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日本銀行業務局 日本国債の「一生」に関わる仕事 国債の円滑な発行と流通を支える(2018年9月25日掲載)

利付国債の入札タイムテーブル変更内容のイメージ。詳細は本文を参照。

国のさまざまな歳出を賄うための「国債」。その実務の大部分が法律に基づいて日本銀行に委託されています。日銀と国債の関わりと言えば、金融市場において、金融機関と発行済みの国債を売買するオペレーションがよく知られています。実はそれだけでなく、日銀は、国債の発行から決済(受け渡し)、利子や元本の支払いなどまで「国債の一生に関わる仕事」も担っているのです。

今回は、国債の公募入札と発行に関する事務を中心に紹介します。また、戦没者の遺族への弔慰金などの支払いを目的に発行される記名国債の事務についても紹介します。

国債発行にかかる日数を一日短縮するために財務省・金融機関と連携して効率化

国債(国庫債券)は、国が発行主体となり、利子および元本の支払い(償還)を行う債券です。

日銀は「政府の銀行」と言われますが、国債の事務を担うのは法令に定められているからです。業務局総務課営業・国債業務企画グループの猪俣亜矢さんは、こう説明します。

「日本銀行法(第三十六条・第三十九条)や国債ニ関スル法律(第一条)などにより、日銀は国債に関する事務を担当しています。具体的には(1)発行に関する事務、(2)決済に関する事務、(3)国債元利金の支払いに関する事務の大きく三つに分けることができます」

これらの事務を安全かつ効率的に行うため、日銀では1990年から「日銀ネット(国債系)」を運行しています。銀行、証券、保険、短資会社などの金融機関がその仕組みに参加しており、日銀は国債の入札の通知や応募の受け付け、発行、払込金の受け入れなど、一連の事務をオンラインで処理しています。2003年1月には新しい国債振替決済制度(注1)が始まり、新規発行分については券面を発行せずに完全にペーパーレス化し、国債の購入・売却といった取引を口座への記録により管理することになりました。日銀は「振替機関」として同制度の運営に当たり、国債の決済(受け渡し)も日銀ネットの振替口座簿上で電子処理しています。

日銀ネットで国債入札事務を処理する様子

こうした国債は、基本的に「公募入札」により発行されており、主として金融機関が保有しています。新規発行される国債を購入したい金融機関などが「これだけの国債を、いくらで購入します」といった応札を行い、落札したところは代金を支払って国債の発行を受けます。金融機関が応札・落札することで、新規発行される国債の需要と供給に応じて国債の発行価格が決まるのです(注2)

日銀は国債の入札から発行まで一連の事務を行います。これらの事務は、金融機関や財務省とのやり取りを含め、原則として全て日銀ネットで処理しています。2018年5月からは、入札当日から国債発行までの期間が原則として一日に短縮されました。

「これまで入札日の翌々営業日に国債を発行するのが原則でしたが、翌営業日が原則になりました。5月からは、流通市場における国債の売買は契約日(T(Trade date))から決済日までの日数が2日(T+2)から1日(T+1)に短縮されました。これを『T+1(ティープラスワン)化』と呼んでいますが、金融機関のニーズを踏まえ、国債発行でも原則『T+1化』を実現することになったのです」(猪俣さん)

流通市場の「T+1化」は、決済リスクの削減や、金融市場の流動性向上(金融資産としての国債の換金性の向上、資金運用・調達手段の充実など)、ひいては国際的な市場間競争力の維持・強化のため実現されたものです。決済リスクとは、取引の契約後、予定通り決済が行われないことで生じるリスクのこと。契約から決済までの期間が長いと、その間に、未決済の残高が積み上がることになります。リーマンショック以降、欧米の主要国を中心に国債取引の決済期間を短縮する動きが進み、日本でも国債の流通市場の「T+1化」を実現することになりました。その際、金融機関において流通市場と発行市場とで決済期間が異なることに伴うコストや事務の煩雑化を避けるため、国債の発行市場についても原則「T+1化」を実現することになりました。

しかしそのためには、これまで入札の当日と翌営業日の2日間かけて行ってきた事務を、入札当日の1日で終えなければなりません。日銀の事務フローのみならず、財務省や入札参加者の金融機関なども含めて、事務全体のタイムテーブルを見直す必要がありました。営業・国債業務企画グループ長の山岡正樹さんは、こう話します。

「『T+1化』に向けて、財務省や金融機関の方々と検討を重ねました。どのように事務を効率化すれば、決済期間の短縮を実現できるかと。日銀は財務省から国債入札・発行において実務を任せられ、マーケットの方々と事務を進めてきた歴史があります。事務全体をどう効率化するか、私たちは、そうした方々から知見を得るべく連携してきました。『T+1化』のため、日銀は国債の実務家として役割をしっかり果たさなければという思いでした」

