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物価指数全般(2000年基準)のFAQ

2005年9月

目次

1. 物価指数全般

2. 企業物価指数 (Corporate Goods Price Index) (詳細な解説)

3. 企業向けサービス価格指数 (Corporate Service Price Index) (詳細な解説)

4. 製造業部門別投入・産出物価指数 (Input-Output Price Index of Manufacturing Industry by Sector) (詳細な解説)

1-1. 物価指数の役割について教えてください。

物価指数は、多数の商品(モノ・サービス)の価格変動を1つの指数に集約することにより、総合的な価格の動向を捉えるための経済統計です。物価指数の役割としては、(a)マクロ経済を分析するための経済指標としての役割、(b)通貨の購買力を示す指標としての役割、(c)商品(モノ・サービス)の取引金額を数量ベースに引き直す(=実質化する)ための「デフレータ」としての役割、などがあります。

1-2. 物価指数にはどのような種類がありますか。

物価指数には、(a)どのような商品(モノ・サービス)を調査対象にするか、(b)どの流通段階の価格を調査するか、などによっていくつか種類があります。わが国では、日本銀行が、企業間で取引される物的商品(モノ)の価格に焦点を当てた「企業物価指数」、企業間で取引されるサービスの価格に焦点を当てた「企業向けサービス価格指数」、さらに製造業各部門における原材料などのコスト変動と製品の価格変動に注目した「製造業部門別投入・産出物価指数」をそれぞれ作成しています。また、総務省統計局では、消費者の購入する商品(モノ・サービス)の価格に焦点をあてた「消費者物価指数」を作成しています。

なお、内閣府経済社会総合研究所が作成している『国民経済計算』において、別々に推計される名目付加価値額と実質付加価値額の比から事後的に計算される「GDPデフレータ」も、物価指数の一つです。

1-3. 物価指数をみるときに出てくる「前月比」、「前年比」はどのように使いわけるのですか。

指数の動向を見る際には、その時点での指数水準をみるだけでなく、系列(総平均や類別、品目など)の過去からの指数の動きについて注目する必要があります。その際には、前月指数と当月指数を比較した「前月比」や、前年当月の指数と当月指数を比較する「前年比」などが有用です。一般に、足許の動きを計るには、「前月比」が適していますが、物価指数をはじめとした経済統計に一時的な振れはつきものであり、それだけをみても趨勢的な動きを把握しにくい面があります。また、季節性がある場合は、「前月比」では趨勢的な動きは把握できません。他方、「前年比」は、いわば過去1年分の変化の累積であるため、趨勢的な動きが捉え易いという利点があるほか、季節性を取り除くことができますが、一方で、足許の変化を捉えにくいという弱点があります。

日本銀行が公表している企業物価指数において、国内企業物価で7~9月に適用される夏季割り増し電力料金を除けば、総平均指数に影響を与えるような季節性はありませんので、前月比や3か月前比でみることが可能です。一方、企業向けサービス価格指数は、「テレビ広告」など明確な季節性があり、これが総平均指数を初めとする上位指数の動きにも影響を与えていますので、これらの指数をみる場合は、前年比を用いる必要があります。なお、季節性を取り除いたうえで前月比や3か月前比を用いることも可能ですが、2000年基準指数はデータの蓄積期間が短いため、日本銀行では季節調整値の公表はしておりません。

1-4. 年平均指数(暦年、年度)の作成方法を教えてください。

企業物価指数や企業向けサービス価格指数、製造業部門別投入・産出物価指数では、年平均指数(暦年・年度)を公表しております。暦年の年平均指数とは、当年1~12月の指数を単純平均して算出される指数であり、年度の年平均指数とは当年4月~翌年3月までの指数を単純平均して算出される指数です。例えば、ある系列の指数が以下のようになった場合には、2004年の暦年の平均指数は96.1((95.1+95.3+・・・+96.8+96.7)/12を小数点第2位で四捨五入)、2004年度の平均指数は96.4((95.7+95.7+・・・+96.5+96.8)/12を小数点第2位で四捨五入)となります。

