建てであるもの。
外国債等 政府等発行債券(国債、地方債、政府保証債等)のうち、外貨建てであるもの。但し、U.S. Agency MBS(米国の連邦政府抵当金庫<ジニーメイ>、連邦住宅抵当公社<ファニーメイ>、連邦住宅貸付抵当公社<フレディマック>が保証する債券)を除く。
日本株 株式のうち、円貨建てであるもの。転換社債を含む。

マチュリティ

本統計におけるマチュリティは当初マチュリティを意味し、取引エンド日と取引スタート日の差分を計算することで算出します(注1)

表 マチュリティ
オーバーナイト 取引エンド日(決済日)が取引スタート日(決済日)の翌営業日に到来する取引を含むオーバーナイト取引。
2日以上1週間以内 取引エンド日(決済日)が取引スタート日(決済日)の2日後以降7日後以内に到来する取引。
1週間超1か月以内 取引エンド日(決済日)が取引スタート日(決済日)の8日後以降1か月後以内に到来する取引(注2)
1か月超3か月以内 取引エンド日(決済日)が取引スタート日(決済日)の1か月後の翌日以降3か月後以内に到来する取引(注2)
3か月超 取引エンド日(決済日)が取引スタート日(決済日)の3か月後の翌日以降に到来する取引。
オープンエンド 取引エンド日を指定しない取引。
  • (注1)わが国の暦上の日付を基に日数計算を行っています。
  • (注2)取引スタート日の1か月後及び3か月後の応当日が存在しない場合、直前日(月末最終日)とします。

取引相手法域

取引相手の法域区分は、外国為替の取引等の報告に関する省令(平成十年大蔵省令第二十九号、以下同省令)別表第二に掲げる国又は地域を基に区分して公表(注)します。詳しくは下表をご覧ください。

表 取引相手法域
本邦居住者 同省令別表第二に掲げる国又は地域のうち日本
非居住者等 米国 同省令別表第二に掲げる国又は地域のうちアメリカ合衆国
欧州 同省令別表第二に掲げる国又は地域のうち東欧及び西欧に所在する国又は地域
その他 同省令別表第二に掲げる国又は地域(日本、アメリカ合衆国、東欧及び西欧に所在する国又は地域を除く)及び国際機関
  • (注)ISO 3166-1 alpha-2コードが付与されていない法域は、報告対象外となります。

取引相手業態

取引相手の業態は、国民経済計算(System of National Accounts:SNA)や他のFSBによる提言における定義との整合性を意識しつつ、秘匿性の確保等に配慮し、銀行、ディーラー・ブローカー、その他、の3業態に区分して公表します。

表 取引相手業態
銀行 金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」に掲げる「預金取扱等金融機関」。信託銀行の信託勘定取引を含む。
ディーラー・ブローカー 証券会社 金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」に掲げる「金融商品取引業者」のうち、第一種金融商品取引業として登録されている機関であり、かつ、報告対象取引を自己勘定で行う機関。
短資会社 金融商品取引法施行令(昭和四十年政令第三百二十一号)第一条の九第五号の規定に基づき、主としてコール資金の貸付け又はその貸借の媒介を業として行う者。
その他 銀行及びディーラー・ブローカー以外の業態。具体的には、保険会社や証券金融会社、投資信託等。

GCレポ取引/SCレポ取引

本統計では、債券等の銘柄を指定せずに行う取引(主に資金調達目的の取引)である「GC(General Collateral)レポ取引」と、特定の銘柄の債券等を対象とした取引(主に債券等調達目的の取引)である「SC(Special Collateral)レポ取引」を区別します。なお、取引実態の把握が困難な場合には、GCレポ取引として分類します。

表 GCレポ取引/SCレポ取引
GCレポ取引 取引対象となる債券等の銘柄を特定しないレポ取引。
SCレポ取引 取引対象となる債券等の銘柄を特定するレポ取引。

CCP清算取引/非CCP清算取引

CCP清算取引とは、清算機関の債務引受を利用する取引を指します。なお、CCP清算取引には、銘柄割当等を第三者機関が実施する銘柄後決め方式のGCレポ取引も含まれます。銘柄後決め方式GCレポ取引とは、取引の約定時点では資金の調達・運用金額と対象国債の種類(バスケット)だけを決め、具体的な受渡銘柄の割当ては第三者機関が決済までに行う方式のGCレポ取引を指します。

貸借料率

現金以外の代用有価証券を担保とする取引の貸借料率は、貸借証券の貸借料率を指します。他方、現金を担保とする取引の貸借料率は、原則として、貸借証券の借り手と貸し手の双方が合意した料率を指します。なお、これら料率の報告が困難である場合や、エクスクルーシブ取引(注)の場合は、貸借料率の集計対象に含みません。

  • (注)エクスクルーシブ取引とは、信託銀行等が保有する複数証券を纏めて単一の借入枠として設定し、当該借入枠の範囲内で証券を借り入れる取引のことを指します。

レポレート

本統計では、現先取引の場合は当該レートを、証券貸借取引の場合は担保金利率(注)と貸借料率として報告を受けたレートの差を、取引金額で加重平均したうえで、レポレートとして公表します。なお、統計資料に掲載されるストックデータのうち、「5-1.レポレート」では、「3-1.日本円/日本国債等」、「4-1.日本国債/日本円」に該当するストックデータを基に取引レートを算出し、公表します。

  • (注)担保金利率とは、資金調達者が支払う担保金に対する金利を指します。当該利率が変動する条件となっている場合、報告日の利率(報告日が休日の場合、報告対象月の最終営業日の利率)を参照します。

4.その他

(1)参考資料

  • Financial Stability Board (2011), "Shadow Banking: Strengthening Oversight and Regulation: Recommendations of the Financial Stability Board", 27 October 2011
  • Financial Stability Board (2013), "Strengthening Oversight and Regulation of Shadow Banking: Policy Framework for Addressing Shadow Banking Risks in Securities Lending and Repos", 29 August 2013
  • Financial Stability Board (2014), "Strengthening Oversight and Regulation of Shadow Banking: Regulatory Framework for Haircuts on Non-Centrally Cleared Securities Financing Transactions", 14 October 2014
  • Financial Stability Board (2015), "Transforming Shadow Banking into Resilient Market-based Finance: Standards and Processes for Global Securities Financing Data Collection and Aggregation", 18 November 2015
  • 小野伸和、澤田恒河、土川顕(2015)「レポ市場のさらなる発展に向けて」、日銀レビュー 2015-J-5
  • 島村侑子、中村慎太郎、石坂真吾、秀島弘高(2017)「グローバルな国債レポ市場の動向」、日銀レビュー 2017-J-10