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日本銀行業務局 総務課国庫業務企画グループの仕事 国庫金のキャッシュレス納付をさらに普及させるために(2021年9月24日掲載)

日本銀行の重要な業務のひとつに、国のお金(以下、国庫金)の受入れと支払いがあります。国庫金と聞くと難しく思われるかもしれませんが、その多くを占めるのは税金の納付や年金の受け取り、つまりは、国民一人ひとりの暮らしと密接に関わるお金です。それらの受払いが円滑かつ効率的に行われるよう企画立案を担うのが、業務局総務課国庫業務企画グループです。さまざまな取り組みが進められる中でも、現在大きく力を注いでいるのは、国民の皆さまが納付する国庫金(税金や年金保険料など)のキャッシュレス化をこれまで以上に推進することです。今回は、キャッシュレス納付の普及のための最近の取り組みをご紹介します。


国民の日々の暮らしとつながる国庫業務企画グループの仕事

日本銀行の重要な業務のひとつに、「政府の銀行」としての役割があります。具体的には、税金や年金といった、個人や企業と国との間で生じる国庫金のやり取りに携わる仕事です。2020年度における国から個人や企業への支払いは3億9000万件/190兆円、個人や企業からの受入れは1億6000万件/130兆円(日銀推計)と、実に膨大な件数・金額を扱っています。その受払いが滞りなく行われるように、制度の企画立案を担うのが業務局総務課の国庫業務企画グループです。グループ長以下約40名の職員が業務に携わっています。このグループを統括する担当参事役の山崎真人さんは、グループの役割や置かれた現状についてこう話します。

「世の中が目まぐるしく変わる中で、国庫金の受払いを、安全、確実かつ効率的に行っていくための仕組みについて、関係者と連携しながら考えるのが私たちの仕事です。

先人たちは社会のデジタル化の進展を見据え、これまで制度やシステム基盤を地道に築いてきました。こうした取り組みが実を結び、国から国民の皆さまへの国庫金の支払いは、口座振込に代表されるように、ほぼキャッシュレスとなりました。国が国民の皆さまから受け入れる国庫金についても、キャッシュレスでの納付手段が既に整備されています。しかしながら、その認知度はまだ低く、キャッシュレス納付の割合は、緩やかな上昇傾向にありますが、ようやく5割を超えたところであり、まだまだ道半ばと言わざるを得ません。ただ、昨年から続く新型コロナウイルス感染症の影響により、非対面・ペーパーレスに対する社会的要請が強まっていることもあり、状況が大きく変わりつつあります。政府においても、行政サービスのデジタル化の取り組みを一段と加速しており、日本銀行としても、こうした世の中の変化をしっかりと受け止め、国庫金のキャッシュレス納付がさらに普及していくよう、関係者の取り組みをサポートしていきたいと思っています」

現在、国庫業務企画グループが中心となり、全国に32店舗ある日本銀行支店のネットワークをフルに活用しながら、多方面への取り組みが進められています。

  • 国庫金のキャッシュレス納付比率はようやく5割を超えたところ

    2003年度から2020年度までの、現金納付、キャッシュレス納付、キャッシュレス納付比率の推移を示したグラフ。2014年度まで5割を下回り横這いで推移していたキャッシュレス納付比率は、2015年度に5割を上回り、緩やかな上昇傾向を辿っている。

納付者自身のコストも大きく削減する国庫金納付のキャッシュレス化

机の上に大量の納付書類が積まれている写真

大量の国庫金の納付書。「現金納付」に伴う社会的コストは大きい

国庫金納付のキャッシュレス化といっても、実際に、どの部分のキャッシュレス化が立ち遅れているのでしょうか。

国庫金の納付方法は、金融機関の窓口やコンビニで納付書を使って行う「現金納付」と、口座振替やクレジットカード納付、スマートフォンやパソコン、ATMから行うPay-easy(ペイジー)による納付といった「キャッシュレス納付」の二つに大別されます。国庫業務企画グループ長で企画役の西澤裕之さんは、日本銀行で力を注ぐキャッシュレス化の意義についてこう話します。

