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企業向けサービス価格指数(2000年基準)のFAQ

2005年9月

目次

利用上の注意事項

FAQの構成

物価指数のFAQの構成は、以下の通りとなっています。このページには、「3. 企業向けサービス価格指数のFAQ」の質問一覧および回答一覧を掲載しています。

  1. 物価指数全般のFAQ
  2. 企業物価指数のFAQ
  3. 企業向けサービス価格指数のFAQ
  4. 製造業部門別投入・産出物価指数のFAQ

なお、物価指数全般のFAQのページでは、全てのFAQの質問一覧をご覧いただけます。

企業向けサービス価格指数(2000年基準)に関するその他の解説

企業向けサービス価格指数(2000年基準)に関しては、FAQのほかに、以下の解説があります。

質問一覧(企業向けサービス価格指数(2000年基準))

こちらには、「企業向けサービス価格指数(2000年基準)のFAQ」の質問を掲載しています。質問をクリックすると、質問に対する回答が表示されます。

回答一覧(企業向けサービス価格指数(2000年基準))

3-1. 企業向けサービス価格指数とはどんな物価指数ですか。

わが国経済のサービス化が進む中で、企業間における物価の動きを正しく把握するためには、企業物価指数が対象としている物的商品(モノ)の価格だけでなく、サービスの価格についてもあわせてみていくことが不可欠です。企業向けサービス価格指数は、こうした問題意識の下で、日本銀行が開発し、1991年1月から公表(データ始期は1985<昭和60>年1月)している、企業間で取引される「サービス」の価格に焦点を当てた物価指数です。そのウエイト算定に際しては、総務省『産業連関表』の中間取引額(内生部門計)を基礎データとして用いています。

サービス分野における物価統計の作成は、財の分野よりも困難であり、開発に時間がかかります。このため、企業向けサービス価格指数のように、企業間で取引されるサービスの価格を幅広く捉えた物価指数は、海外でもニュージーランド、英国、米国を除いて殆ど例がありません(注)。しかし、世界経済に占めるサービス活動の比重が高まってきている状況の中、他の先進諸国においても、サービス分野における物価統計の整備に力を入れてきています。日本銀行としても、内外の学者や統計専門家と意見交換を行いつつ、統計精度のより一層の向上のために今後とも努力を続けていきたいと考えています。

  • (注)ニュージーランド、英国の指数は四半期ベースです。

3-2. 企業向けサービス価格指数はどのような目的に利用されていますか。

企業間で取引されるサービス(国内取引+輸入取引)の価格動向を集約した企業向けサービス価格指数の総平均は、サービスの需給動向をみるためのマクロの経済指標の一つとして利用されています。また、個別品目など下位分類の指数については、内閣府経済社会総合研究所が作成している『国民経済計算(GDP統計など)』や、経済産業省が作成している『第3次産業活動指数』などにおいて金額ベースで表される値を実質化し、数量ベースに変換する際のデフレータとして広く利用されています。さらに、個別取引の値決めをする際の参考指標としても利用されています。

3-3. 1995年基準企業向けサービス価格指数と2000年基準企業向けサービス価格指数では、どのような点が異なりますか。

2004年12月(2004年10月確報指数・11月速報指数)公表時より、毎月の公表は1995年基準企業向けサービス価格指数から2000年基準企業向けサービス価格指数に切り替わりました。この改定では、指数の基準年およびウエイト算定年次の更新や、5年ごとに行われる調査対象品目の見直しなど通常の基準改定作業に加えて、統計精度の向上のための新たな手法の導入・拡充、指数体系の変更、公表方式の変更などを実施しました。以下、主な変更点です(詳細は「企業向けサービス価格指数の基準改定の結果(2000年基準への移行)」をご覧ください)。

(1)採用する品目の大幅な見直し

新サービスの登場や既存サービスの多様化に対応して、新規品目の採用や既存品目の細分化(分割)、品目の対象範囲の拡充、品目の廃止ないし統合などを積極的に行いました。同時に、採用品目数を増加させることにより(詳細は項目3-4参照)、公表計数を充実し、ユーザーの皆様における利便性の一層の向上を図りました。

(2)ウエイト算定年次の更新

指数の基準年およびウエイト算定年次を1995年から2000年に更新しました。これに伴い、全体のウエイト対象総取引額は、約111兆円(1995年基準)から約125兆円(2000年基準)へと増加しました。また、カバレッジ(ウエイト対象総取引額/ウエイト算定可能なサービス取引額)は57.6%から63.6%へと上昇しました。

具体的に、総平均に占める大類別のウエイトの変化を見てみます(下表)と、「情報サービス」が6.9%から10.6%に、「通信・放送」は6.9%から9.6%に拡大しており、一方、「運輸」は23.0%から19.3%、「不動産」は9.6%から7.3%に縮小しています。

ウエイト算定年次
大種別 ウエイト(千分比)
2000年基準(1) 1995年基準(2) 変化幅(1)-(2)
総平均 1,000.0 1,000.0
金融・保険 50.4 73.3 -22.9
不動産 72.8 96.1 -23.3
運輸 193.3 230.3 -37.0
通信・放送 96.3 69.2 27.1
広告 74.9 64.8 10.1
情報サービス 106.1 69.0 37.1
リース・レンタル 93.0 90.4 2.6
諸サービス 313.2 306.9 6.3

(3)調査価格の見直し

価格の多様化の動きが一段と進み、「実勢価格」を把握することが難しいケースが増加していることを踏まえ、割引価格を積極的に取り込むことなどにより、価格の多様化への対応を図りました(詳細は項目3-18参照)。

さらに、「代表的なサービスを特定し、取引条件や取引相手先を一定とした実際の取引価格を継続的に調査する」という原則に沿った価格調査が、サービスの種類や価格の多様化により困難な場合は、従来一部で採用していた品質一定の条件を損なわない範囲内での「平均価格」の採用の可否を慎重に検討した上で、その適用範囲を広げました(詳細は項目3-19参照)。

(4)報告者負担に配慮した価格調査の工夫(外部有料データベースの利用)

