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物価指数全般(1995年基準)のFAQ

2002年2月

目次

1. 物価指数全般

2. 卸売物価指数(Wholesale Price Index)(詳細な解説

3. 企業向けサービス価格指数(Corporate Service Price Index)(詳細な解説

4. 製造業部門別投入・産出物価指数(Input-Output Price Index of Manufacturing Industry by Sector)(詳細な解説

1-1. 物価指数の役割について教えてください。

物価指数は、多数の商品やサービスの価格変動を1つの指数に集約することにより、総合的な価格の動向を捉えるための経済統計です。物価指数の役割としては、(a)マクロ経済を分析するための経済指標としての役割、(b)通貨の購買力を示す指標としての役割、(c)商品やサービスの取引金額を数量ベースに引き直す(=実質化する)ための「デフレータ」としての役割、などがあります。

1-2. 物価指数にはどのような種類がありますか。

物価指数には、(a)どのような商品やサービスを調査対象にするか、(b)どの流通段階の価格を調査するか、などによっていくつか種類があります。わが国では、日本銀行が、企業間で取引される商品に焦点を当てた「卸売物価指数」、企業間で取引されるサービスに焦点を当てた「企業向けサービス価格指数」、さらに製造業各部門における原材料などのコスト変動と製品の価格変動に注目した「製造業部門別投入・産出物価指数」をそれぞれ作成しています。また、総務省統計局では、消費者の購入する商品・サービスに焦点をあてた「消費者物価指数」を作成しています。

なお、内閣府経済社会総合研究所が作成している『国民経済計算』において、別々に推計される名目付加価値額と実質付加価値額の比から事後的に計算される「GDPデフレータ」も、物価指数の一つです。

1-3. 物価指数の「バイアス問題」とはどういう問題ですか。

卸売物価指数に限らず、一般に物価指数の主な役割は、対象となる商品やサービスの「価格」だけでなく、その「ウエイト」の構成も絶えず変化していく中で、物価全体の動きを1つの指数に集約して示すことにあります。言い換えれば、精度の高い物価指数を作成していくうえで、(a)価格調査に正確を期すこと(的確な対象商品<サービス>の選定、実勢価格の調査、調査対象を変更する際の的確な品質調整)、(b)ウエイトの算定・変更をタイムリーかつ適切に行っていくこと、の2点は必須の要素であり、このどちらが欠けても、物価指数に「バイアス」が生じる(=実勢と乖離する)ことになります。

物価指数にバイアスがあると、マクロ経済指標としての有用性が低下して政策判断を難しくするほか、社会保障支出などの財政支出が物価指数に連動している場合には、財政面にも影響が生じることになります。

1-4. 最近各国で物価指数の「バイアス問題」に注目が集まっていますが、どういう背景があるのですか。

物価の安定は経済の持続的な成長にとって不可欠の条件であり、どこの国においても経済政策の重要な目標の一つとして位置づけられています。こうしたなかで、近年は各国においてインフレの沈静化が進み、場合によってはゼロやマイナスのインフレ率も視野に入ってきたことから、物価指数の精度に改めて関心が集まっています。

特に、家計の生計費の動向を示す消費者物価指数は、賃金交渉面への影響を含め国民生活との関連が深く、また、財政面でも、その過大推計は物価スライド制を採用している社会保障支出の増加を通じて政府の財政バランスを不必要に悪化させるという問題があるため、その統計精度に関する研究が各国で盛んに行われています。

1-5. 物価指数にバイアスが生じる原因について具体的に教えてください。

物価指数にバイアスが生じる原因は、調査価格の精度の問題、指数計算に用いるウエイトや指数算式の問題、の2つに大別できます。

(1)調査価格面の問題

  1. (a)商品(サービス)の世代交代に際して新旧商品の品質差の調整が十分に行われず、品質の変化が価格の変化と誤認されてしまうことによって生じるバイアス(品質調整バイアス)
  2. (b)ディスカウント・ストアなどの小売新店舗が調査対象に含まれていないなど、調査対象の選定に偏りがあることによって生じるバイアス(小売新店舗バイアス)
  3. (c)セールなどによる値引きが調査価格に十分反映されないことによるバイアス