暦年の年平均指数と年度の年平均指数

年・年度の平均指数については、ユーザーの皆様で作成していただくことをお願いしておりますが、ユーザーニーズの高い上位分類の指数(企業物価指数、企業向けサービス価格指数、製造業部門別投入・産出物価指数における総平均、大類別など)については12月指数速報(確報)公表時に、暦年の平均指数速報(確報)を、3月指数速報(確報)公表時に、年度の平均指数速報(確報)を公表しております。

1-5. 物価指数の基準改定とはどういう意味で、何のために行われているのですか。

企業物価指数、企業向けサービス価格指数をはじめ、内外の物価指数は「固定基準ラスパイレス指数算式」と呼ばれる指数算式を広く採用しています。この固定基準ラスパイレス指数は、各採用品目のウエイトをある時点(基準時)に固定し、そのウエイトによって、各品目の指数を加重平均するという方法で算出しております。このため、毎月の計算が比較的容易であるとのメリットがある一方、(a)時間の経過とともにウエイト構成が実態と乖離していく、(b)基準時において存在しなかった(ないし存在が小さかった)新商品やサービスが現れた場合、その価格動向を反映することができないなどの問題が発生する可能性があります。そこで、一定の期間(企業物価指数、企業向けサービス価格指数、消費者物価指数などの場合は5年)を経た時に、指数の基準年およびウエイト算定年次の更新や調査対象品目の見直しを行います。これを、物価指数の基準改定といいます。

例えば、(a)2つの商品(A、B)から成る物価指数において、両者のウエイトが変化した場合と、(b)新たにCという新商品が登場した場合について、基準改定前後で指数水準がどう変わってくるかを簡単に示したのが、下の仮設例です。なお、新基準を「現在」ではなく、2年前としたのは、ウエイト算定に必要なデータの公表までの間には、2~3年前後のラグがあるケースが多いためです。

▽ ケースa

  • 商品Aの価格が2年間で1.5倍(100→150)に上昇した。
  • 商品Bの価格が2年間で2.0倍(100→200)に上昇した。
  • 旧基準は7年前、新基準は2年前の取引額に基づきウエイトを算定。新旧基準年間で商品Aの取引額の方が相対的に増加したため、A、B両商品の取引額合計を10としたA、B各々の取引額のウエイトが、7年前の4:6から2年前には6:4に変化した。

この場合、7年前のウエイトを用いて計算した現在の物価指数(旧基準指数)は180、2年前のウエイトを用いて計算した指数(新基準指数)は170となります。言い換えれば、このケースでは、古いウエイトを用いたことによって、相対的に値上がり幅の大きい商品Bの影響度が過大評価され、物価指数に10ポイントの差が生じていたことになります。

▽ ケースb

  • 商品Cの価格が2年前に比べ2割低下(100→80)した。
  • 商品A、Bはケース1と同様に、各々1.5倍、2.0倍に上昇した。
  • 7年前には僅少であった商品Cの取引額が著増し、A、B、Cの取引額合計を10としたA:B:Cの取引額の比率が、7年前の4:6:0(指数対象外)から、2年前には3:2:5に変化した(A:Bの比率の変化は4:6→6:4<3:2>でケースaと同様)。

この場合、A、B、Cの2年前のウエイトを用いて計算した現在の指数は125となり、ケースaの新基準指数をさらに下回っています。言い換えれば、ケースaの新基準指数(170)は、新しいウエイトを用いている点で、旧基準指数(180)よりは実態に近いものの、新商品Cが指数計算の対象から漏れている点で、なお現在の物価水準を過大評価しています。

こうした問題を最小限に止め、物価指数統計の精度を維持するためには、定期的に指数に採用する商品(モノ・サービス)やそのウエイトを見直していくことが不可欠であり、その作業のことを基準改定と呼んでいます。なお、日本においては、通常5年間隔で基準改定が行われており、ウエイト算定年次とともに、指数の基準時(指数を計算する際の基準年<○○年平均=100>)も更新されることが慣行となっています。ちなみに、、1981(昭和56)年3月の統計審議会答申「指数の基準時及びウエイト時の更新について」においても、指数統計の基準時とウエイトの改定は5年間隔で行う(基準時およびウエイト算定時は原則として西暦年の末尾が0または5のつく年とする)こととされています。