「私たちとしては、金融機関窓口での現金納付をキャッシュレス化していくことが大事だと考えています。金融機関窓口での現金納付は、とりわけ社会的なコストが大きい状況です。個人や企業の納付者には、書類への記入、金融機関までの移動や窓口での待ち時間が生じています。また、金融機関では書類の仕分けや郵送作業に加え、書面事務を処理するためのシステム投資が、国・地方公共団体では受入処理や受入情報のデータ化といった作業がそれぞれ必要になっています」

全国銀行協会による試算では、税公金(国または地方公共団体に税金や社会保険料などとして納付されるお金)全体で見ると、納付者には年間2000億円以上、金融機関には年間約622億円のコストが発生しているとのこと。また、納付書などの書類に使われる紙のコストも含めると、金融機関の窓口納付にかかるコストは膨大なものになります。

「国庫金の現金納付の9割を国税、国民年金保険料、交通反則金が占めていますが、とりわけ金融機関の窓口利用が多いのは国税で、その約8割が企業からの納付です。現金納付がいまだ主流となっている国税納付のキャシュレス化に向け、最適な情報発信の在り方をしっかりと見極めて、さまざまな取り組みを重ねているところです」

銀行の窓口の利用が当たり前という根強い意識

国税当局では、キャッシュレス納付に関してさまざまな手段を整備しています。なかでもPay-easyによる納付に関してはすべての税目に対応し、スマートフォンやパソコン、ATMからでも納付できます。にもかかわらず、国税では金融機関窓口での現金納付がなかなか減らない背景について、同グループ企画役の金井由佳さんはこう説明します。

「多くの企業が現金納付を続けている背景を、関係者の方々との意見交換やデータの分析を重ねて調べてみると、次の二つのことが分かりました。

一つは、国税では申告と納付という一連の手続きにおいて、申告は税理士、納付は企業と分かれている場合が多く、キャッシュレス納付に必要な情報の連携が両者の間で必ずしも十分にできていないことが多いということです。申告については約7割が電子化されていますが、納付については約3割しか電子化されていません。キャッシュレス納付を普及させるためには、手続きの川上にあたる申告を担う税理士の皆さまの協力が不可欠だと気付かされました。

もう一つは、納付手続きを担う企業側の経理担当者は、国税の納付のほかにも、さまざまな支払い手続きで金融機関を訪れる機会が多く、窓口での現金納付が当たり前になっているということです。例えば、地方税を窓口で現金納付している企業であれば、地方税の納付のために金融機関に赴いているので、国税も一緒に金融機関の窓口において現金で納付してしまえばよい、と考えてしまうケースは少なくありません。国税と地方税を一体としてキャッシュレス化していくことが重要であると分かりました。

企業の国税納付に関わる人々は、官庁から金融機関、税理士、企業の経営者や経理担当者まで多岐にわたります。皆さまが一つになってキャッシュレス化を進めていけるようにするために、普段の業務を通じて国庫金の知見を培ってきた私たちは、関係者の方々をつなげる橋渡し役、いわばハブとしての役割を果たしたいと思って取り組んでいます」

  • 申告と納付の電子化割合の乖離を埋めることが課題

    申告と納付の電子化の割合を示した図。詳細は本文のとおり。

金融機関の声に耳を傾け課題を共有していく

オンライン会議の様子の写真

オンライン会議も活用して全国の金融機関へキャッシュレス納付の輪を広げる

金井さんの指揮のもと、多方面にわたる関係者が一体となってキャッシュレス化を推進していくために、金融機関との意見交換を進めてきたのは、同グループの今井潤さんです。

「国庫金のPay-easyによる納付に対応している約440の金融機関すべてにお声掛けし、お客さまに対するキャッシュレス納付の働き掛けの方法や工夫などに関するアンケート調査を、ここ数年で定期的に実施してきました。また、アンケートでは把握しきれない、より詳細な背景事情などについても、日本銀行支店のネットワークも活用して、個別の面談で意見交換を重ね、金融機関がどこに苦労されているかが見えてきました。

アンケートや個別面談を通じていただいたご意見を踏まえ、例えばキャッシュレス納付の拡大に向けた好事例などを共有することで、取り組みをさらに充実させたいと感じている金融機関の皆さまにも喜んでいただけました。