調査先の皆様のご負担(報告者負担)に配慮し、「取引実態」や「調査先の皆様のデータ集計・管理方法」にできるだけ沿った価格調査方法を採用しましたほか、一部の品目につきましては、外部有料データベースから作成した価格を調査価格として採用しました。

(5)「速報・確報」公表体制への移行

2000年基準への改定に伴う上記のような見直しに伴い、従来と比較して価格調査に時間を要するものが増えてきたため、翌月の公表日(原則として調査対象月の翌月第18営業日<ただし、月間の営業日数が短い場合などには公表日を若干繰り上げる>)に当月指数の「速報値」を公表し、翌々月の公表日に速報値をリバイスして「確報値」を公表する、「速報・確報」公表体制に移行しました(詳細は項目3-28参照)。

3-4. 1995年基準企業向けサービス価格指数から2000年基準企業向けサービス価格指数で新しく調査対象となったサービスは何ですか。

2000年基準への基準改定に当たって、経済・産業構造の変化の影響が大きい類別を中心に、企業向けサービス価格指数に採用する品目の大幅な見直しを行いました。具体的には、新しいサービスの台頭に対応して、新規品目を採用したほか、既存品目の細分化(分割)、品目の対象範囲の拡充、品目の廃止ないし統合などを積極的に行い、近年のサービスの変化に対応した採用品目に衣替えしました。具体的には以下のような変更を行いました(詳しくは、「企業向けサービス価格指数の基準改定の結果(2000年基準への移行)」をご覧ください)。

1. 類別「金融」

<新規>
証券委託手数料、証券募集取扱手数料、代理業務手数料、保護預り手数料、保証業務手数料
<廃止>
信託報酬
<統合>
証券代行事務、証券関連手数料 → 証券事務委託手数料
<統合・拡充>
振込、代金取立 → 内国為替手数料
口座振替、ファームバンキング → 預貸業務手数料

2. 類別「不動産賃貸」

<分割>
事務所 → 事務所賃貸(東京圏)、事務所賃貸(名古屋圏)、事務所賃貸(大阪圏)、事務所賃貸(その他地域)

3. 類別「旅客輸送」

<分割>
鉄道旅客 → 新幹線、鉄道旅客輸送(除新幹線)
バス → 乗合バス、貸切バス
<統合>
ハイヤー、タクシー → ハイヤー・タクシー

4. 類別「陸上貨物輸送」

<統合・分割>
特別積合せ貨物、一般貨物 → 積合せ貨物輸送、宅配便、メール便、貸切貨物輸送、特殊貨物輸送

5. 類別「海上貨物輸送」

<新規>
外航貨物用船料

6. 類別「通信」

<統合>
国内電話、国際電話、ISDN → 固定電話
国内専用回線、国際専用回線 → 専用線
<廃止>
ページャー

7. 類別「放送」

<拡充>
有線放送 → 放送

8. 類別「広告」

<新規>
インターネット広告

9. 類別「情報サービス」

<分割>
ソフトウェア開発 → 受託開発ソフトウェア、パッケージソフトウェア
データ処理 → 情報処理サービス、システム等管理運営受託

10. 類別「リース・レンタル」

<廃止>
その他レンタル

11. 類別「その他諸サービス」

<新規>
普通洗濯

この変更により、品目の新規採用(+8品目)、分割(+7品目)、品目の廃止(-3品目)、統合等(-4品目)の結果、全体の採用品目数としては、102(1995年基準)から110(2000年基準)へと増加(+8品目)しました。

企業向けサービス価格指数の2000年基準への改定に伴う品目数増減

企業向けサービス価格指数の2000年基準への改定に伴う品目数増減
2000年基準 1995年基準 合計 品目の増減数
新規 廃止 分割 統合等
110 102 +8 +8 -3 +7 -4

3-5. 日本標準産業分類が2002年に改訂されましたが、2000年基準企業向けサービス価格指数には、新しい標準産業分類が反映されているのですか。

企業向けサービス価格指数では、分類編成の設定・ウエイトの算出の際に、総務省『産業連関表』を基礎データとして用いています。例えば、指数の基準年およびウエイト算定年次を1995年から2000年へ更新する際には、2000年産業連関表を用いました。この2000年産業連関表は1993年改訂版日本標準産業分類をベースに作成されておりますので、2000年基準企業向けサービス価格指数の基本的な分類編成は、1993年改訂版日本標準産業分類をもとに作成されています。したがって、2002年に改訂された日本標準産業分類は反映されていません。なお、今後の基準改定における対応方法については、ウエイトの算定に用いることのできる基礎データ・参考データの整備状況をみながら検討していきたいと考えております。

3-6. 企業向けサービス価格指数ではどのような指数が公表されていますか。

2000年基準企業向けサービス価格指数では、基本分類指数として国内取引と輸入取引を対象とした指数を作成しています。なお、企業間サービスについては、輸出入を含めた取引全体のうち、国内取引が大半を占めているため(注)、企業物価指数(国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数)のような取引別の独立した指数は作成していません。また、輸出取引については、上記のとおり取引額が小さいうえ、国内でのサービスの需給と直接関連をもたないこと、本邦企業のコスト変動要因とならないことなどもあり、基本分類指数の対象外としています。しかし、一部の輸出サービスについては、参考指数として別途調査・公表しています。

公表している指数の概要は以下のとおりです。詳細は、「企業向けサービス価格指数(2000年基準)の解説」、2000年(平成12年)基準企業向けサービス価格指数の関連資料「2000年基準企業向けサービス価格指数(CSPI)指数体系一覧」をご覧ください。

基本分類指数

企業間で取引される(国内取引と輸入取引)サービスの価格に焦点を当てた物価指数です。契約通貨が外貨建て取引の場合は円ベースに換算して集計しています(契約通貨ベースは参考指数として作成・公表しています)。