日本銀行で作成しています企業物価指数については、2002年12月に2000年基準へ、また、企業向けサービス価格指数については、2004年12月に2000年基準へ、それぞれ改定しています。その際の具体的な変更点などについては、項目2-42-102-113-33-4や、「卸売物価指数の基準改定(2000年基準企業物価指数<CGPI>への移行)の結果」、「企業向けサービス価格指数の基準改定の結果(2000年基準への移行)」をご覧ください。

1-6. 物価指数における品質調整とはどういう意味で、何のために行われているのですか。

物価指数では、同一商品(モノ・サービス)の価格を継続的に調査することを原則としていますが、商品(モノ・サービス)の世代交代などによって、調査対象の変更が必要となる場合があります。その際に、新旧商品(モノ・サービス)の品質の違いに伴う価格差を調整した上で物価指数を作成しますが、この調整を「品質調整」と呼びます。

例えば、新しい商品(モノ・サービス)は、旧来の商品(モノ・サービス)に比べ機能や品質が向上している場合が多く、価格もしばしば旧商品に比べ高めに設定されています。しかし、商品(モノ・サービス)の「高級化」に伴い価格が上昇するのは、ある意味ではむしろ当然であり、カメラ機能の無い従来の携帯電話(例えば2万円)と、カメラ機能が付いた新型の携帯電話(同3万円)とを比べて、新型の方が1万円高いからといって、それ自体を「物価の上昇(インフレ)」と捉えることは適当ではありません。

言い換えれば、新商品(モノ・サービス)と旧商品(モノ・サービス)の価格差には、「品質変化に見合う価格変化」と「品質変化以外の純粋な価格変化(=品質調整後の実質的な価格変化)」の2つの要素が含まれており、このうち物価指数が対象としているのは、後者の「品質変化以外の純粋な価格変化」部分だということです。しかし、そのためには、何らかの手法を用いて「品質変化に見合う価格変化」を特定し、新旧商品(モノ・サービス)の価格差から「品質変化以外の純粋な価格変化」部分を抽出する必要があります。これが「品質調整」と呼ばれる作業です。

なお、品質調整方法には「コスト評価法」、「オーバーラップ法」、「ヘドニック法」などがありますが、より詳しくお知りになりたい方は、項目2-18をご覧ください。また、品質調整に関する詳細な資料は、「物価指数の品質調整を巡って —卸売物価指数、企業向けサービス価格指数における現状と課題—」をご参照ください。

1-7. 品質調整に使われる「ヘドニック法」とはどのような方法ですか。

ヘドニック法は、「商品の品質の差は、両者を構成する諸特性(性能)の数値の差に現れる」との考え方に基づいて、価格と特性の関係(ヘドニック回帰式)を計量的に推計し、その関係式を用いることで品質変化に伴う価格変化を分離し、品質変化以外の実質的な価格変動を抽出する方法です(品質調整全般については項目1-6参照)。具体的には、以下のようにしてヘドニック法による品質調整を行っています。

パーソナルコンピュータにおける例

【STEP1】ヘドニック回帰式を推計

まず、市場に流通しているパーソナルコンピュータの価格(各サンプルの大手家電量販店の店頭やインターネットサイトにおける小売価格の平均的な価格を被説明変数として使用)について特性情報(各サンプルの性能や特徴を示す特性を説明変数として使用)を用いて、回帰式を推計します。例えば、2004年9月公表のパーソナルコンピュータのヘドニック回帰式(2000年基準企業物価指数 (CGPI) の参考資料「ヘドニック法の適用実績(パーソナルコンピュータ)」)では、「CPUのクロック周波数」、「2次キャッシュ容量」、「搭載メモリ容量」、「HDD容量」、「画面サイズ」、「光学ドライブの種類」等がパーソナルコンピュータの特性として用いられています(詳細は項目2-20参照)。

企業物価指数ではパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラについて、年2回(2月、8月)、サーバ、印刷装置については年1回、ヘドニック回帰式を再推計しています。

