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総裁記者会見要旨 (11月30日)

1998年12月3日
日本銀行

—— 平成10年11月30日(月)
於 大阪銀行協会
午後 4時30分から約30分間

【問】

先頃、金融機関の中間決算の発表が終わり、併せて大手行の公的資金による資本注入申請見込み額が公表されたところである。都銀では5千億円程度を申請するとした先が多く、かなり似通った数字となっているが、総裁は、この金額で金融システムの安定に充分と思われるか。

【答】

それぞれの金融機関がどれだけ資本を増強し、さらに、そのうちどの程度を公的資金に依存するかは、個別金融機関の状況によって自ずから異なってくる。また、公的資本注入は金融再生委員会の承認にかかる事柄で、大手行の申請見込額について私の立場からコメントすることは差し控えたいと思う。

そうしたことを前提として、一般論として申し上げるならば、市場の信認を回復するためには、個別金融機関が現在の経営内容や今後の経営戦略を熟慮のうえで、思い切った規模の資本増強策を講じる必要がある。各金融機関におかれては、こうした点を充分踏まえて、信認回復のために必要な金額を申請されることを強く期待している。

今回の公的資金注入は、金融機関にとって非常にいいチャンスだと思う。国会や政府で随分時間をかけて議論をした末、公的資金の導入という途が開かれ、しかも25兆円といった大きな金額が準備されている訳である。金融機関としては、この機会に他の銀行がどうするかということを気にするのではなく、自らの判断で、思い切った償却を実施するとともに、自行の不良貸出をなるべくバランスシートから落とし、それを注入された資金で埋め合わせて資本金を充実させていくことができれば、こんないいチャンスはない。これを逃せば、あとはなかなかそうしたチャンスはありませんよ、ということを私は申し上げたいと思う。

【問】

公的資金注入の申請と併せて、各行とも色々なリストラ案を出してきている。さらに、BIS基準行で、海外業務を縮小する動きもある。こうしたリストラ策を前提としたうえで、今後、日本の金融機関が国際競争力を保つことが可能と考えられるか。

【答】

日本の銀行が今やるべきこととして、私がこのところ繰り返し言っているのは、一つ目は早期償却——これに伴う過少資本の問題については、なるべくディスクローズをしたうえで、必要な公的資金の注入、あるいは内外での資本調達により対応すること——。二つ目には、思い切ったリストラ。三つ目は、内外の激しい金融再編の流れの中で、自分の銀行はどの道を選ぶかをここで決めて、それに向かって動き出してほしいという3点である。私は、ここ3〜4ヶ月このことを言い続けてきたわけだが、実際の状況がその方向で動いてきているのは大変結構なことである。

最近では、ドイツ銀行とバンカース・トラストが一緒になるといった、これまで考えられなかったようなことが起きており、こういう銀行が世界のマネー・センター・バンクとして競い合うこととなろう。そういう銀行のコア・キャピタル——BIS基準の自己資本ではなく、いつでも償却原資として利用できる本当の意味の資本を意味しており、Tier Iに近いもの——がどれくらいあるかを市場はみんな見ている。

そうしたなかで、充分な自己資本を持って戦っている大きな銀行とやり合っていくには、資本金を相当持っていなければいけないし、そういう欧米の大銀行と競争していく気力を持った銀行が必要と思われる。これまで日本の銀行は、いわば護送船団方式によって守られてきたわけだが、今後はそういうわけにはいかないのではないかと思う。

いまの世界の中でマネー・センター・バンクは幾つくらいが適当なのか、私自身も関心があって、米英の銀行の人達に機会あるごとに質問したり、自分でも考えてみるが、どんなに多くみても20行は多すぎるという気がする。そうしたことを考えると、日本の銀行がそのうちマネー・センター・バンクとして幾つくらい対等にやっていけるのか自ずから感じが出てくると思う。

なにも、みんながマネー・センター・バンクになる必要はない。18行のなかで、すでに海外業務を縮小し、国内で、例えばスーパー・リージョナル・バンクとして、——東海銀行とあさひ銀行の例がよく引き合いに出され、また、当地では大和銀行もそういうことを考えておられると受け止められているが——それぞれの地域で有力な地方銀行に徹し、しかも相互に協力し合っていくという方向感を打ち出している先がある。このような生き方は、私は、非常にスマートな決定を早くやられたな、という感じがしている。あるいは、インベストメント・バンクのようなかたちで、証券・保険・信託といったものも含めて、グローバルな活動をしていくところが別に出てくることもあり得るといえよう。

そんなことを考えると、日本の銀行のうち何行がマネー・センター・バンクとしてやっていくかという点については、いま申し上げた点を踏まえて各行がお決めになることだと思う。現在、金融機関の提携の話が毎日のように新聞を賑わしているが、そうした方向を自ら決定する時期ではないか。

【問】

10年度決算の見通しで、大手行が不良債権の引当てをかなり増やしているようだが、この引当状況についてどのような見方をしているのか。また、強制的に分類債権の引当てをさせる必要はないのか。

【答】

先日、大手各行の10年度決算見通しに併せて、18行計でこの上期における2兆4千億円の不良債権処理額が発表された。これは、昨年上期と比べると若干減少しているけれども、かなり高い水準であり、また、各行とも、下期にかけて一段と処理を進める方針であると聞いている。