企業向けサービス価格指数の基本分類は、総務省『産業連関表』の枠組みを参考に、「大類別」、「類別」、「小類別」、および「品目」の4段階で構成しています。具体的には、「大類別」(「金融・保険」、「不動産」、「運輸」、「通信・放送」、「広告」、「情報サービス」、「リース・レンタル」、「諸サービス」の8 区分)は『産業連関表』の統合大分類を、「類別」(17 区分)は同統合中分類を、「小類別」(40区分)は同基本分類を参考に、必要に応じて組み替えを行っています。

また、基本分類指数における参考指数として、「基本分類指数の契約通貨ベース指数」を公表しています(詳細は項目3-25参照)。これは、契約通貨が外貨建ての取引を調査しているサービスが含まれる品目について、契約通貨ベースで集計した指数です(詳細は項目3-22参照)。

参考指数

輸出サービス価格指数:分析上の有用性が高いと思われる一部の輸出サービス(「外航貨物輸送」、「国際航空貨物輸送」)について公表しております。本指数は、各種の分析に用いられるほか、国民経済計算(SNA)のデフレータの基礎データとして利用されています。

消費税を除く企業向けサービス価格指数:基本分類指数(契約ベースの指数を除く)について、消費税を除くベースで作成した指数を公表しています。詳しくは項目3-21をご覧ください。

  • (注)総務省『産業連関表』によれば、2000(平成12)年中におけるサービスの輸出取引額は10.8兆円、同輸入取引額は8.8兆円と、同国内取引額(531.1兆円)の各々2.1%、1.7%の規模にとどまっています。なお、その内訳としては、外洋輸送、国際航空輸送等が中心となっています。

3-7. 企業向けサービス価格指数を利用する際に、どんな点に気をつければよいですか。

サービスには、その取引の慣行上、契約期間が半期あるいは通年単位となっているものが少なくなく、企業向けサービス価格指数には、そうした契約の更改が集中する4、10月に価格が大きく変動する(逆に他の月の変動は比較的小さい)品目が少なからず含まれています。また、帰省・行楽シーズンなどによってサービス料金が異なる「鉄道旅客輸送」、「国際航空旅客輸送」、「国内航空旅客輸送」や、夏・冬のボーナス商戦などをはさんで価格が上下する「テレビ広告」など、季節性をもつサービスも幾つか存在しています(詳細は項目3-23参照)。さらに、企業向けサービス価格指数の中には、平均価格による調査を行っているために、月次単位での価格の振れが大きなもの(「受託開発ソフトウェア」など)もあります(詳細は項目3-20参照)。

したがって、企業向けサービス価格指数の動向をみるには、ある程度の期間を均して傾向を把握する(例えば、前年同月比やその四半期平均<項目1-3参照>の動きでみていく)ことが有用と考えられます。

3-8. 企業向けサービス価格指数で採用している品目やウエイトはどのように決めているのですか。

企業向けサービス価格指数では、企業物価指数と異なって、品目選定のための客観的基準はありません。これは、企業物価指数における経済産業省『工業統計表』などのような、品目選定に利用可能な(内訳が細かい)統一的な金額統計が存在しないことによるものです。そこで、企業向けサービス価格指数では、ウエイト算定の基礎資料として利用している総務省『産業連関表』のデータを元に、品目より1段階上のカテゴリーである「小類別」をまず選定し、そのうえで、小類別を構成する個別サービスのうち、業界統計などのより細かいウエイトデータが入手可能で、かつ適切な価格データの継続的収集が可能なものを品目として採用するという2段階の選定手順を採っています。

具体的な品目の選定基準は以下のとおりです(詳しくは、2000年基準企業向けサービス価格指数の関連資料「2000年基準企業向けサービス価格指数(CSPI)基本分類指数品目・分類編成・ウエイト一覧」をご覧ください)。

  1. (a)『産業連関表』の基本分類で、基準年(2000年)における企業間取引額(内生部門計)が5,000億円(2000年基準の企業向けサービス価格指数のウエイト対象取引額の0.4%程度)以上のサービスを小類別として採用する。
  2. (b)そのうえで、各小類別を構成する個別サービスにつき、ウエイトデータが入手可能で、かつ適切な価格データの継続的な収集が可能なものを採用品目として選定する。

ただし、上記はあくまでも原則であり、(a)の原則に満たないサービスであっても、先行き成長が見込まれる場合や、分類編成上のバランスから重要と思われるもの(注)については、小類別として弾力的に採用し、その下に品目を設定しています。

なお、「金融」のうち「金融仲介サービス」に当たる部分(金融機関の預金・貸出金利鞘<帰属利子>に相当する部分)や「商業サービス」(卸小売業の仲介マージンに相当する部分)は、信頼性のある価格情報を継続的に入手することが困難であるため、対象外としています(詳細は項目3-12参照)。また、「教育・研究」、「公務」なども同様の理由から調査対象から除外しています。

  • (注)例えば、小類別として採用している「国際航空貨物輸送」、「国内航空貨物輸送」は、ともに基準年における企業間取引額が5,000億円未満ですが、両者を非採用とすると、大類別「運輸」に「陸上貨物輸送」と「海上貨物輸送」が含まれますが、もう一つの輸送手段である「航空貨物輸送」が含まれないことになります。このため、企業向けサービス価格指数では、バランスをとるために、基準額に満たない小類別「国際航空貨物輸送」、「国内航空貨物輸送」についても採用し、その上に類別「航空貨物輸送」を設定しています。

3-9. 企業向けサービス価格指数の調査対象サービスはどのように決めているのですか。

価格調査に協力していただいている企業の方々のご負担を考えますと、調査価格の数をむやみに増やすことはできません。こうした中で、精度の高い物価指数を作成するためには、企業物価指数と同様(項目2-14参照)、各品目の「調査対象サービス」を決める際に、当該品目全体の価格の動きを代表するようなサービスを選ぶこと(=代表性の確保)に細心の注意を払っています。

具体的には、「取引金額でみたシェアが高いサービス」を調査することを原則とし、調査先と相談したうえで、当該品目全体の動きを代表するような調査価格を、できるだけ細かく指定しています。さらに、同一品目において、向け先等の区分によって価格動向が大きく異なる可能性がある場合には、調査対象サービスが一部に偏ることがないよう配慮しています。