【STEP2】ヘドニック回帰式を用いて品質変化を測定

STEP1で推計された回帰式を用いて、調査対象商品が新しい商品に切り替わるときの旧商品からの品質変化を計測します。例えば、2004年9月公表のデスクトップパソコンの回帰式を用いて、以下のような2機種のパソコンの理論価格(推計した回帰式に、調査価格として採用している商品の特性を代入することにより算出した当該商品の価格)を比較すると、旧商品の理論価格が185,481円、新商品の理論価格が207,283円となることから、11.8%の性能上昇と推計されます。

【STEP3】新旧商品の実質的な価格差を推計

推計された性能上昇比率を用いて、新旧商品の調査価格を比較します。

ケース1:新調査商品の価格が上昇している場合

上記の新調査商品の価格が200,000円であり、旧調査商品が180,000円だとすると、表面価格は20,000円(11.1%)上昇していますが、STEP2で性能が11.8%上昇していると推計されていますので、実質的にはほぼ同じ指数(-0.6%)となることが分かります。

新指数算出:100.0 × [ 200,000 / ( 180,000 × 1.118 ) ] = 99.4
(ただし旧商品の指数=100.0)

ケース2:新旧の調査価格が等しい場合

上記の新調査商品の価格が180,000円であり、旧調査商品が同じ180,000円だとすると、表面価格に変更はありませんが、STEP2で性能が11.8%上昇していると推計されていますので、実質的には10.6%下落となります。

新指数算出:100.0 × [ 180,000 / ( 180,000 × 1.118 ) ] = 89.4
(ただし旧商品の指数=100.0)

ケース3:新調査商品の価格が下落している場合

上記の新調査商品の価格が160,000円であり、旧調査商品が180,000円だとすると、表面価格は20,000円(11.1%)下落していますが、STEP2で性能が11.8%上昇していると推計されていますので、実質的には20.5%下落となります。

新指数算出:100.0 × [ 160,000 / ( 180,000 × 1.118 ) ] = 79.5
(ただし旧商品の指数=100.0)

新旧商品(パーソナルコンピュータ)の特性表

品質調整にヘドニック法を用いる最大のメリットは、品質を評価する際、主観的な判断や恣意性を極力排し、機能や性能を表すデータと統計的手法に判断基準を求める点にあり、客観性や透明性の面で優れています。また、データさえ収集できれば、比較的容易に品質調整を行えるため、パソコンのように品質変化が激しく、プロダクト・サイクルが短い等の理由で、コスト評価法やオーバーラップ法といった従来型の品質調整法の適用が困難な商品にも活用できるメリットがあります。しかしながら、デザインなどコストには現れない特性を評価することができない、サンプルの価格データは小売実勢価格を用いているため、流通マージンの変化などが推計結果に歪みを与える可能性がある、などの問題点もあります。

企業物価指数におけるヘドニック法の適用状況の詳細は項目2-20を、企業向けサービス価格指数においては項目3-16をご参照ください。また、ヘドニック法に関する詳細な資料は、「卸売物価指数におけるヘドニック・アプローチ —現状と課題—」をご参照ください。

1-8. 接続指数をみる上での注意すべき点について教えてください。

企業物価指数と企業向けサービス価格指数では、長期間にわたる時系列で指数を利用するユーザーのニーズに応えるために、総平均、類別などの上位分類指数において、過去の指数系列(現在では1995年基準指数以前)と新指数(2000年基準指数)を所定のルールにより接続した「接続指数」を作成・公表しています(詳細は項目2-373-30参照)。

この接続指数は、簡単にいえば、基準年が異なる(=指数水準が100 となっている年が異なる)ため、そのまま接続すると「段差」が生じてしまう各基準の指数水準を、機械的にレベル調整することにより作成されています。例えば1995年~1999年の指数の2000年基準接続指数は以下の計算式を用いて計算されます。

上記の方法は、「リンク係数」を2000年平均指数で計算する、「年次接続方式」と呼ばれるものです。この方法により作成された2000年基準企業物価指数の接続指数の動きを月次ベースでみると(図表1)、新旧指数の接続点となる2000年1月に、接続による大きなレベルシフトが混在していると考えられます。さらに、この指数の前年同月比をみると、2000年1月と2001年1月の2度に亘り、大きなレベルシフトが混在していると考えられます。

