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「日銀探訪」第39回:情報サービス局総務課長 岡山和裕

政策・業務を外部に分かりやすく説明=情サ局総務課(1)〔日銀探訪〕(2016年10月18日掲載)

情報サービス局総務課長の写真

日銀が2014年3月に定めた「行動原則」は、役職員が日々の業務を遂行する際に常に意識すべき項目の一つに「外部との様々なネットワークを通じて、政策や業務についての説明責任を適切に果たす」ことを挙げている。さらに、14年度から始まった5カ年の中期経営計画では、金融政策運営や業務運営に関する「分かりやすい情報発信」を、重点的に取り組む課題の一つと位置付けた。

情報サービス局総務課は、対報道機関を除く広報・広聴業務を担っており、いわば外部に開かれた窓のような部署と言える。岡山和裕総務課長は「日銀と言えば金融政策のイメージがあると思うが、それ以外の業務についても広く理解していただく努力が必要と考えている」と話す。分かりやすい情報発信を目指し、各種のイベントを企画したり、ホームページの充実を図ったりするなど、日々知恵を絞っているという。岡山課長のインタビューを3回にわたって配信する。

「情報サービス局は総勢100人程度で、総務課と金融広報課がある。総務課は、政策・業務全般について内外から幅広い理解を得るために情報発信したり、外部からの質問や要望などを受け付けたり、それらを通じて日銀に対する評価を把握したりしている。ただし、報道機関を通じた広報は政策委員会室広報課が担当している。金融広報課は、金融広報中央委員会の事務局として、国民の金融リテラシー(知識や情報を正しく理解・判断できる能力)の向上を目指して活動している。同委は、幅広い団体や学識経験者の参加を得て、中立・公正な立場から金融に関する幅広い広報活動を行っている組織だ」

「総務課には、総務企画、広聴・図書、ホームページ、海外広報サービスの4グループがある。このうち総務企画グループは、局の庶務機能に加え、各種広報イベントの企画運営や主に大学生向けの出張講座実施、広報誌『にちぎん』の編集、生活意識アンケート調査、ホームページコンテンツ作成など、業務範囲が広い。まず、日銀の政策や業務を身近に感じてもらうためのイベントの企画運営について説明する。主に小中学生向けには、通常の見学に加え、日銀業務の疑似体験や体験学習をしてもらう特別見学会を開催している。例えば今夏は『日銀夏休み子ども特別見学会2016』と題して、見学に加えて、お金の使い方やお金に関する知識などの金融教育を受けてもらったり、経済ニュースから景気判断を行った上で金融政策を議論・決定してもらったりした。さらに、特段の年齢層を定めない市民講座や企画展も随時開いている」

「本店だけでなく、各支店でもイベントを開催している。首都圏以外の方々にも、日銀を身近に感じてもらいたいからだ。支店ごとに、歴史や特性などを生かし、趣向を凝らした取り組みや展示を行っている。珍しい例を挙げると、日銀券の裁断片を使って、福島支店では野口英世像、松本支店では松本城、大分支店では府内城を制作してそれぞれ展示し、好評を博した」 「毎年秋から冬にかけて、大学生を主な対象に、金融分野の小論文・プレゼンテーションのコンテストである『日銀グランプリ』を開催している。05年に第1回目を開いて以来、16年で12回目を迎えるが、わが国の金融に対する問題意識の向上や、日銀への関心や親近感につながることを期待している。毎年、大学生の柔軟な発想力に基づくさまざまな角度からの提案がある。今年の課題は『わが国の金融への提言』とした」

大学生向けに「出前」講義=情サ局総務課(2)〔日銀探訪〕(2016年10月19日掲載)

日銀は、将来を担う若い世代への情報発信にも力を入れているが、その一環として、大学生向けに出張講座を実施している。情報サービス局の職員が大学に赴き、講師として日銀の政策や業務運営を平易に解説する取り組みだ。同局の岡山和裕総務課長は「学生たちから日銀に対する理解が進んだという声を多くいただいている」と話す。

また、東京駅なども手掛けた辰野金吾博士による設計で、重要文化財にも指定されている日銀本店は人気の東京観光スポットだが、見学の受け付けや案内は同局総務課の仕事だ。

「総務企画グループは、大学生向けの出張講座も手掛けている。情報サービス局の職員が大学へ伺い、当行の政策・業務運営全般を平易に解説するもので、2010年に開始した。主に経済学部や商学部の授業の一部として講義を提供する形式が多い。テーマは『日銀誕生の経緯』『日銀の目的』『発券業務』『金融システムの安定』『物価の安定と金融政策』などさまざまで、先生や学生のニーズに合わせて柔軟に実施している。学部・ゼミ単位で日銀見学に来られた際に、同様の講座を提供することもある。講義後に学生にアンケートを実施しているが、日銀に対する理解が進んだという声が多い」

「広報用の印刷物やビデオも作成し、ホームページに掲載したり、見学者に配布したりしている。具体例を挙げると、季刊発行の広報誌『にちぎん』には、役員と著名人との対談、著名人のエッセーやインタビュー、地域で活躍している人や企業の紹介、当行の業務紹介、『経済・物価情勢の展望(展望レポート)』やその他の各種リポートの解説などを掲載。社会経済や日銀を身近に感じてもらうため、分かりやすさや親しみやすさをモットーに編集している。また『くらしとつながる日本銀行』というタイトルで、日常生活と日銀の政策・業務との接点を実感してもらえるようになるべく平易な用語で説明した広報用ビデオも作成した。金融経済を分かりやすく解説したさまざまなパンフレットも用意している」

