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日本銀行国際局国際連携課の仕事 日本初開催のG20を総力をあげてサポート(2019年9月25日掲載)

2019年6月、福岡県福岡市で「G20財務大臣・中央銀行総裁会議」が行われました。日本が初めて議長国として開催するG20を、財務省や金融庁をはじめ多方面の関係者と協力しつつ水面下で支えたのが「国際局国際連携課」です。同課は、毎年、国内外で多数開催される国際会議における日本銀行の窓口的役割を担っています。広く報道された表舞台の裏では、準備や調整、当日の進行、各国中央銀行総裁ほか来日した代表団のおもてなし、滞在のサポートなど、国際局国際連携課をはじめ日本銀行のスタッフが全力を尽くし、会議を成功へと導きました。


多方面との連携を図りG20ほか国際会議を支える

各国財務大臣・中央銀行総裁が集合しました(写真出典:財務省・日本銀行)

国内外で主に日本銀行総裁や国際担当理事が参加する国際会議において窓口となり、企画や調整の役割を担うのが国際局国際連携課です。課名のとおり国をまたがる「連携」が主な仕事です。課長の上原博人さんはこのように話します。

「最近の国際会議は専門的な話題が増えていますので、議題に応じて担当する行内の他の関係部署から知見を得る必要があります。また、経費やシステムに関わる部署を含めた行内のさまざまな部署、そして関係する省庁等とも相談しながら準備を進めなければなりません。ですから当課では、日々、国内外の関係者と電話やメールでの綿密なやり取りが行われています」

1年を通して、多くの国際会議が世界各国で開催されますが、2019年に国際連携課が総力をあげて準備を進めたのが、6月8〜9日に福岡県福岡市で行われ、日本が初めて議長国を担った「G20財務大臣・中央銀行総裁会議」でした。G20とは、Group of Twenty の略で、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカ、そして日本のG7に加え、アルゼンチンやオーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、さらには欧州連合(EU)・欧州中央銀行(ECB)を加えた20カ国・地域のことです。

これほどの大規模な会議の開催に携わることは日銀としては多くありません。このため、約30名の国際連携課スタッフが中心となりつつ、福岡支店を含めた行内部署間の垣根を超えた体制づくりや準備が進められました。なかでも議長国ならではの重要な役割の一つに、会議の議題の設定があります。

「現下の国際的な議論に貢献できる話題を模索するとともに、G20財務大臣・中央銀行総裁会議は単発の会合ではなく、G20サミットという首脳会合に向けた一連の関係閣僚会合の一つであることも念頭に置く必要がありました。また、1999年の第1回会議から継続されてきた話し合いを受け継ぐことも考慮しなければなりませんでした。過去の議長国から学びつつ、その流れを今年は日本が担い、次にバトンを渡す感覚です」

人口高齢化という課題に対し活かされた日銀の知見

財務大臣・中央銀行総裁会議の模様(写真出典:財務省・日本銀行)

議題の設定に関しては、日本での開催が決定してから、5〜6人の専門のチームをつくり、対応しました。そのなかで総括を担ったのが、国際局審議役(G20関係)の中村康治さんです。

「各国から集まる財務大臣や中央銀行総裁に討議をしてもらうための材料提供として、日銀、財務省、金融庁の事務方レベルでテーマを出し、すべての議事を決めていくのが大きな仕事でした。国際会議は基本的に、うまくいってあたりまえ。そうしたプレッシャーの中、気を配るべきことは数多くあり、多方面に注意を払いましたね」

議長国としての役割は、福岡でのG20本番の二日間だけではなく、丸一年にわたります。1月の東京、4月のワシントンD.C.と事前に大小の会議やシンポジウムが行われ、少しずつ本会議に向けて認識が共有されていきました。

最終的に課題として注力したのは、(1)世界経済におけるリスクと課題の整理、(2)成長力強化のための具体的取り組み、(3)技術革新・グローバル化がもたらす経済社会の構造変化への対応、という三つの柱です。なかでも日銀の知見が活かされたのは、(1)に含まれる人口高齢化という課題でした。