(図表1)2000年基準企業物価指数接続指数(総平均、1999年~2001年)

  • 2000年基準接続指数の水準と前年比を示したグラフ。詳細は本文の通り。

「年次接続方式」を採用して接続指数を作成する場合には、このような事態は十分生じ得ます。これを具体的にみると(図表2)、リンク係数を計算する2000年において、新旧両指数の傾きが異なる場合は、接続点である2000年1月にレベルシフトが生じることが分かります(図表2のケース1および2を参照)。一方、2000年において、新旧両指数の傾きが同一である場合は、このようなレベルシフトは生じません(図表2のケース3を参照)。

ここで改めて企業物価指数の新旧両指数を比較すると、新指数は2000年中ほぼ一貫して下落しているのに対し、旧指数はほぼ横這い圏内の動きにあるなど、両者の傾きは異なっています。したがって、リンク係数を「年次接続方式」で計算すると、その分だけ段差が生じることになります(図表2のケース1と同様)。

このような「年次接続におけるレベルシフト」を回避する方法としては、「月次接続方式」による接続指数作成があります(月次接続とは、2000年1月など、単月ベースでリンク係数を作成するもの)。しかし、月次接続方式を採用した場合、リンク計数を計算する月が「特定の月」となるため、その月にたまたま外生的なショックなどが生じた場合、そうした影響が接続指数にストレートに出てしまうという問題点があります。一方、年次接続方式であれば、12か月分のデータを平均することから、外生的なショックには左右されにくい利点があります。また、接続指数は、中長期での指数分析ニーズに応えるために作成するものであるということを考慮しますと、月次ではなく、年次(暦年ないし年度)といった大きな括りで指数を眺める利用が多いと考えられます。「年次接続方式により作成した接続指数と当該年基準指数の間に発生する月次指数のレベルシフト」は、先に述べた通り、「基準年における新旧両指数の傾き」が異なる場合にのみ生じるため、年次ベースで指数をみる場合、このような問題は発生しません。これらの点から総合的に判断し、日本銀行では年次接続方式を採用しています。しかし、分析の都合上、接続指数を年次以外の単位(月次や四半期など)で中長期の分析に用いる場合も考えられます。こうした場合には、その作成方法に起因するレベルシフトに十分留意した上で分析を行う必要があります。

(図表2)接続指数のイメージ図

  • ケース1:新指数が接続年度に下落しているケース。左側に旧指数と新指数の推移を例として示したグラフ、右側にこれらを年次接続した接続指数の推移を示したグラフを掲載。詳細は本文の通り。
  • ケース2:旧指数が1999年から2000年中に一貫して下落しているケース。左側に旧指数と新指数の推移を例として示したグラフ、右側にこれらを年次接続した接続指数の推移を示したグラフを掲載。詳細は本文の通り。
  • ケース3:旧指数・新指数とも同じ傾きで下落しているケース。左側に旧指数と新指数の推移を例として示したグラフ、右側にこれらを年次接続した接続指数の推移を示したグラフを掲載。詳細は本文の通り。

1-9. 物価指数の「バイアス問題」とはどういう問題ですか。

物価指数において「バイアス問題」といった場合、様々な論点があります。このため、「バイアス」という言葉の意味が場合によって異なることが考えられるため、注意する必要があります。

こうした中、「バイアス」論点の一つとしては、物価指数の計算方法(指数算式)に起因するものがあります。物価指数は、さまざまな商品(モノ・サービス)の価格を、一つに集約した指数です。したがって、指数を算出する際の各商品(モノ・サービス)の「ウエイト」の与え方、あるいは計算方法によって結果は異なります。日本銀行が作成している企業物価指数や企業向けサービス価格指数、総務省が作成している消費者物価指数などの代表的な物価指数は、採用品目のウエイトを基準時点に固定し、そのウエイトを用いて加重平均するという固定基準ラスパイレス指数算式が用いられています(詳細は項目1-5参照)。このため、時間の経過とともにウエイト構成が実態と乖離していくほか、指数の動向にばらつきがあると、基準時点から時間が経過するにつれて指数水準に較差が生じ、指数水準が低下(上昇)した品目については、物価全体の動向を表す総平均指数に与える影響が小さく(大きく)なるという特徴があります。このような固定基準ラスパイレス指数算式の持つ特徴(これを「バイアス」と呼ぶ場合があります)の発生が小さい指数算式として連鎖基準による指数算式(連鎖指数)が注目されています(詳細は項目1-112-302-31参照)。