また、申告と納付の担い手が異なり、納付の電子化が進んでいない点について、キャッシュレス納付の利用拡大のためには、納付手続きの川上にあたる申告実務を担う税理士の皆さまのほか、申告や納付に使われる税務システムを開発・提供するベンダー(システム製造元)の協力が不可欠だということも分かりました。キャッシュレス化を推進するにあたって、どこに働き掛ければよいかが明確になったのは大きかったですね」

キャッシュレス化を目指し多方面へアプローチ

今井さんの分析を活かして、日本銀行本支店と国税当局との連携を図り、話し合いを進めてきたのは同グループ企画役補佐の田中遼さんです。

「金融機関からいただいたご意見を国税当局とも共有させてもらうことで、関係者が同じ視点に立って、ともに次の一手を考えていただけるようになりました。これは、日本銀行がまさにハブとなって関係者をつなぐ役割を果たすことができた結果で、感慨深く思っています。

具体的には、金融機関の声を反映し、国税当局では納付に関するリーフレットに工夫を凝らしたり、キャッシュレス納付の手順に関する動画を制作したりと、これまでにない新しい取り組みにつながりました。また、日本銀行では、企業がキャッシュレス納付に切り替える際のキーパーソンとなる税理士の皆さまに向けて、国庫金の書面納付書を処理する現場の見学会を開催するなど、いかに大量の書面処理が残っているかを実感し、キャッシュレス納付の意義に共感していただけるような機会を設けました」

税理士との意見交換会の模様の写真

キャッシュレス納付推進の輪を広げるため税理士の皆さまとも意見交換会や見学会を実施

また、今井さんは、税務システムのベンダーとの話を通じて得た手応えについて、胸を張ってこう語っています。

「企業が利用する税務システムにはキャッシュレス納付を簡単に行うことができる機能を備えるなど、さまざまな工夫を凝らしていただいていることを目の当たりにできたことから、こうした工夫を広く知ってもらうために企業に働き掛けたり、税務システムベンダーに対してはシステムの利便性をより一層高めていただくようお願いしています。こうした取り組みにより、キャッシュレス化への歩みを着実に進めることができているのではないでしょうか」

未来を切り拓く共同推進宣言

キャッシュレス納付共同推進宣言(一都三県)の際、一堂に会する官民代表者の写真

官民一体となってキャッシュレス納付を推進

さまざまな関係者との連携を模索しながら進めてきた試みが実を結んだのが、2021年5月の「キャッシュレス納付共同推進宣言」でした。東京国税局の呼び掛けのもと、同局管内の一都三県(東京、千葉、神奈川、山梨)、税理士会、納付者団体、金融機関、税務システムのベンダーなど、日本銀行も含めて全126団体が参加しました。キャッシュレス納付推進に関する共同宣言が、国税局単位で行われたのは全国初であり、参加団体数は過去最大規模となりました。また、国税と地方税のキャッシュレス化を一体で推進する方針を打ち出したことも画期的でした。これまで関係者の皆さまとともに地道に準備を進めてきた田中さんは期待を込めてこう話します。

「キャッシュレス納付の利便性や利用手順のさらなる周知を、関係団体で協力して行っていく予定です。また現在、官民一体での取り組みは他の地域でも見られ始めており、今後こうした動きが全国に広がっていくことを期待しています」

キャッシュレス納付共同推進宣言

  • キャッシュレス納付共同推進宣言書(一都三県)の写しの画像。共同推進宣言の文言と、共同宣言者である126の団体名が記載されている。

国庫業務企画グループの皆さんは、多くの関係者と力を合わせながら、先人たちが作り上げてきた制度やシステム基盤を用いて、キャッシュレス納付のさらなる普及に向け、アンケートや面談を通じて、さまざまなご意見に耳を傾けてきました。そうした中で浮かび上がった課題に対応すべく、日頃からお付き合いのある官庁や金融機関との意見交換を重ねるとともに、税理士や税務システムのベンダーといった関係者とも新たに関係を築き、キャッシュレス納付推進の輪を広げながら、ともに歩みを進めてきています。

グループ長の西澤さんは、最後にこう語りました。

「今後も全国各地の関係者の皆さまと緊密に連携して取り組みを続けていきたいと思っています。『いつでも、どこでも、便利な』というキャッシュレス納付のメリットを、より多くの皆さまに体験していただきたいですね」

(肩書などは2021年5月末時点の情報をもとに記載)