営業・国債業務企画グループでは、決済期間の短縮に沿って手続を見直すとともに、金融機関や日銀の担当部署が何時までに何を行えば「T+1化」を円滑に実現できるかを分かりやすく示すよう心掛けました。


  1. (注1)国債振替決済制度は日銀が提供している国債サービスの一つです。国債権者(個人や企業など)、参加者(銀行や証券会社など)、振替機関(日銀)によって構成され、振替機関である日銀と国債権者との間に銀行や証券会社等の仲介機関(参加者)が介在します。こうした多層構造のもとで、国債権(権利)を帳簿上の振替によって移転させることなどが可能となっています。同制度は「社債、株式等の振替に関する法律」に定められています。同制度の下で保有される、紙の券面を発行しない国債を「振替国債」と呼びます。他に、国債登録制度の下で保有される「登録国債」や実際の紙の証券を保有する「国債証券(現物債)」もあります。現在は、振替国債が発行残高の99%以上を占めています。
  2. (注2)このほか、個人向け国債などの募集取り扱いによる発行の場合、財務省が指定する価格により募集が行われます。また、公的部門への発行もあります。

時限性と公平性が厳格に求められる国債の入札から発行までの事務

2017年度の国債発行総額は約156兆円。入札は年239回に上りました。日銀はほぼ毎日、入札・発行事務を行っています。利付国債(注3)の場合を例に、事務の内容を詳しく見ていきましょう。

実務を担う国債業務課国債業務グループでは、規程を基にチェックリストをまとめています。時刻の経過に沿って行うべきタスクが一覧に示されており、担当者はそれを確認しながら一つ一つのタスクを遂行していくのです。同グループ長の関貴介さんは、こう強調します。

「国債は、国の財政資金の調達手段であると同時に、金融市場で取引される、刻々と価格が変動する金融商品でもあります。落札結果の通知が遅れたりすると、金融市場に影響を与え、国債を取引したい金融機関は損害を被る恐れもあります。国債の入札・発行の事務は、ミスや間違いが起きないようにするだけでは不十分。時間どおりに、滞りなく、正確かつ公平に行うことが求められます」

各年度における国債の発行計画は、財務省が「国債市場特別参加者会合」等の各種懇談会を通じて、投資家の需要や市場の動向等も踏まえたうえで策定します(注4)。その後、入札対象国債とその入札予定日が財務省のホームページで公表されるのが、入札日の約2ヶ月前。発行予定日や発行予定額等が公表されるのは、入札日の約1週間前です。

しかし、表面利率(債券の額面に対して、毎年受け取れる利子の割合)を含め、入札に必要な詳細事項は、入札当日の朝まで財務省から日銀に通知されません。表面利率等の詳細事項は時間が許す限り市場の状況などを見極め決定する必要があるからです。財務省から国債業務グループに入札の詳細事項が記載された「オファー令達」がファクスで届くのは、当日の午前9時半頃。同グループから、金融機関などの入札参加者(2018年4月末で241社)に日銀ネットで入札をオファー(通知)するのは午前10時半。同グループの小沼英明さんは「一時間足らずでオファーの内容をシステムに正確に入力し、全て準備しなければならない」と言います。

「時限性の厳しい事務ですが、入札のオファーに誤りがないように、複数の目でしっかり確認します。そして時報を流しながら10時半きっかりに日銀ネットで全入札参加者に送信します」

記名国債証券の見本

入札の応募締切は1時間20分後の11時50分。その間に、入札参加者から端末入力のトラブル等で連絡が入り、急きょ対応しなければならないこともあります。そのときは、締切時刻等の時限性を意識するとともに、特定の入札参加者に有利な取り扱いにならないように気を付けて対応します。

「入札の公平性の観点から、疑念を持たれるような事務はできません。なお、仮に、入札参加者の端末にトラブルが起こり、オファーの電文が届かない場合は、すぐにファクスで送ることになっています」(関さん)

締切時刻が経過した後、同グループでは、入札参加者からの応札結果を取り纏めた資料を財務省へ日銀ネットで送信。財務省では、入札参加者のなかから国債の割り当てを受ける者とその金額の決定(募入決定)を行い、入札結果の概要を12時35分にホームページで公表します。その後、財務省からの「募入決定令達」(募入決定に関する通知)に基づき、15時に同グループから入札参加者にオファーバック(募入決定の通知)を行います(注5)。これを受け、落札した金融機関は、17時までに国債の新規記録を受ける口座の情報等に関する日銀への通知を済ませ、翌営業日に代金を払い込み、国債の発行を受けることになります。