また、サービスは、商品(モノ)と異なり、地域性、個別性が強く、一物一価が成り立ちにくいという性質があります。そこで、企業向けサービス価格指数では、企業物価指数に比べ各品目毎に採用する調査価格数を極力増やすことで、品目全体の価格動向を指数に的確に反映できるよう努めています。

さらに、調査先のプライバシー保護にも重点を置いています。具体的には、特定の調査先の価格の変化がストレートに品目指数に反映されることのないよう、各品目について複数調査先から3調査価格以上を調査し、それらを合算する形で指数を作成することとしています(詳細は項目2-383-31を参照)。

ちなみに、2005年6月時点での調査価格数は3,050(参考指数分の36価格を除く)であり、1品目当たりの平均は約28(企業物価指数は約6(項目2-14を参照))となっています。

なお、詳しい調査対象サービスについては、「2000年基準企業向けサービス価格指数 (CSPI) 調査対象サービス一覧」をご覧ください。

3-10. 航空料金や通信料金など、規制緩和や技術革新により、各種割引サービスが増え、価格も多様化していますが、こうした影響は指数に反映されるのですか。

サービスは、もともと商品(モノ)に比べて地域性、個別性が強いことに加え、ここ数年の規制緩和や技術革新を受けて、その種類や価格設定方法などが急速に多様化しています。

例えば、航空料金についてみてみると、有効期限、予約変更や払い戻し条件に制限が存在する代わりに運賃水準が格安である航空券の販売が増えています。そこで、品目「国際航空旅客輸送」、「国内航空旅客輸送」では、制限が存在する代わりに運賃水準が格安である、「前売り型ゾーンペックス運賃(国際航空旅客輸送)」や「特定便割引運賃(国内航空旅客輸送)」、「回数券運賃(同)」をそれぞれ調査価格の一部とすることで、価格の多様化に対応しています。

また、通信の分野では、様々な割引制度などが普及するなど料金制度が多様化しています。そうした影響を捉えるために、調査先毎に実績として定価からどれだけ割り引いたかを示す割引率(X%)を別途調査し、その割引率と定価部分(Y円)を合算したもの[(1−X/100)×Y円]を調査価格としています。

この他にも、受託開発ソフトウェアや労働者派遣サービスなどにおいて、請け負った案件の価格ではなく、人月単価(請け負った案件の価格を、要した人員数で割り込んだもの)を調査価格とするなど、様々な方法により価格の多様化に対応しています。

このような方法を用いて調査することにより、価格の多様化の影響を物価指数に反映できるよう努めています。具体的な事例については項目3-18をご覧下さい。

3-11. 郵便や電話のように企業と個人の両方が利用するサービスはどのように扱われていますか。

個人が利用するサービスであっても、企業が同様に利用している場合(郵便、電話など)は企業向けサービス価格指数の調査対象としています。その際、企業向けと個人向けの価格が異なる場合には企業向けの価格を調査しています。なお、ウエイトの算出に際しては、原則として総務省『産業連関表』の中間取引額(内生部門計)を基礎データとして使用することで個人向けのサービスを除いています。

3-12. 商業サービスや金融仲介サービスが調査対象に含まれていないのはなぜですか。

他のサービスと同様の方法で価格を継続的に調査することが困難だからです。商業サービスと金融仲介サービスは総務省『産業連関表』のサービス部門の中間取引額(内生部門計)の中で比較的大きなシェアを有しています(商業サービス<商業マージン>が18%、金融仲介サービス<帰属利子>が11%、いずれも2000年中)。

しかし、ある商品やサービスを物価指数の品目として採用するためには、そのサービスがウエイト面で重要なだけでなく、品質一定を前提とした信頼性のある価格が継続的に調査できることが不可欠の条件です(さもなければ、物価指数全体の精度が維持できなくなります)。この点、商業サービスと金融仲介サービスの価格調査は、次のような難しい点を抱えているため、企業向けサービス価格指数では調査対象外としています。

  1. (a)商業サービス(金融仲介サービス)の「価格」に相当する「値鞘」(「利鞘」)は、仕入価格(預金金利)と販売価格(貸出金利)の差から計算されるものであり、通常の価格のように単一の数字(明示的な取引価格)として観察することができない。
  2. (b)調査先に代表的な仕入取引(預金の受入)と代表的な販売取引(貸出)を特定してもらい、両者の価格差を調査する方法も考えられるが、こうした方法は調査先にかなりの報告者負担を強いる(取引対象が多岐にわたるだけに、信頼性のある「価格」を得るには膨大なデータの収集が不可欠)ことになるため、実務的に不可能である。また、仮に特定の取引を選定しても、(1)商業サービスにおいて仕入取引と販売取引の間のタイミング差の影響(在庫評価方法の影響)などをどう調整するか、(2)金融サービスにおいて貸倒れ損失の影響などをどう調整するか、などの問題があり、精度の高い調査を行うことは極めて難しい。

なお、商業マージンや金融機関の利鞘に関する月次の調査はありませんが、財務省『法人企業統計季報』や全国銀行協会『全国銀行財務諸表』を利用すれば、四半期ないし半期ベースで商業マージンや預貸金利鞘を計算することが可能です。ただし、これらの統計は、物価指数のように商品・サービスの品質を一定に保ちながら、その価格の動きを調査したものではないため、(a)前者の場合、全体の売上高・売上原価に占める各産業や商品の割合の変化の影響が含まれますし、(b)後者の場合にも、金利環境の変化による預金・貸出金の期間構成(長期・短期の比率)やマクロ的な信用リスクの変化の影響などが含まれるといった点には、留意が必要です。

3-13. なぜ官庁や業界団体等が作成している統計を用いて物価指数を作成しないのですか。

官庁や業界団体等が作成している統計を利用して、物価指数を作成すれば、価格調査先である各企業の負担を軽減できるのではないかという考え方があります。しかしながら実際には、企業物価指数と同様に(項目2-15参照)、物価指数を作成するのに適当なデータを入手することが困難なことが多いため、調査先である各企業の方々に価格調査へのご協力をお願いしています。