(2)ウエイトや指数算式面の問題

  1. (a)新しく登場・普及した商品(サービス)が物価指数の調査対象に含まれていないことによって生じるバイアス(新商品バイアス)
  2. (b)ウエイトを基準時に固定するラスパイレス指数算式を用いているため、代替使用可能な商品(サービス)間で発生する割高なものから割安なものへの需要シフトの影響が、指数に反映されないことによって生じるバイアス(代替バイアス)

各物価指数算式の定義等

1-6. 物価指数の基準改定とはどういう意味で、何のために行われているのですか。

卸売物価指数、企業向けサービス価格指数をはじめ、内外の物価指数は「ラスパイレス指数算式」と呼ばれる指数算式を広く採用しています。このラスパイレス指数は、各採用品目のウエイトをある時点(基準時)に固定し、そのウエイトによって、各品目の指数を加重平均するという方法で、毎月の計算が比較的容易であるとのメリットがある一方、(a)時間の経過とともにウエイト構成が実態と乖離していく、(b)基準時において存在しなかった(ないし存在が小さかった)新商品やサービスが現れた場合、その価格動向を反映することができないなどの問題があります。

例えば、(a)2つの商品(A、B)から成る物価指数において、両者のウエイトが変化した場合と、(b)新たにCという新商品が登場した場合について、基準改定前後で指数水準がどう変わってくるかを簡単に示したのが、下の仮設例です。なお、新基準を「現在」ではなく、2年前としたのは、ウエイト算定に必要なデータの公表までの間には、2〜3年前後のラグがあるケースが多いためです。

▽ ケースa

  • 商品Aの価格が2年間で1.5倍(100→150)に上昇した。
  • 商品Bの価格が2年間で2.0倍(100→200)に上昇した。
  • 旧基準は7年前、新基準は2年前の取引額に基づきウエイトを算定。新旧基準年間で商品Aの取引額の方が相対的に増加したため、A、B両商品の取引額合計を10としたA、B各々の取引額のウエイトが、7年前の4:6から2年前には6:4に変化した。

この場合、7年前のウエイトを用いて計算した現在の物価指数(旧基準指数)は180、2年前のウエイトを用いて計算した指数(新基準指数)は170となります。言い換えれば、このケースでは、古いウエイトを用いたことによって、相対的に値上がり幅の大きい商品Bの影響度が過大評価され、物価指数に10ポイントの差が生じていたことになります。

▽ ケースb

  • 商品Cの価格が2年前に比べ2割低下(100→80)した。
  • 商品A、Bはケース1と同様に、各々1.5倍、2.0倍に上昇した。
  • 7年前には僅少であった商品Cの取引額が著増し、A、B、Cの取引額合計を10としたA:B:Cの取引額の比率が、7年前の4:6:0(指数対象外)から、2年前には3:2:5に変化した(A:Bの比率の変化は4:6→6:4<3:2>でケースaと同様)。

この場合、A、B、Cの2年前のウエイトを用いて計算した現在の指数は125となり、ケースaの新基準指数をさらに下回っています。言い換えれば、ケースaの新基準指数(170)は、新しいウエイトを用いている点で、旧基準指数(180)よりは実態に近いものの、新商品Cが指数計算の対象から漏れている点で、なお現在の物価水準を過大評価してしまっている(「新商品バイアス」が発生している)訳です。

上記の設例はやや極端なケースですが、新商品(サービス)の場合には、需要の拡大による量産効果や技術革新などによって、価格が急速に低下し、それが一段の需要喚起、価格低下を促すといったケースがしばしばみられます。また、最近の基準改定の結果をみても、新基準指数が旧基準指数を下回るケースが通常のパターンとなっており、技術革新あるいは規制緩和による新商品(サービス)の登場と、それに伴う価格低下、ウエイトの変化などが、その大きな要因となっています。指数精度を議論するうえで、「新商品バイアス」が重要なポイントの一つとされるのはこのためです。