このようなタイムテーブルは前述の「T+1化」に対応した流れですが、それ以前と比べると、当然ながら各事務に費やすことができる時間は大幅に短縮されています。しかし同グループでは人手を増やしたわけではありません。「T+1化」に向けて事務のスケジュールを工夫するとともに、スタッフの育成を進めたほか、「T+1化」の実施前には、財務省・金融機関などと総合運転試験(RT)を二度行うなど短い時間で事務を行っていくことに備えました。

「T+1化」を実施した後も国債の入札・発行事務は滞りなく行われています。「何事もなく、たんたんと事務を進めていくことが、実務家たる私たちの誇りです」と小沼さんは言います。


  1. (注3)利付国債とは、半年毎に利子が支払われ、満期時に元金が償還される国債。
  2. (注4)財務省は2004年、国債の安定的な消化の促進、国債市場の流動性の維持・向上等を図ることを目的に「国債市場特別参加者制度(日本版プライマリー・ディーラー制度)」を導入しました。2018年7月27日現在、銀行や証券会社など21社に国債市場特別参加者の資格が与えられています。この資格がなくても国債入札に参加できますが、特別参加者は財務省の定例会合に参加できることなど、利点があります(一方で、入札における一定の応札・落札責任などがあります)。同会合に、日銀はオブザーバーとして参加しています。
  3. (注5)募入の決定に際しては、入札参加者の応募のうち、価格の高いもの(または利回りの低いもの)から順に、発行予定額に達するまでの額が落札されます。そして落札者が自ら入札した価格(または利回り)が国債の発行条件となります。これは「コンベンショナル方式」と呼ばれる決定方法ですが、40年利付国債や10年物価連動国債については「ダッチ方式」と呼ばれる別の方法(募入最低価格または募入最高利回りを均一の発行条件とする方法)が採用されています。

今も「紙」で発行される「記名国債」大量の証券を迅速・確実にお届け

専用の機械で記名国債に保有者名を印字する様子

国債振替決済制度の導入に伴い、ペーパーレス化が進みましたが、現在も「紙」の国債証券に関わる事務は少なくありません。国債業務課国債証券業務グループでは、国債証券の国立印刷局からの引き取りに始まり、証券の発行、支払いを終えた証券類の回収・保管までの事務を総勢38名で担当しています。

そのなかでも同グループが主に取り扱っている国債証券が、戦没者の遺族などに発行される「記名国債」です。記名国債とは、第二次世界大戦により物的・精神的損失を受けた戦没者などの遺族や、強制引き揚げを余儀なくされた方などに対し、金銭に代えて交付される国債証券です。記名国債は、発行目的や償還金を受ける人が限定されているという性格上、原則として他人への譲渡などはできません。国債証券の裏面に「保有者の氏名」と「支払い場所」が記載されており、保有者(記名者)はその場所で賦札(ふさつ)と引き換えに償還金を受け取ることができます。

例えば「第十回特別弔慰金国庫債券」(注6)は、2015年10月以降、約100万枚発行されました。額面金額25万円の5年償還国債です。記名者は年に一回5万円ずつ、5年間にわたり償還金を受けます。

記名国債は、まず戦没者の遺族などが居住地の市区町村に請求申請します。その後、戦没者の本籍地の都道府県が裁定(請求者の権利について可否の判断)を行い、その結果に基づく厚生労働省からの請求を受けて、財務省から日銀に記名国債の「発行令達」が送られます。これに基づいて同グループは記名国債に保有者名を印字したうえで、交付の取り扱い店となる日銀の本支店や代理店(金融機関)に国債証券などを送付します。大量発行の時期は、月に約5万枚も発送しています。

記名国債は、紛失した場合の再発行が可能で、証券の保有者(記名者)が亡くなった場合の相続も可能です。現在これらの事務は日銀本店に集約して行っています。例年4~6月の繁忙期には、日本全国から毎日約200~500通の郵便が届きます。同グループ長の森山勝勇さんは、「一つ一つ丁寧に内容を確認しながら、一日でも早く記名者にお届けできるよう、グループ員はもちろん、局内の他の部署からも応援者を募って、手続きを行っています」と話します。

日銀は損傷したお金の引き換えや、国の税金や交通反則金の受け入れも行っていますが、記名国債に関する審査や記名変更事務のように継続的に個人と直接やりとりすることはまれです。同グループの日比野秀和さんは、「戦前の手書きで作製された戸籍も参照して、家族間の相続関係を慎重に確認しています」と話しています。


  1. (注6)「戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部を改正する法律」(平成27年4月1日施行)に基づき、戦没者等の遺族に対して支給される特別弔慰金。詳しくは、厚生労働省のホームページをご覧ください(外部サイトへのリンク)。