ただし、2000年基準企業向けサービス価格指数においては、一部の品目(類別「海上貨物輸送」の新規品目「外航貨物用船料」)について、外部有料データベースから作成した価格を調査価格として採用するなど、調査先の皆様へできるだけご負担をかけずに、精度の高い統計作成ができるよう努めています。

3-14. 企業向けサービス価格指数における契約通貨別の構成比はどのようになっていますか。

価格調査において、契約通貨が外貨建てのもの(具体的には、品目「定期船」、「不定期船」、「外航タンカー」、「国際航空貨物輸送」と、参考指数・輸出サービス価格指数の「外航貨物輸送」に含まれている)については、外貨建て価格を調査し、円ベースの指数で公表しております。

2004年12月時点の総平均指数では、円建てが97.3%、外貨建てが2.7%(うち米ドル建てが2.5%、ユーロ建てが0.1%)となっています。

3-15. 調査対象サービスを変更する際に、新旧サービスに質的な差がある場合、両者の価格差を、企業向けサービス価格指数ではどのように処理しているのですか。また、そうした処理を行うに際して何か課題はありますか。

企業向けサービス価格指数では、新旧サービスの品質が異なっている場合、新旧サービスの価格差を「品質差に見合う価格変化」部分と「品質差の影響を除いた純粋な価格変化」部分に分解し、後者のみを指数に反映させています。

具体的な品質の調整方法は、企業物価指数と同様です(詳細は項目2-18参照)。もっとも、サービスは、(a)商品(モノ)に比べて品質を明確に定義することが難しいこと、(b)品質変化部分をコスト面から把握することが難しい場合が少なくないこと等から、こうした調整も商品(モノ)に比べると、より難しい面があることは否定できません。こうした状況は諸外国においても同様であり、ここ数年、より精度の高い品質調整に向けた議論が国際的にも高まってきています。日本銀行としては、今後もこうした議論に積極的に参画しながら、サービスの品質調整方法の研究に取り組んでいきたいと考えています。なお、品質調整に関する詳細な資料は、「物価指数の品質調整を巡って — 卸売物価指数、企業向けサービス価格指数における現状と課題 —」をご参照ください。

3-16. 企業向けサービス価格指数において、ヘドニック法は使用していますか。

企業向けサービス価格指数では、企業物価指数と同様に、品質調整方法の一つとしてヘドニック法を用いております(詳細は項目1-72-192-20参照)。具体的には、2000年基準企業向けサービス価格指数では、品目「電子計算機レンタル」において、レンタルの対象としているパーソナルコンピュータの機種が変更される際の品質調整に、企業物価指数でパーソナルコンピュータの品質調整に用いるヘドニック回帰式を適用しております。

3-17. 調査価格の変更状況等を知りたい場合は、どうすればよいですか。

企業物価指数と同様に、調査対象サービスの内容が世代交代等により変化した場合には、遅滞なく調査価格を変更することとしており、その実績(調査価格の変更件数や主な品目名)についても、「企業向けサービス価格指数における調査価格の変更実績」の形で、四半期毎に公表しています。また、その際に、どういった品質調整法を適用したかについても、同資料の中で公表しています。さらに、2001年中の適用分から、企業向けサービス価格指数において、こうした品質調整を行った結果として指数がどの程度変化したのかを試算し、企業向けサービス価格指数の関連資料「品質調整効果(試算値)」で公表しております(注)

  • (注)2000年基準企業向けサービス価格指数に関する「品質調整効果(試算値)」については、2005年中の適用分(2006年6月頃に公表予定)から、定期的に公表することを予定しております。なお、1995年基準企業向けサービス価格指数に関しては、2004年中の適用分までを公表しておりますので、1995年基準の企業向けサービス価格指数の関連資料の「企業向けサービス価格指数における品質調整効果(試算値)」をご覧ください。

3-18. サービス価格の多様化が一段と進んでいますが、企業向けサービス価格指数では、これにどのように対処しているのですか。

企業向けサービス価格指数では、企業物価指数と同様に、品目ごとに代表的なサービスを特定し、取引条件、取引相手先などを一定とした実際の取引価格(割引やリベート等で値引きが行われている場合はこれを調整した価格)を、調査価格として継続的に収集することを原則としています。こうした中、価格の多様化の動きが一段と進んでいることを踏まえて、以下の例のように、割引価格を取り込むことなどの対応をとっています。詳しくは、「企業向けサービス価格指数(2000年基準)の解説」や「企業向けサービス価格指数の基準改定の結果(2000年基準への移行)」をご覧ください。

  1. (a)国際航空旅客輸送、国内航空旅客輸送では、航空券の有効期限、予約変更や払い戻し条件に制限が存在する代わりに運賃水準が格安な、「前売り型ゾーンペックス運賃(国際航空旅客輸送)」や「特定便割引運賃(国内航空旅客輸送)」、「回数券運賃(同)」を調査価格の一部としています。
  2. (b)新幹線、鉄道旅客輸送(除新幹線)では、往復ないし回数券方式の割引運賃を、品目「ハイヤー・タクシー」では、長距離割引運賃や割増運賃を調査価格の一部としています。

また、こうした標準的な価格調査が困難な場合には、取引の実態等に即して、以下のような対応を行っています。

  1. (1)品質一定の条件を損なわない範囲内で平均価格(月間取引金額/月間取引数量)を調査価格として採用しています(詳細は項目3-19参照)。
  2. (2)価格調査が料率形式で行われるケースにつき、適当な価格指数(インフレーター)を乗じて金額ベースに変換したものを、調査価格としています。
    (証券委託手数料、証券引受手数料、証券募集取扱手数料、保証業務手数料、火災保険、産業機械リース、商業・サービス業用機械設備リース、電子計算機・同関連機器リース、電子計算機レンタル等)
  3. (3)供給されたサービス全体の価格ではなく、人月単価を調査価格として採用しています。
    (受託開発ソフトウェア、設計監理、労働者派遣サービス等)
  4. (4)実勢価格を反映させるため、料金表等による定価部分と割引情報を別々に入手し、これを合算したものを調査価格としています(注)。(固定電話、専用線、携帯電話等)
  • (注)これらの中には割引情報がリアルタイムで入手できない場合も存在します。こうしたものについては、料金表等による定価部分と前期の割引情報を用いて指数を一旦作成・公表し、当該時期の割引情報が判明した時点で、過去に遡って指数を訂正しています(詳細は項目3-29参照)。