こうした問題を最小限に止め、物価指数統計の精度を維持するためには、定期的に指数に採用する商品・サービスやそのウエイトを見直していくことが不可欠であり、その作業のことを基準改定と呼んでいます。なお、日本においては、通常5年間隔で基準改定が行われており、ウエイト算定年次とともに、指数の基準時(指数を計算する際の基準年<○○年平均=100>)も更新されることが慣行となっています。因みに、1981(昭和56)年3月の統計審議会答申「指数の基準時及びウエイト時の更新について」においても、指数統計の基準時とウエイトの改定は5年間隔で行う(基準時およびウエイト算定時は原則として西暦年の末尾が0または5のつく年とする)こととされています。

1-7. 物価指数における品質調整とはどういう意味で、何のために行われているのですか。

物価指数では、同一商品(サービス)の価格を継続的に調査することを原則としていますが、商品(サービス)の世代交代などによって、調査対象の変更が必要となる場合があります。

その際には、新旧商品(サービス)の品質の違いを物価指数上どのように処理するかが大きなポイントとなります。例えば、新しい商品(サービス)は、旧来の商品(サービス)に比べ機能や品質が向上している場合が多く、価格もしばしば旧商品に比べ高めに設定されています。しかし、商品(サービス)の「高級化」に伴い価格が上昇するのは、ある意味ではむしろ当然であり、BS機能の無い従来の20型テレビ(例えば8万円)と、BS機能が付いた新型の20型テレビ(同10万円)とを比べて、新型の方が2万円高いからといって、それ自体を「物価の上昇(インフレ)」と捉えることは適当ではありません。

言い換えれば、新商品(サービス)と旧商品(サービス)の価格差には、「品質変化に見合う価格変化」と「品質変化以外の純粋な価格変化(=品質調整後の実質的な価格変化)」の2つの要素が含まれており、このうち物価指数が対象としているのは、後者の「品質変化以外の純粋な価格変化」部分だということです。

しかし、そのためには、何らかの手法を用いて「品質変化に見合う価格変化」を特定し、新旧商品(サービス)の価格差から「品質変化以外の純粋な価格変化」部分を抽出する必要があります。これが「品質調整」と呼ばれる作業です。なお、品質調整についてより詳しくお知りになりたい方は、2−9および「物価指数の品質調整を巡って−卸売物価指数、企業向けサービス価格指数における品質調整の現状と課題−」をご覧ください。

1-8. 物価指数の作成方法について、国際的にはどのような議論がされているのでしょうか。

物価指数について、その国際比較を容易に行えるようにする、あるいは各国が統計を作成する際の指針を提供する、といった狙いから国際的な協力の下でマニュアルを作成することが従来から行われています。例えば、1979年に生産者物価指数の作成方法に関するマニュアルが国連から、1989年に消費者物価指数の作成方法に関するマニュアル(通称「ILOマニュアル」)が国際労働機関(ILO)から、それぞれ公表されました。

現在、生産者物価指数(日本銀行が作成している卸売物価指数並びに企業向けサービス価格指数はこれに近い概念であり、国際的にはこのグループに分類されています)や消費者物価指数について、新たなマニュアルを作成する動きが出てきています。その背景としては、何よりも前回作成から10年以上経過し、内容が陳腐化してきた点が挙げられます。加えて、最近では世界的に技術革新の進展、品質把握の難しいサービス取引の拡大、流通革命による販売チャネルの多様化、値引の多様化など、物価を取巻く環境が大きく変化してきています。こうした中で、各国において近年物価指数に関するバイアスを巡る論議が活発に行われたこともあり、物価指数の精度向上に向けた様々な理論的・実務的な調査・研究結果が報告されています。最後に、欧州諸国の統計作成当局においては、EU統合に伴いヨーロッパ各国の統計の整合性確保に向けたニーズが強まっており、これがマニュアル作成に対する関心を一層高めています。

