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企業向けサービス価格指数(2010年基準)の概要

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2016年12月
日本銀行調査統計局

作成部署、作成周期、公表時期等

作成部署
調査統計局物価統計課
作成周期
月次
公表時期
速報値…原則として翌月の第18営業日。
確報値…翌月分の速報公表日。
  • (注)計数の遡及訂正を年2回(3、9月:2、8月速報公表時)、定期的に実施(対象は原則として過去1年半分)。
公表方法
インターネット・ホームページ、日本銀行本店情報ルーム(月~金、8:50~17:00)
統計書
「物価指数年報」「金融経済統計月報」「日本銀行統計」
データ始期
1985年1月

1. 調査対象

  • 企業間で取引されるサービスの価格
  • 調査価格数:3,533(参考指数を含むベース、2014年5月時点)

企業向けサービス価格指数は、グローバル・スタンダードであるサービスの「生産者物価指数」に概ね相当する。

2. 統計内容

(1)概要、目的・機能

企業向けサービス価格指数は、企業間で取引されるサービスの価格変動を測定するものである。その主な目的は、企業間で取引されるサービスに関する価格の集約を通じて、サービスの需給動向を把握し、景気動向ひいては金融政策を判断するための材料を提供することにある。また、名目生産額などの金額計数の変動から価格要因に起因する部分を取り除いて実質値を算出するデフレーターとしての機能のほか、企業間での個々の商取引における値決めの参考指標としての機能も有している。

(2)対象範囲

企業向けサービス価格指数は、国内のサービス提供者(生産者)と国内企業との間で取引されるサービス(国内取引サービス)を対象とし、原則、サービスの提供者(生産者)段階における価格(生産者価格)を調査している。個人向けサービスは対象外としているが、主として個人向けであっても企業が同様に需要するサービス(郵便、電話など)は、調査対象としている。ただし、継続的に信頼性のある価格を調査することが困難で、かつ採用品目の中に、属性の類似するサービスや価格動向を近似できる適当なサービスがないもの(金融仲介、卸小売など)については、対象外としている。

(3)指数体系、品目分類編成、ウエイト

企業向けサービス価格指数の指数体系は、基本分類指数と参考指数から構成される。基本分類指数は、国内のサービス提供者(生産者)と国内企業との間で取引されるサービス(国内取引サービス)を対象としている。一方、統計利用者からのニーズを考慮して、基本分類指数に属さないもの(企業間で取引されるサービスのうち、輸出・輸入取引)や、基本分類指数を加工したものを、参考指数として公表している。

基本分類指数

2010年基準は、総平均、7大類別、22類別、57小類別、147品目から構成。基本分類指数は、消費税を含むベースで作成するほか、契約通貨が外貨建ての調査価格は円換算して集計している。参考系列として、「総平均(除く国際運輸)」のほか、外貨建て価格を円換算せずに集計した「契約通貨ベース」を作成・公表している。

ウエイトは、国内取引に該当する企業間取引額から算出している。基礎データとして、経済産業省『延長産業連関表』(2010年)におけるサービス部門の企業間取引額(中間需要部門+国内総固定資本形成+家計外消費支出)から、輸入取引該当額を控除した取引額を利用している。

参考指数

基本分類構成項目(基本分類指数を構成する品目の内訳を指数化したもの)

「リース料率」ならびに「清掃」「設備管理」「警備(除機械警備)」の民間向け/官公庁向け指数。

輸出・輸入サービス価格指数

企業間で取引されるサービスのうち、輸出取引、輸入取引を対象とする指数。各々2項目、5項目から構成される。

消費税を除く企業向けサービス価格指数

基本分類指数について、消費税を除いたベースで作成したもの。

なお、「消費税を除く企業向けサービス価格指数」の品目分類編成およびウエイトは、基本分類指数に準じる。その他の参考指数はウエイトを設定していない。

(4)指数の基準時およびウエイト算定年次

指数の基準時およびウエイト算定年次は2010年。

(5)採用品目

採用品目の選定は次のとおりである。まず、企業間取引額が、原則として5,000億円以上のサービスを「小類別」として採用する。次に、各小類別を構成する個別品目のうち、ウエイトデータが利用可能であり、かつ、品質一定の下で継続的な価格調査が可能なものを、採用品目として選定している。

(6)調査価格

調査価格とは、継続的にサービスの価格を調査するに当たって、調査内容を定めた企業向けサービス価格指数の調査単位である。企業向けサービス価格指数は、品目内に複数の調査価格を設定している。調査価格の設定に際しては、1)サービスの代表性、2)純粋な価格変化の補足、の2点を重視している。

調査段階

サービスは提供者(生産者)から需要者へ直接供給されるケースが一般的なため、原則、サービスの提供者(生産者)段階における価格を調査している。

調査時点

原則としてサービス提供時点。

価格調査方法

原則としてサービス内容、取引先、取引条件などを特定した「実際の取引価格」を、継続的に調査している(銘柄指定調査)。ただし、価格設定が多様化しているサービスや、サービス内容の個別性が強いサービス(オーダーメード・サービス)など、品質を固定した価格の継続調査が難しい場合は、取引実態に応じて、以下の価格調査方法を採用している。