なお、このような物価指数の「バイアス問題」についての関心が高まる最初の契機として、ボスキン・レポート(注)とよばれる提言レポートがあります。このレポートの中では上記の指数算式の問題のほかに、代替バイアス(ウエイトを基準時に固定するラスパイレス指数算式を用いているため、代替使用可能な商品<モノ・サービス>間で発生する割高なものから割安なものへの需要シフトの影響が、指数に反映されないことによって生じるバイアス)、新製品バイアス(新しく登場・普及した商品<モノ・サービス>が物価指数の調査対象に含まれていないことによって生じるバイアス)、品質調整によるバイアス(品質調整が十分になされていないことに伴うバイアス)などが話題となりました。ただし、代替効果は本当に存在するのか、品質調整が適切にできるのかなど、未だ議論が分かれているというのが現状です。

  • 1996年に米国で公表され、CPIの「上方バイアス」を指摘して話題となったレポート。正確には「Advisory Commission to Study the Consumer Price Index」が発表したレポート「Toward A More Accurate Measure Of The Cost Of Living」。

各物価指数算式の定義等

なお、物価指数に関するさまざまな論点をまとめたものとしては、日本銀行調査月報2000年8月号掲載「物価指数を巡る諸問題」があります。

1-10. 物価指数の「バイアス問題」に注目が集まっていますが、どういう背景があるのですか。

物価の安定は経済の持続的な成長にとって不可欠の条件であり、どこの国においても経済政策の重要な目標の一つとして位置づけられています。こうしたなかで、近年は各国においてインフレの沈静化が進み、ゼロ近傍のインフレが示されていることから、物価指数の精度に改めて関心が集まっています。また、わが国においては、名目GDPの伸び率がゼロ近傍で推移する中、GDPデフレータの計算方法の変更(固定基準方式から連鎖方式への変更)によって、実質GDPの動きが変化したということもあげられます。

さらに、家計の生計費の動向を示す消費者物価指数は、賃金交渉面への影響を含め国民生活との関連が深いこと、財政面でも、その過大推計は物価スライド制を採用している社会保障支出の増加を通じて政府の財政バランスを不必要に悪化させるという問題があることなどから、その統計精度に関する研究が各国で盛んに行われています。

1-11. 「連鎖指数」がなぜ注目されているのですか。

近年、「連鎖指数」と呼ばれる物価指数が国内外で注目されております。この「連鎖指数」とは、毎期ウエイトを更新したうえで、前期に対する今期の指数(前期=100とした指数)を作成し、基準時以降、そのようにして作成された指数を掛け合わせることによって作成される指数です。この指数には、特定の時点の値で固定したウエイトにより算出する指数に対し、基準時以降の経済構造の変化を指数に反映できるというメリットがあります(詳細は項目2-30参照)。そのため、項目1-9で挙げた指数算式による指数バイアスの影響を小さくする物価指数として、注目されています。

日本銀行では企業物価指数、企業向けサービス価格指数について、5年ごとにウエイト算定年次を変更する基準改定を行うことにより対応していますが、それを補完する目的で、企業物価指数の参考指数として、品目以上のウエイトについて1年に一度更新する「連鎖方式による国内企業物価指数」を公表しております(詳細は項目2-31参照)。なお、連鎖指数に関する詳細な資料は、「『連鎖方式による国内企業物価指数』の公表 —『連鎖指数』導入の意義とその特徴点—」、「2002年ウエイトを反映した『連鎖方式による国内企業物価指数』の公表」、日銀レビュー「連鎖方式による国内企業物価指数」をご参照ください。