「日銀や金融経済に関してよくいただく質問については、『教えて!にちぎん』と題したQ&A形式の解説コーナーをホームページ上に設けている。金融政策の変更など、内容に変化があったときには、関連するQ&A項目を書き直す。問い合わせが多い事柄を、新しくQ&Aに追加することもある。小学生向けや中学生向けの学習用コンテンツもホームページで提供している」

「幅広い層から意見を聞く広聴活動の一環として、四半期ごとに『生活意識に関するアンケート調査』を実施している。これは、一般の方々が現在抱いている生活実感や、金融経済環境の変化がもたらす意識や行動への影響を把握して、当行の政策や業務運営に生かそうという目的で、1993年から行っている調査だ。景況感、暮らし向き、収入・支出、物価、雇用環境、金利、地価に対する実感や見通し、当行への意見・要望などを毎回伺っているほか、6月と12月の年2回は当行に対する認知度・信頼度なども調査している。時勢を踏まえた特別調査も随時実施しており、これまでに家計の消費行動・住宅投資、家計の決済行動、当行の広報活動に対する評価などのテーマについて調べた」

「広聴・図書グループの業務としては、まず見学案内がある。日銀の役割や業務を国民に直接紹介する場として本店見学を実施しており、年間の見学者数は約4万人に達する。事前予約制で国の重要文化財である本館の内部や旧地下金庫などを案内しているほか、6月には事前予約不要の見学も試行的に開始した。10月以降は、本館の免震化工事のため入館受け付け方法などを変更するが、見学自体は継続実施する予定だ。見学は各支店も受け付けていて、支店全体の見学者数は年間約2万5000人に及ぶ」 「外部から寄せられるさまざまな質問や意見への対応も、同グループの役割だ。当行の公表統計や公表資料に関する照会、業務に関する問い合わせなどが電話や電子メールで寄せられるので、それに対して回答する。また、金融政策や業務運営に関する意見は、行内の関係部署に伝達する。質問や意見、要望は、平均すると月数百件に上る。この他、情報公開の窓口や職員向けの図書事務なども担当している」

HPが重要な情報発信手段に=情サ局総務課(3)〔日銀探訪〕(2016年10月20日掲載)

日銀のホームページには、金融政策決定会合の決定事項をはじめ、同行が公表している情報のほぼすべてが掲載されている。金融関係者や学識関係者などを中心に関心は高く、アクセス数は年々増加。2015年度は2億2000万件のアクセスがあった。ホームページの維持管理は、情報サービス局総務課の仕事だ。岡山和裕総務課長は「ホームページは日銀にとって重要な情報発信ツールであり、公共財と思っている」と話す。海外からのアクセスも多いことから、英語での情報発信にも努めているという。

「ホームページグループは、当行ホームページの維持管理が主業務。金融政策決定会合の決定事項や全国企業短期経済観測調査(短観)といった極めて注目度の高いものから、各種イベントまで、日銀が公表している情報のほぼすべてがホームページに掲載されており、原則としてこの掲載が対外公表となる。日銀にとって重要な情報発信ツールであり、また公共財と思っている」

「日銀の情報に対する内外の関心は高く、アクセス数は年々増加傾向にある。14年度の1億6000万件に対して、15年度は2億2000万件と、1年間で4割弱増加した。どのような情報が掲載されたかについて、毎営業日の夕方、メール配信サービスで周知しているほか、トップページに掲載される主要情報はツイッターでも連絡している。どちらも無料で登録できるので、ぜひご利用いただきたい」

「現在、使いやすさの向上を目指して、ホームページのリニューアルを予定している。例えば、トップページに金融機関関係者など利用者の属性に応じた入り口を新設したり、日銀が伝えたい情報を目立たせるように工夫したりすることを検討中だ。現在、スマートフォンに対応しているのはページの一部にとどまっているが、リニューアル後はほぼすべてのページで対応するようにしたい」

「ホームページを使って、英語による情報発信も行っている。日本語で発信する情報に対して英語ではどのように伝えているのか分かりやすくするため、いくつかのページでは、日本語のページとそれに対応する英語のページを行き来できるような工夫も行っている」

「当行の各種情報や資料の英訳は、主に海外広報サービスグループの所管だ。具体的には、金融政策決定会合議事要旨の英訳を関係部署と連携を取りつつ準備して、和文と同時公表している。役員講演のテキストも、和英同時公表のケースが増えてきた。これらの英訳では、用語や表現ぶりなどに関して、過去に類似のものがある場合には整合性を取り、情報の受け手に混乱や誤解が生じないように注意を払っている。また、日本語には曖昧なところもあるので、意味をしっかり確認してから訳す。例えば『今年に入ってから』では、年初から現在までという意味ならば『since』、年初から現在まで続いているかどうか分からない場合は『after』と、前置詞を使い分けている」

「同グループは、日銀の英文年報である『Annual Review』も作成している。ベースになるのは毎年度の業務の状況を取りまとめた業務概況書だが、海外の読者に有益と思われる情報も補う。具体例としては1)正副総裁と審議委員の写真2)海外事務所の所在地3)業務概況書には記載しない金融経済情勢や金融政策決定に関する情報4)ホームページや一般見学、貨幣博物館などの一般広報に関する情報―が挙げられる。各局の各種リポートについては、英文で書かれたもののチェックを依頼されることもあるし、翻訳自体を請け負うこともある。15年度は、よくある質問への答えを記載した『教えて!にちぎん』の一部を英訳し、『FAQs』として掲載した」 「課の運営に当たっては、常日ごろから、効率的・効果的な仕事、状況に応じた柔軟・迅速な対応、関係部署との緊密な連携の3点を意識している。当課は日銀と外部との『接点』となる部署であり、まず日銀を身近に感じていただくことが重要と考えている。その上で、政策に焦点が当たりがちだが、それ以外の業務も地道に行っていることを、分かりやすく伝えていきたい」

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