3-19. 平均価格は、「品質一定の価格を調査する」という物価指数の原則に反することはありませんか。

日本銀行では、企業向けサービス価格指数に限らず、その他の物価指数の作成においても、価格調査に当たって、まず調査対象となる「代表的商品(サービス)」やその取引条件(取引の相手先、取引数量等)を特定した上で、実際の取引価格を調査することを原則としています。

しかし、サービスはもともと商品(モノ)に比べて地域性、個別性が強いことに加え、ここ数年の規制緩和や技術革新を受けて、その種類や価格設定方法などが急速に多様化していることもあって、分野によっては、上記の原則では価格動向を的確に捉え切れないケースが生じてきています。例えば、

  1. (1)サービスの個別性が極めて強いケース
    取引案件ごとにサービスの内容が多様化しており、取引の相手先等を細かく指定すると、その条件に合う取引が非常に限られてしまうケース
  2. (2)個別交渉による取引価格の多様化(一物多価)が進んでいるケース
    各種の割引などが広範化し、「代表的サービス(代表的な割引形態)」を予め決めることが難しいケース
  3. (3)代表的な取引相手先が存在しないケース
    スポットなどの取引が主流であり、継続的に取引のある代表的な取引先を特定できないケース

などがあります。

このように、企業向けサービス価格指数では、「調査対象となる『代表的サービス』やその取引条件(取引の相手先、取引量等)を特定した上で、実際の取引価格を調査する」という原則に沿った価格調査を行うことが困難な場合、品質一定の条件を損なわない範囲内での「平均価格」の適用を検討しています。

ただし、物価指数の大前提である「品質一定」の条件を損なわないためには、平均価格の採用基準を厳格に定義しておく必要があります。例えば、価格水準が違う複数のサービスを平均した場合、今月はたまたま価格水準が高い商品の取扱いが多かった(少なかった)という技術的な要因によって、平均価格が上昇(下落)してしまいます。また、同じ商品であっても、価格水準が違う複数の取引先向けの価格を平均した場合には、同様の問題が発生します。

こうした問題(品質<サービスや取引先>の違いによる価格の振れ)を回避するため、以下のような基準に従って、個々の調査価格毎に平均価格の導入の是非を判断しております(詳しくは項目3-30参照)。

  1. (a)取引相手先の違いによる価格の違いが存在する場合
    「サービス」と「取引相手先」の双方を固定した平均価格
  2. (b)取引相手先の違いによる価格の違いを無視し得る場合
    「サービス」を固定した平均価格
  3. (c)サービスの個別性が強いため代表的サービスの特定が困難で、かつ取引相手先の違いによる価格の違いが存在する場合
    「機能・用途が類似した幾つかのサービス(サービス群)」と「取引相手先」の双方を固定した平均価格
  4. (d)サービスの個別性が強いため代表的サービスの特定が困難で、かつ取引相手先の違いによる価格の違いを無視し得る場合
    「機能・用途が類似した幾つかのサービス(サービス群)」を固定した平均価格

3-20. 平均価格による調査は、具体的には、どのようなサービスで導入されていますか。

項目3-19でみたように、平均価格の採用が検討されるケースは、以下のようなケースとなります。さらに詳しい採用実績については、「2000年基準企業向けサービス価格指数(CSPI)調査価格の性質一覧」をご覧ください。

(1)サービスの個別性が極めて強いケース

同一の品目にあっても、サービスの個別性が極めて強い場合、調査対象となるサービス内容を細かく指定する従来型の価格調査では、代表性を確保するために、極めて多数の調査価格が必要となります。しかしながら、ご協力いただく調査先のご負担などを考えますとその実現は困難であるため、平均価格による調査を行っております(品目「受託開発ソフトウェア」等で採用)。

(2)個別交渉による取引価格の多様化(一物多価)が進んでいるケース

大口取引先を中心に個別交渉による値引きが行われ、取引価格の多様化が進んでいる場合、取引相手先や取引条件を指定する従来型の価格調査では、各取引の個別事情が強く反映されるため、代表性を確保するために、極めて多数の調査価格が必要となります。(1)のケースと同様にその実現は困難であるため、平均価格による調査を行っております(品目「内国為替手数料」、「証券事務委託手数料」、「貸切バス」、「新聞広告」、「労働者派遣サービス」、類別「不動産賃貸」の各品目等で採用)。

(3)スポット取引の増加などにより、代表的な取引相手先が存在しないケース

継続的な取引相手先による取引額が当該サービスの取引額全体に占める比率が低い場合には、取引相手先を特定する従来型の価格調査では、調査価格の代表性を確保することが困難であるため、平均価格による調査を行っております(品目「受託開発ソフトウェア」、新規契約のみを価格調査の対象としている類別「リース」の各品目等)。

3-21. 消費税等の間接税は指数を作成する上でどのように扱われていますか。

2000年基準企業向けサービス価格指数は、消費税を含むベースで作成されています。国内企業物価指数の場合(酒税、たばこ税等を含む。詳細は項目2-32参照)と同様に、消費税以外の間接税(産業廃棄物税)についても含まれています。

もっとも、国内企業物価指数と同様に、商品の需給動向の分析等に利用する観点から、「消費税を除くベース」で作成して欲しいとのニーズも少なくありませんでした。このため、2005年9月より「消費税を除く企業向けサービス価格指数」を作成し、参考指数として公表することとしました。