1-12. 物価指数の作成方法について、国際的にはどのような議論がされているのでしょうか。

物価指数について、その国際比較を容易に行うことができるようにするための国際標準を作成する、あるいは各国が統計を作成する際の指針を提供する、といった狙いから各国間や国際機関において様々な議論が行われています。最近では、世界的に技術革新の進展、品質把握の難しいサービス取引の拡大、流通革命による販売チャネルの多様化、値引きの多様化など、物価を取巻く環境が大きく変化してきています。こうした中で、各国において近年、物価指数に関するバイアス(項目1-9参照)を巡る論議が活発に行われたこともあり、物価指数の精度向上に向けた様々な理論的・実務的な調査・研究結果が報告されています。また、世界的なサービス取引の拡大にともない、各国がサービス価格統計の開発に注力しており、様々な議論がなされています(注)。そのような議論をまとめることで、指数作成に生かし、さらには指数の国際比較を容易にしようと、マニュアル作成が従来から行われています。例えば、生産者物価指数(PPI:Producer Price Index;日本銀行が作成している企業物価指数並びに企業向けサービス価格指数はこれに近い概念であり、国際的にはこのグループに分類されています)の作成方法に関するマニュアルが国連から、消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index;わが国では、総務省統計局が作成・公表しています)の作成方法に関するマニュアル(通称「ILOマニュアル」)がILO(国際労働機関)から、それぞれ公表されました。さらに、1998年頃からは、上記のような議論が活発になってきたこと、また欧州諸国の統計作成当局においては、EU統合に伴いヨーロッパ各国の統計の整合性確保に向けたニーズが強まったこと、加えて、PPIマニュアル、CPIマニュアルともに作成後10年以上が経過したことなどから、新たなマニュアルの作成が始まり、2004年には生産者物価指数、消費者物価指数ともに新しいマニュアルが作成されました(詳細は項目1-13参照)。

  • 国連統計委員会の下の専門家の会合として、CPIについては、オタワ・グループ、サービス価格統計に関しては、フルバーグ・グループの各会合が定期的に開催されています。

1-13. 物価指数の作成方法に関する国際的なマニュアル作りが行われていると聞きましたが、それはどういうものなのでしょうか。

IMF(国際通貨基金)やILO(国際労働機関)といった国際機関を中心に、生産者物価指数(PPI)、消費者物価指数(CPI)のそれぞれについて、各国の統計作成機関のスタッフや学者で構成されるワーキング・グループが結成され、指数作成方法に関する国際的なマニュアル作りが進められてきました。その結果、生産者物価指数については2004年9月にマニュアルの最終案が完成しました(<IMFのウェブサイト(外部サイトへのリンク)>には、PPIマニュアルの最新版が掲載されています。またCPIマニュアルの最新版についても<ILOのウェブサイト(外部サイトへのリンク)>において公表されております)。

PPIマニュアルは、22章から構成され、約660頁の大部となっています。内容は物価指数の歴史に始まり、具体的な価格調査の方法、ウエイト算定方法、指数の算式、調査対象が変わった場合の新旧商品の品質調整手法など、物価指数の具体的な作成方法から、理論的な考え方に至るまで物価指数全般について説明されています。

同マニュアルはあくまでもガイドラインであり、強制力を伴うものではありません。そもそも物価指数の作成方法については、色々な手法や考え方がありますが、マニュアルにおいては、これらを網羅的に紹介しています。

一例を挙げれば、物価指数における品質調整手法について、(a)統計作成当局に手法の選択に関する裁量を比較的広く認め、各国がそれぞれの固有の事情にあわせて精度向上に取組むことにより、結果として世界全体の精度向上を実現することを重視する考え方と、(b)誰が行っても同じ結果が得られるような手法のみを使用するなど、客観性、比較可能性に重きを置く考え方があります。

日本銀行としては、こうした国際的な統計作成手法を巡る議論やその成果をしっかり踏まえるとともに、わが国固有の物価を取巻く環境やその変化にもきめ細かく対応しながら、物価指数の更なる精度向上を目指して積極的に取り組んでいきたいと考えています。