1-9. 物価指数の作成方法に関する国際的なマニュアル作りが行われていると聞きましたが、それはどういうものなのでしょうか。

現在、IMF(国際通貨基金)やILO(国際労働機関)といった国際機関を中心に、生産者物価指数、消費者物価指数のそれぞれについて、各国の統計作成機関のスタッフや学者で構成されるワーキング・グループが結成され、指数作成方法に関する国際的なマニュアル作りが進められています(消費者物価指数については2002年上期中に新たなマニュアルの最終版が公表されることになっています。また、生産者物価指数についても、ドラフトの作成が順次進められています)。

マニュアルの内容は、公表されている目次(案)によれば、物価指数の歴史に始まり、価格調査の具体的な方法、ウエイト算定の仕方、指数の算式、調査対象が変わった場合の新旧商品間の品質調整手法など、物価指数の作成手法全般にわたります。

なお、同マニュアルはあくまでもガイドラインであり、強制力を伴うものではありません。そもそも物価指数の作成方法については、色々な手法や考え方があり、論争に決着がついていない点も少なくないのが実情です。こうした論点のマニュアルにおける扱いは、従来から「論争に決着を付ける」というより、「色々な考え方を整理して紹介する」かたちをとっているケースが多いようです。

一例を挙げれば、物価指数における品質調整手法について、各国の統計作成当局や専門家の間で、(a)統計作成当局に手法の選択に関する裁量を比較的広く認め、各国がそれぞれの固有の事情にあわせて精度向上に取組むことにより、結果として世界全体の精度向上を実現することを重視する考え方と、(b)誰が行っても同じ結果が得られるような手法のみを使用するなど、客観性、比較可能性に非常に重きを置く考え方があります。2-9でも述べているとおり、品質調整の問題は難しく、どんな場合にも通用するような万能で客観的な手法はありません。したがって、客観性を重視し過ぎると選択できる手法が限られ、結果的に十分な調整が行えないことにより、精度が低くなる恐れがあります。

このように、精度向上と手法統一については、統計を巡る歴史や環境が異なる諸国間においては両立させることに困難を伴います。

日本銀行としては、こうした国際的な統計作成手法を巡る議論やその成果をしっかり踏まえるとともに、わが国固有の物価を取巻く環境やその変化にもきめ細かく対応しながら、物価指数の更なる精度向上を目指して積極的に取り組んでいきたいと考えています。

1-10. 最近、日本銀行の各種公表資料で「3ヶ月前比」という表現を目にしますが、これはどういう考え方によるものなのですか。

前月から今月にかけての変化の大きさ(瞬間風速)を計るには、「前月比」が適していますが、物価指数をはじめとした経済統計に一時的な振れはつき物であり、それだけをみても趨勢的な動きを把握しにくい面があります。他方、「前年比」は、いわば過去1年分の変化の累積であるため、趨勢的な動きが捉え易いという利点がありますが、一方で、短期的な瞬間風速の変化を捉えにくいという弱点があります。

こうした観点から、日本銀行では、毎月の景気分析において、「3ヶ月前比」という概念を導入しています。これは、3ヶ月前比でみた方が、前月比に比べ月々の振れが均され、かつ前年比よりも最近時点の変化の大きさを捉えることができるとの考え方によるもので、2000年4月からは、毎月公表している「金融経済月報」における物価動向の記述も、3ヶ月前比をベースとしたものに変更しています。また、卸売物価指数、企業向けサービス価格指数の記者発表資料にも、従来の前月比、前年比に加えて、3ヶ月前比の計数を掲載しています。統計の利用者の皆様には、それぞれのニーズに従って、前月比、3ヶ月前比、前年比等を適宜組み合わせてご覧頂ければと思います。