3-22. 調査価格の契約通貨が外貨建てとなっているものについては、企業向けサービス価格指数でどのように扱っているのですか。

企業向けサービス価格指数の作成にあたっては、調査価格の契約通貨が外貨建てであった場合には、当該調査価格を、契約通貨ごとの調査時点における銀行の対顧客電信直者相場(月中平均、仲値(注))によって、円価格に換算のうえで指数化しています。なお、契約通貨に外貨建ての調査価格を含む品目(定期船、不定期船、外航タンカー、外航貨物用船料、国際航空貨物輸送)およびその上位分類指数(小類別指数〜総平均指数)については、契約通貨建て価格(円建て契約のものは円建て価格)そのものを使用して指数化しています。

  • (注)2000年基準の2004年12月指数までは、輸出・国内取引=外貨の買相場、輸入取引=外貨の売相場を使用していました。

3-23. 企業向けサービス価格指数は季節調整されていますか。

2000年基準企業向けサービス価格指数については、データを蓄積している期間が短いため、統計としての季節調整は行っていませんが、項目3-7でも触れたとおり、その内訳をみると、以下のとおり季節によって指数の動きが異なる品目、類別等が含まれています。

まず第1に、サービスについては、契約期間が半期あるいは通年単位となっているものが少なくないのですが、企業向けサービス価格指数の中にも契約の更改が集中する4、10月に大きく動く傾向がある品目が少なからず含まれています。これらの品目については、季節的に動くといっても、動く方向自体には規則性がなく、「○月に上がり易く、△月に下がり易い」といった通常の季節性とは異なる点に注意が必要です。

第2に、品目数からみれば僅かですが、「テレビ広告」のように比較的はっきりした季節変動を示すものも含まれています。

このため、季節的な影響を均す意味で、前年比を利用することが有効であるほか、特に後者の様な品目やそれを含む類別について、毎月の内訳の変化をより詳しく分析したい等の場合には、十分なデータの蓄積を待って季節調整を行うことも有用と考えられます。

3-24. 以前は企業向けサービス価格指数において国内需給要因指数を公表していたと思いますが、なくなったのですか。

2000年基準への改定に伴い、国内需給要因指数の公表を取り止めました。1995年基準の国内需給要因指数とは、企業が直面しているサービスの価格全体の動きのなかで、国内におけるサービスの需給と価格との関係に特に注目するために、総平均から月々の価格の動きが、主としてサービスの国内需給の変化と密接に関係していると思われる品目だけを集計することにより作成したものでした。具体的には、1995年基準において(a)規制料金となっている品目、(b)海外要因に影響され易い品目、(c)単月の振れが大きく、短期的な需給動向を反映しているとは必ずしも言い難い品目、などを除いて指数を集計していました。

しかし、従来規制下にあったサービス価格を巡る環境が変化するなど、今後も上記の定義が適切であるとは言い難くなっていることや、公表されている指数を用いてユーザー側で目的にあった指数を作成可能であること、などの理由により2000年基準企業向けサービス価格指数では公表を取り止めることとしました。

3-25. 参考指数について教えてください。

項目3-6でも述べましたように、2000年基準企業向けサービス価格指数では基本分類指数の参考指数として、基本分類指数の「契約通貨ベース指数」を、また参考指数として「輸出サービス価格指数」と「消費税を除く企業向けサービス価格指数」を公表しております。指数の概要は以下のようになっています。詳しくは、2000年基準企業向けサービス価格指数(CSPI)の関連資料「2000年基準企業向けサービス価格指数(CSPI)指数体系一覧」をご覧ください。

  • 基本分類指数の契約通貨ベース指数
    外貨建て取引を含んでいる類別「海上貨物輸送」の品目「定期船」、「不定期船」、「外航タンカー」、「外航貨物用船料」、類別「航空貨物輸送」の品目「国際航空貨物輸送」および、その上位分類指数(小類別指数〜総平均)については円ベースの価格に換算しないで指数化した契約通貨ベースの指数です。
  • 輸出サービス価格指数
    企業向けサービス価格指数では国内取引と輸入取引について調査の対象としていますが、「国際航空貨物輸送」、「外航貨物輸送」については輸出取引についても調査を行っており、「国際航空貨物輸送」は円ベース指数で、外貨建て取引を含んでいる「外航貨物輸送」については円ベースと契約通貨ベースで公表しております。
  • 消費税を除く企業向けサービス価格指数
    基本分類指数について、消費税を除くベースで作成した指数を公表しています(項目3-21参照)。ただし、契約通貨ベースの指数については含まれません。

なお、1995年基準で公表しておりました参考指数のうち、以下のものについては、2000年基準への移行に伴い廃止となりました。詳しくは、「企業向けサービス価格指数の基準改定の結果(2000年基準への移行)」をご覧ください。

<廃止>

  1. 大類別「金融・保険」
    銀行手数料(料率)−信託報酬
    証券手数料(料率)−証券引受
    損害保険料(料率)−損害保険料、自動車保険(任意)、自動車保険(自賠責)、火災保険、海上・運送保険
  2. 大類別「不動産」
    事務所賃貸料(地域別)−東京圏、名古屋圏、大阪圏
  3. 大類別「諸サービス」
    産業廃棄物処理(廃棄物種類別)−建設系廃棄物、汚泥(除、建設汚泥)、液状廃棄物、その他廃棄物

3-26. 企業向けサービス価格指数では連鎖指数を作成・公表しないのですか。

企業向けサービス価格指数では、連鎖指数(詳細は項目2-302-31参照)については作成・公表しておりません。これは、作成に必要なウエイトデータの基礎としている総務省『産業連関表』が5年毎の公表となっていること、また、他に代替するような適切なデータが収集困難なことによるものです。

3-27. 価格調査から指数公表までの事務の流れについて教えてください。

企業向けサービス価格指数は、統計法第8条に基づき、総務大臣に届出を行ったうえで実施している「届出統計調査」の1つであり、日本銀行は届出を行った書面を用いて、毎月調査を行っています。具体的には、毎月中旬に所定の「価格調査表」を価格調査先に送付し、予め特定された商品(サービス)のその月における代表的な取引価格を記入していただいたうえで、翌月央に回収しています。その際、価格調査先に対しては、その月に契約が行われた主要取引先への販売価格をご報告いただくことを原則として依頼しています。回収された「価格調査表」(調査価格)は、調査統計局物価統計担当部署の約20名の担当者によって精査されたうえで集計システムに入力され、企業向けサービス価格指数が作成されます。作成された指数は、速報は翌月の、確報は翌々月の第18営業日(ただし、月間の営業日数が少ない場合などには公表日を若干繰り上げることがあります)の午前8時50分に公表することを原則としています。