会議期間中の日本銀行作業室

「人口高齢化は日本に限らず、今や世界的な課題です。日銀は高齢化が経済に与える影響を長年にわたって研究し、多くの知見があります。そうした知見を活かし、教訓を各国と共有することで、世界経済の成長力の押し上げに貢献したいという思いがありました」

実際の運営では、大臣・総裁レベルでの議論が活発に行われるよう、たとえば人口高齢化の議論においては、各国の高齢化の程度の違いに応じて三つのグループに分けるなどの工夫をしました。会議期間中は、議事の運営が円滑に進むよう、麻生太郎財務大臣とともに共同議長を務めた黒田東彦日銀総裁のサポートに専念。また、会議が始まる前から、中村さんほか日銀、財務省、金融庁の担当者は合意文書作成のための調整を行いました。

「大臣総裁会議の終了後はコミュニケ(公式声明)が発表されますが、そのためには、全員が納得する文書を作成する必要がありました。今、無事にすべてを終えてあらためて思うのは、議題の設定をはじめ、とにかく事前の綿密な準備が重要だということです。世界経済の情勢については日銀の海外事務所からの情報に加え、国際会議での場を含めて、各国当局と常に率直な意見交換を行い、地道に認識の共有を図っていく。そうした継続的な努力が大事なのだと実感しました」

議題の設定と並行して行われたのは、ロジ(後方支援)の業務です。今回の参加者は、財務大臣、中央銀行総裁クラスだけでも約60人。随行する代表団が約400人。移動や食事の手配から日本を紹介する文化イベントの開催まで、多岐にわたるおもてなしの準備に携わりつつ、予算管理や契約などを幅広く担ったのが柳内健吾さんです。

「海外からの参加者に加え、われわれ日銀スタッフ、財務省、警察、報道関係者などを含めると、2,000人程度が福岡県に集結することが想定されました。開催地である福岡県、福岡市、福岡県警、福岡財務支局とも連携を取る必要があったため、事前段階における調整が一番大変でしたね。書類バッグのような備品をはじめ、何をどれくらい調達するかなど、ひとつひとつ議論しましたが、なにしろ決めるべきことが大量にありました」

綿密な準備のかいあって、開催中は大きなトラブルもなく進み、やぶさめや纏(戦や消防の際に用いられた旗印の一種)、各国のイメージをデザインした着物の披露など、文化イベントは好評を博しました。その陰では、代表団向けのビュッフェについて、菜食主義の参加者向けのメニューを増やしてほしいといったリクエストがあったり、事前に渡されたIDパスをホテルに忘れたゲストがいたりと、想定外の要望や対応に追われたケースもあったとのこと。

福岡市美術館における夕食会の様子(写真出典:財務省・日本銀行)

また、8~9日の本会議の直前には、代表団によるコミュニケの原案作成作業が明け方にまでおよんだため、帰りのタクシーの手配などでスタッフも遅くまで待機しました。裏方のスタッフの苦労と配慮は想像をはるかに超えるものでした。

「終了後に痛感したのは、情報共有の大切さです。食事や輸送に関する情報の一部が末端の担当者まで届いていなかったこともありました。1,000人規模の情報共有は容易ではないものの、その仕組みを整えることが重要な課題だと思っています。個人的には、生まれ育った福岡県での一大イベントに携われたのが、得がたい経験でした」

各国の中央銀行総裁に同行し陰ながら会議を支えるリエゾン

会議中、リエゾン(要人の誘導・案内役)と呼ばれる25名の専任スタッフが日銀から派遣され、来日した各国中央銀行総裁に同行しました。万全を期すため、フライトの確認、ホテルまでの移動手段の調整など事前の準備が進められました。ところが、木村百合子さんが担当したアルゼンチン中央銀行総裁の場合、間際まで来日に関する連絡がなく、はらはらしたと振り返ります。