  1. (a)建値調査
    サービス内容や取引条件を特定した実際の取引において、目安とされる標準的な価格(仕切価格、料金表価格など)を調査。
  2. (b)平均価格
    品質一定の条件を損なわない範囲で、サービス内容や取引先、取引条件の異なる複数の取引をグルーピングして売上高を集計し、合計販売数量で除した平均価格を調査。
  3. (c)モデル価格
    価格設定が多様化しているサービスについて、1)取引条件の異なる複数の需要者を想定し、それぞれの需要者にとっての最安値を、需要者のウエイトで平均した価格を調査。オーダーメード・サービスについて、2)仮想的な取引(サービス内容、取引先、取引条件)を設定し、その条件でサービスを提供する場合の価格を調査。
  4. (d)労働時間当たり単価(人月単価)
    労働投入量(作業人月数)が品質に比例するとみなし得るサービスについて、労働時間当たりの単価を調査。

また、従価制料金が適用される(金融やリースなど名目取引金額に対する料率で価格が表示される)サービスについては、以下の価格調査方法を採用している。

  1. (e)料率×インフレーター
    料率に適当な価格指数(インフレーター)を乗じ、従量制に変換した価格を調査。
    毎月の価格は、原則として、翌月央に書面で調査している。
    外貨建て価格を調査している場合は、調査時点における銀行の対顧客電信直物相場(月中平均、仲値)を用い、円換算している。

欠測価格の取扱い

統計公表までに報告がない場合や、取引の成約がない場合等に生じる「欠測価格」は、原則として前月の価格と同値(横這い)とする。外貨建て価格を調査している場合は、外貨建て価格を前月と同値とし、当該月の為替相場の動きを一律に反映させて、円建て価格を算出する。

外部データの採用

報告者負担の軽減を図るため、海上貨物輸送や土木建築サービスなどの一部品目では、精度が高く、継続的に利用可能な他機関統計や外部のデータベースを調査価格として採用している。

調査価格の変更および品質調整方法

調査価格について、調査対象サービスの代表性喪失、取引先の変更、調査先の変更などが生じた場合、速やかに調査価格の変更を行う。この際、新旧調査価格における品質の変化に相当する価格差を除いた純粋な価格変動分のみを指数に反映する。品質調整方法としては、直接比較法、単価比較法、オーバーラップ法、コスト評価法、ヘドニック法の5つを用いている。

品質調整方法
表 品質調整方法
名称 内容
直接比較法 新旧調査価格の品質差を無視し得るものと判断し、表面価格差をそのまま価格変動として処理する方法。
単価比較法 新旧サービスは数量こそ異なるが、新旧調査価格の品質は本質的に同一とみなされる場合において、新旧サービスの単価比を価格比とみなし、価格指数を接続する方法。
オーバーラップ法 同一条件の下で、一定期間、並行販売された2つのサービスの価格比が安定している場合、同一時点における新旧調査価格の価格差を品質差とみなし、価格指数を接続する方法。
コスト評価法 調査先企業からヒアリングした新旧調査価格の品質変化に要したコストを、両調査価格の品質差に対応する価格差とみなし、新旧調査価格の価格差の残り部分を「純粋な価格変動」(=物価の変動)として処理する方法。
ヘドニック法(注) サービス間の価格差の一部は、これらサービスの有する共通の諸特性によって測られる品質差に起因していると考え、サービスの諸特性の変化から「品質変化に見合う価格変動」部分を回帰方程式により定量的に推定し、残り部分を「純粋な価格変動」として処理する方法。
  • (注)他の品質調整方法の適用が困難である、ないしは十分な品質調整が行えない場合において、特性を定量的に示すデータが継続的に入手可能であることを前提に、適用している。

(7)指数算式

各時点ごとに各種サービスの価格をまず指数化し、その価格指数を基準時に固定した金額ウエイトにより加重算術平均する「固定基準ラスパイレス指数算式」を用いている。

  • 固定基準ラスパイレス指数を算出するための数式

品目指数の算出

調査価格ごとに、当月の報告価格(「比較時価格」)をそれぞれの「基準時価格」(基準年平均=100.0 に相当する価格)で除して個別の調査価格指数を算出する。この調査価格指数に各々の調査価格ウエイトを乗じ(調査価格の加重指数)、当該品目に属する全調査価格の加重指数の合計(品目加重指数)を当該品目のウエイトで除することにより、品目指数を算出している。

上位段階の指数の算出

総平均、大類別、類別、小類別といった上位段階についても、品目指数と同様の集計方法により、当該分類に属する全調査価格の加重指数の合計を当該分類のウエイトで除することにより、指数を算出している。

(8)指数の公表

企業向けサービス価格指数は、毎月第18営業日(ただし、月間の営業日数が短い場合などには公表日を若干繰り上げる)の午前8時50分に、前月分の速報値および前々月分の確報値を公表している。また、年2回(3、9月:2、8月速報公表時)、指数の定期遡及訂正を実施している。

指数を非公表とする品目

複数調査先による3調査価格以上を設定できない品目は、価格情報を秘匿するため、同じ小類別に属している別の1品目と共に非公表としている(指数公表に調査先からの同意が得られた場合を除く)。

指数の訂正

確報値の公表以降に判明した計数を指数に反映するため、遡及訂正を実施している。定期遡及訂正は、原則として、過去1年半分を対象とする。複数月に亘る契約期間の終了後に価格が確定する場合など、統計公表までに入手できない「欠測価格」は、定期遡及訂正時に確定価格に置き換えるため、大幅な指数の訂正が生じる場合がある(品目「携帯電話・PHS」「移動データ通信専用サービス」「受託開発ソフトウェア」など)。

なお、総平均指数に影響が及ぶなどの大きな変動が生じた場合には、定期遡及訂正とは別に、判明した直後の公表月に遡及訂正を実施することがある。

(9)接続指数

接続指数は、基本分類指数の品目以上の全指数系列と、参考指数「消費税を除く企業向けサービス価格指数」のうち、「総平均」「総平均(除く国際運輸)」「国際運輸」について、作成している。