3-28. 速報と確報について教えてください。

2000年基準企業向けサービス価格指数への移行に伴う、品目・調査価格数の拡充や平均価格による調査の一部導入といった調査方法の変更・多様化などにより、従来よりも価格調査に時間を要するものが増えてきました。このため、公表の速報性に対するユーザーニーズとともに、統計精度の維持・向上を両立させる目的から、翌月の公表日(原則として第18営業日)に当月指数の「速報値」を公表し、翌々月の公表日に速報値をリバイスして「確報値」を公表するという、「速報・確報」公表体制に移行しました。

速報時点ではその時点までに調査された価格については、全て指数に反映させ、未回収の調査価格については、原則として前月指数レベルで横這いとして処理しています。その後、確報時点までに調査された価格について、確報のタイミングで指数に反映しています。ただし、速報段階で調査先から回答が得られなかった調査価格のうち、その時系列の変動に明確な季節性がみられるものについては、その季節性を考慮した補完を実施しています。

3-29. 企業向けサービス価格指数は、時折、過去の計数が訂正されていますが、どういう場合に訂正を行っているのですか。何かルールはあるのですか。

企業向けサービス価格指数では、企業物価指数と同様に、年2回、4・10月の3・9月速報指数(2・8月確報指数)公表時に、定期遡及訂正を実施しています(詳細は項目2-36参照)。遡及訂正の対象となるのは、以下のようなケースです。

  1. (a)指数公表後に計数に誤りが判明した場合
  2. (b)調査先からの価格報告がその月の指数作成期限に間に合わなかった場合
  3. (c)当該四半期等の価格が後決めされる場合

加えて、企業向けサービス価格指数では、

  1. (d)指数公表後に割引を含めた実勢価格等、より適切な計数が判明した場合

においても、定期遡及訂正の対象としています(注)

また、(a)(b)のうち、「影響度が大きいもの」については、より迅速な対応が望ましいと思われるため、上記とは別に、要訂正の事実が判明した段階で「速やかに」訂正を実施する、即時遡及訂正を行っております。

訂正を行った場合には、「企業向けサービス価格指数の遡及訂正について」で公表しています。

なお、これ以外にも、5年に一度の基準改定の際には、全ての指数が過去に遡ってリバイスされますのでご注意ください。

  • (注)類別「通信(品目「固定電話」、「専用線」、「携帯電話」)」で同方式を採用しています。なお、このうちの固定電話、専用線については、データ入手時期の関係で、10月の遡及訂正時に、例外的に1年を超えて(前年度4月まで遡って)訂正を実施します。

3-30. 企業向けサービス価格指数は5年毎に基準改定されていますが、企業向けサービス価格指数の動きを長期的な時系列で眺めたい場合はどうすればよいですか。

企業向けサービス価格指数では、現行基準(2000年基準)指数のベースで、過去に遡って計算した指数(2000年基準接続指数)を作成しています。具体的には、「類別」以上の指数系列について1985年1月まで遡及して作成しています。ただし、同指数は、各基準年毎の指数を長期にわたって繋いだものであるため、5年毎の基準改定によって、(a)採用品目やウエイトが見直されていること、(b)基準年の変更により個々の指数レベルが一旦基準年=100.0に戻るため、品目指数の変化率が変らなくても、総平均等の上位分類指数へ及ぼす影響度が変わっていること(項目2-30参照)から、厳密には、基準年が切り替わる時点で指数の性格が変化している点にご注意ください。また、接続年の前年比や接続月の前月比にも注意が必要です(詳しくは項目1-8を参照)。例えば、1995年1月〜1999年12月の2000年基準接続指数の算出式は以下のとおりです。

  • 2000年基準接続指数 イコール 1995年基準指数 掛ける [(リンク係数)2000年基準の2000年平均指数(イコール 100) 割る 1995年基準の2000年平均指数]

3-31. 公表されるのは基準年を100.0とする指数だけで、実際の価格が公表されないのはなぜですか。

企業向けサービス価格指数の価格調査は、企業物価指数と同様に、統計法第8条に基づき、総務大臣に届出を行ったうえで実施している「届出統計調査」であり、当該統計には守秘義務が厳密に課せられています(項目2-38参照)。このため、価格調査に当たっては、調査した価格を対外厳秘とすることが大前提となっており、調査先企業も非公表扱いとしています。

さらに、調査先のプライバシー保護の観点から、1品目ごとに複数調査先から3調査価格以上を調査することを原則としています。複数調査先から3調査価格以上を調査することができなかった場合でも、品目として指数動向が適切に把握できた場合は品目として採用し、その品目の指数を非公表扱いとすることを原則としています。なお、現時点<2005年8月>で、非公表の扱いとしている品目指数は、ありません。

また、日本銀行において指数作成を担当しております物価統計担当部署では、物価統計担当部署に属する担当者以外の作業エリアへの立入りを禁じているほか、物価統計担当部署に属する担当者であっても業務上の必要がある者以外は、当該情報にアクセスできない扱いにするなど、回収された価格調査表(調査価格)や対外公表前の集計値等の機密情報は厳格に管理しています。

3-32. 企業向けサービス価格指数のデータはどこから入手すればよいですか。

毎月の公表資料(「月次公表資料」)は、日本銀行ウェブサイトの「企業向けサービス価格指数の公表データ一覧」で、公表時間と同時に閲覧できます。なお、公表日程については同「公表予定」をご参照ください。詳しくは項目2-39をご覧ください。

3-33. 指数の内容についての照会はどこにすればよいですか。

日本銀行が作成している物価指数に関するお問い合わせは、下記のいずれかにお願いします。

調査統計局物価統計担当

Tel : 03-3279-1111(内線 4060)

情報サービス局統計照会窓口

Tel : 03-3279-1111