「随行員がいらっしゃらず、総裁がおひとりで東京から新幹線で博多に移動するとわかったのが、前日でした。博多駅で警備を担う福岡県警に伝達する必要もあり、直接ご本人にお電話を差し上げ、乗車される新幹線の時間や座席の位置などを確認しました。お目にかかるまでは緊張したものの、お会いして最初にファーストネームで呼んでください、と言われたんです。リエゾンのもてなしは日本式の細やかな気配りも重要ですが、受け身であってもいけません。積極的なコミュニケーションを取りやすくしてくださった総裁の心配りに感動しましたね」

また、担当したアルゼンチン中央銀行総裁をはじめ、参加者、関係者の様子も印象深く心に刻まれたそうです。

「時には遅い時間まで、会議以外でも各国間でコミュニケーションを取っていらっしゃる。そういう人と人との関係がしっかり構築されているからこそ、会議では白熱した議論が生まれる。その会議に集中していただくためにも、私たちがリエゾンとしてサポートする役割の重さを実感しました」

FSB(金融安定理事会)のリエゾンを担当した庄子可那子さんの場合は、FSBが所在するスイスのバーゼルだけではなくアメリカからも代表団が来日。双方の要望をうまくくみ取るために、詳細が決まっていない事項を細かく箇条書きにしてやり取りをするなど事前の確認に努めたそうです。

加えて庄子さんは、8日に行われた財務大臣や中央銀行総裁が参加した公式夕食会の司会という大役も務めました。財務省ほかの関係者に確認を取りつつ、司会の原稿作成等の事前準備も周到に行いました。

「参加者はネイティブスピーカーではない方が大半なので、司会進行の発言にあたっては過度に洗練された表現や難しい単語を避け、わかりやすい言葉を使うよう心がけました。また上司のアドバイスを受け、普段よりもゆっくり話す練習を重ねました」

夕食会の翌朝、「すっきりした顔をしているね」とFSB代表団の方に言われたと庄子さんは笑顔を見せました。リエゾンとの兼務で、当日までかなり多忙だったそうです。

金融市場局総務課の野嶋文乃のさんのように、国際連携課以外の部署から派遣されたリエゾンもいました。野嶋さんが担当したのは、インドネシア中央銀行の代表団。イスラム教徒であることから、事前の準備ではとくにハラル(イスラム法で食べることが許されている料理)がしっかり準備されていることに気を使ったと話します。会議中は事前の予定にない面談が急に設定されるなど、スケジュールが刻々と変わるため、気が抜けない状況が続きました。長時間一緒に行動するなかで、野嶋さんの目に映ったのもまた、会議に真摯に取り組む参加者の姿でした。

会議室前で議論する代表団(写真出典:財務省・日本銀行)

「インドネシアを含め、代表団が集まると、常に議論が行われていました。緊張感もあるなかでお疲れだったと思うのですが、皆さん、会議が終わってからも精力的に参加者とコミュニケーションを取られていました。そうした姿はリエゾンだからこそ間近で拝見できた、貴重な光景だったと思います。日程変更への対応をはじめ大変な業務ではありましたが、副総裁からは感謝の言葉もいただき、最後にはアヤノはインドネシア中央銀行のファミリーの一員だよと言われて、本当にうれしかったです」

福岡のG20は、会議の内容から進行、おもてなしまで、各方面の参加者から高い評価を得て終了したと、課長の上原さんは話します。

「滞りなく終えられたのはもちろんですが、これまでの蓄積を活かしつつ、効率的に会議運営を進めることができたのが大きな成果でした。それぞれの職員にとっても、さまざまな経験を積む実り多い会議だったと思います。今後も、国際会議の議長国の運営を担うことができる人材を地道に育てていく日々の努力が必要だとも再認識しました」

議長国としての最後の務めは、10月にワシントンD.C.で開催される会合です。今回得られた経験は今後に活かされることでしょう。国際連携課の「連携」は、G20が終わっても続きます。

(肩書は取材当時)