この間に、金融再生法による新しい開示基準に基づき、資産内容を前倒しで公表する先がみられるほか、開示拡充に向けた各金融機関の工夫もみられるなど、(開示に向けた動きは)かなり前向きに進んできているように思う。

ご質問の、分類債権に対する引当ての問題については、先般、金融機能早期健全化法に基づいて、資産の査定方法、査定区分ごとの引当方法に関する基本的な指針を定めた告示が出されたところである。

償却・引当てのあり方については、今後、貸倒れ等の実態を踏まえて、金融再生委員会等で引当て方法等の検討が行われていくものと理解している。

先程も申し上げたように、私が言いたいことは、この機会に思い切って償却、資本の健全化を実現して欲しいということである。

【問】

最近の長期金利は、9月9日に日銀が金融市場調節方針の一段の緩和を発表した以前の水準に戻っているが、日銀としては、何か手を打つ必要があるとお考えか。

【答】

最近の長期金利の反発は、市場では国債の需給の悪化懸念を指摘する向きがかなりあるようだが、株価もここにきて反発していることもあり、基本的には、公共投資の増加とか、緊急経済対策の決定などを受けて、景気回復への期待感がでてきた、と認識していいのではないかと思う。但し、緊急経済対策自体は、これから具体化され、実施に移されていくものであり、その効果については、今後とも慎重に見極めていく必要があろう。

なお、日本銀行の国債買い切りオペについては、これまで銀行券の増発に見合った金額を実施してきているが、私どもとしては、現時点で、そうした基本的な考え方を変えるつもりはない。

【問】

本日、みどり銀行と阪神銀行が合併に調印し、当初言われていた合併比率よりもみどり銀行側の比率を下げるということで株主責任を明確にするという決断がされたようであるが、今回の結果について、どのようにみているか。

【答】

みどり銀行のこれまでの経緯を振り返ると、平成7年8月に経営が破綻した兵庫銀行処理の受け皿として7年10月に設立され、平成8年1月に預金保険機構から資金援助を受け兵庫銀行の営業を譲受けたが、当時は特別資金援助制度がまだ導入されておらず、損失の補填が十分でなかった経緯がある。また、その後の阪神地区の経済が低迷したことから、損失が拡大し、10年度の中間期において繰越損失が約7,100億円に拡大していた。このため、本年5月15日に、阪神銀行による吸収合併を骨子とした処理方策が発表され、来年の4月1日に合併予定ということで、ここまで来ている。

原則論としては、債務超過の金融機関については株主責任を求め、資本金をすべて損失の補填に充てるべきだと思われるが、みどり銀行の資本金709億円というのは、震災復興という特殊な事情の下で、復興需要への対応と、同地域への信用秩序の維持といった公共性の高い目的があったため、当局の関与の下で集められたというのが事実だったと思う。従って、同行の株主責任を全面的に問うことは難しい面があるといっていいと思う。

他方、同行の損失のうち、同行が新規に開拓した貸出先から発生した損失について責任を問わないということは、公平性を欠くといっていいと思う。従って、同行の資本金約700億円のうち、約500億円は預金保険の資金援助によって補填したうえで、合併比率を算出するということが、適当だと考えられる。1対0.18という数字については、まあ、この辺りが適当かという感じがしている。

【問】

先程の関西経済4団体共催懇談会のなかで、FBの市中引受けを来年4月1日からできればいいとお考えになられているという発言があったが、この4月1日という期日はかなり確実なものなのか。

【答】

それはまだ正式に決まっていないが、FBは予算にも関係するものなので、年度初の4月1日から一般競争入札を開始するという考え方もあろうかと思われる。本件は、大蔵省理財局や国際局等との関係もあるが、かなり議論も煮詰まってきていると聞いており、可及的速やかに市場化できるように努力を払って参りたいと思っている。

FBは、円を国際化していく過程で、最初の花形スターであるといえる。政府が発行し、市場で短期売買が自由にでき、しかも日銀のオペレーションの玉に使えるということであれば、FBの市場化は円の国際化に大きく貢献する。例えば、アジアの人たちが日本に輸出し、円で決済する場合、代金を数日間運用したくても運用する玉がなかったが、ロンドンやニューヨークでは、市場性があり、信頼ができ、かつ税金(源泉徴収)もかからないTBが運用対象としてある。こうしたものがあると、その国の通貨は無駄がなく便利だということになる。私は、長年の間、円の使い勝手の良さということを言っているが、このFBが市場化されることによって、国際的にも円を利用する人が増えてくるものと思われる。

また、現在、日本銀行では、約48兆円の銀行券発行残高があり、それとほとんど同額の国債を資産として保有している。そのうち20兆円に当たる短期証券については、日本銀行が市中公募のかたちではなく、日銀引受のかたちで保有しており、かつ市場で必要に応じて売買することが難しい状況となっている。私どもとしては、日本銀行の資産面での流動性を高める観点からも、他の国々の例にならって、FBを市場性あるものにしてもらいたいし、そうすることができると思っている。

こうしたFBの流動化を「はしり」とすることによって、CPや社債等の民間債務の市場についても内外の投資家が参入することによって厚みが増し、東京市場全体がビッグバンで目指している国際金融市場として発展していくものと期待している。

以上