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総裁定例記者会見要旨(4月13日)

1999年 4月14日
日本銀行


—— 平成11年 4月13日(火)
午後 4時35分から55分間

【問】

先週短観の発表があり、景気の下げ止まりをはっきりさせた感じであるし、今日は、月例経済報告で堺屋長官の言葉を借りれば「胎動」か「鼓動」という言葉を使って若干前に進んだような表現をされているようだが、一方で先週、山口副総裁がフィナンシャルタイムズのインタビューで、今後物価の下落圧力が高まると信じる理由がある──デフレがやってくるのではないか──というようなウォーニングを発している。そういう中で総裁として今の景気の現状をどう認識しているのか。

【答】

景気の現状については、一口で言えば「足許、下げ止まりの様相を呈している」という判断である。今朝、経済報告閣僚会議で堺屋さんの話も聞いたが、特に企画庁の判断も大きく変わったという感じはしなかった。

すなわち、設備投資が減少を続けており、個人消費も依然回復感に乏しいという暗い面がずっと続いているが、明るい面としては、住宅投資がこのところ持ち直しつつあるとか、公共投資の発注が足許で大幅に増加しているということ、こういう最終需要の動向や在庫調整の進捗を背景にして生産が下げ止まったということは明るい変化だと思う。

金融面については、日本銀行の金融緩和措置のほか、金融機関に対する公的資本注入というのが大銀行に対して3月末に終わったし、こういうこともあって株が堅調に推移し、取引高も急増している。4月に入ってからもだいたい毎日5億株を上回っており、多い日は12、3億株というようなこともあり、これは非常に大きく変ってきたことだと思う。私どもは、無担保コールのオーバーナイト金利が実質ゼロでも良いとの方針で、──このところ0.03%というのが続いているが、これは手数料というかマージンを除けば実質ゼロということになるんだと思うが──短期市場に潤沢に資金を供給したことから始まって、ターム物金利が非常に下がった。

その他に私どもが非常にうれしいのは、ジャパン・プレミアムがほとんど解消したと言って良いと思う。これは外との関係では、日本の金融に対する信頼が戻ってきたと言っても良い状況だと思う。さらに、長期金利が下がって、1.5%あるいは1.6%というところまで——ピークが、2.5%位だった──ここ2、3か月でずっと下がってきた。

金融システムについて皆さん不安を持っていたのがなくなってきたということとともに、企業金融の逼迫感もなくなってきたというのは、金融にとっては非常に大きな変化ではないかと思う。こういう金融面の環境の改善が景気に対して徐々に好影響を与えていくだろうと期待している。

しかし、先行きどうなるかというと、企業収益がまだ低迷しており、家計の雇用・所得の環境が悪化を続けているし、また企業のリストラの動きがこれから──3月決算でかなり償却をやったと思うが──いよいよ本格化してきて、競争力のないものは償却、リストラクトしていくということで、──これはいずれ生産性の向上、収益の向上に繋がっていく訳だが──短期的には設備投資や雇用面を中心にしてマイナスの影響を与えていくことになるということなので、近い先行きについては、まだ暗い面があるということは確かだと思う。

短観の調査結果をみても、企業マインドの悪化には歯止めがかかってきているが、資本ストックや雇用の過剰感というところは依然大きい訳である。こうした点を踏まえると、現時点ではなお民間需要の速やかな回復は展望し得ないと言っても良いのかと思う。また、こういう実体経済のもとで、物価は今後も下落基調が続いていくかもしれない。

先週末の金融政策決定会合ではこのような金融経済情勢に対する認識を踏まえて、討議を尽くした上で、当面の金融政策運営については、2月12日に決定した金融市場調節方針を維持することを決定した訳である。

日本銀行の目指すところはあくまでも、「物価の安定を図ることを通じて、国民経済の健全な発展に資すること」──これは新日銀法第2条にはっきり書かれた私どもの理念であり、目標である。これ以外に「何を目標としているか」と言われても、具体的なことを申す訳にはいかないと思う。

現在行っている調節方針のもとで、コール市場は多少縮小傾向を辿っている。ピーク時に比べ2割位は縮小してきているが、こういうことは自然に起こり得ることであると思う。どこまで下がっていくか、その辺は私どもも注意深くみていく必要があると思うが、こういう資金は、先程言ったように、ターム物やあるいは長い物へ行ったり、株へ行ったりしている訳で、潤沢に資金が出ていれば、こういう事態が起こっていくのは自然の流れかと思う。

こうした中で注意しなければならないのは、資金の決済面等で支障が生じるような事態は避けていかなければならないということである。その辺は、第一線の人達が日々、市場あるいは準備預金等を良くみながら、あらゆるオペレーションの手段を使って、潤沢な資金供給を行い、市場の安定化と調整に努めている。私どもにとっては誇るべきことであり、良くやってくれているという感じがしている。

こうしたことを踏まえて、デフレ懸念の払拭ということが展望できるような情勢になるまでは、市場の機能に配慮しつつ、無担保コール・オーバーナイトレートを事実上ゼロ%で推移させ、そのために必要な流動性を供給していく現在の政策を続けていくことになると思っている。このことが、先週金曜日の金融政策決定会合において、多くの委員の一致した意見であったと申し上げられると思う。

ご質問があった、山口副総裁の発言も、今私が申し上げた景気や物価の見通しと基本的に異なるところはないと思っている。

【問】

先日国会で、2001年4月以降のセーフティー・ネットのあり方について問題提起をされたが、今回そういう問題提起をされた意図というか、総裁の考えを伺いたい。

【答】

今日も国会の参議院で、その問題のご質問があって答えた。もうあと2年足らずで、預金保険法によるペイオフコストを超える特別資金援助というのがなくなる訳で、これだけでなく、金融再生法、金融機関の破綻に関する施策の集中的な実施、それから今度の国民銀行について行った金融整理管財人による管理とか、ブリッジバンクの活用とか、あるいは長銀、日債銀に行った特別公的管理──「テンポラリー・ナショナライズド・バンク」──という一時国有化するやり方とかも2001年3月で終わりになる。それから、公的資本注入を行った早期健全化法も、同じ時に期限が来る訳である。そういう情勢というのは、2年足らずであるから、あっという間に来ると思う。決算でいけば今年の9月、来年の3月、9月とあと3回の決算である。

こういう今まであった非常に包括的なセーフティー・ネットというものは、日本の金融システムが置かれていた厳しい状況の中で、どうしてもこれが必要だった訳である。諸外国でも、これだけ完全なセーフティー・ネットというものは、恐らくみられなかったと思う。

そういうものがなくなる訳であるから、そういう時に、どういうことになるかということは、今から考えておかなければならない。こういう完全な包括的なセーフティー・ネットというのは、金融システムの不安を一応解消させたと言っても良いかと思う。こういうネットが機能したと言えると思うし、まだ1年半余りはこれで行ける訳だが、一方でこういうような措置というのは、公的資金を含め多大なコストを必要とする訳であるし、預金者、その他の債権者、金融機関、こういう関係者のいわゆるモラル・ハザードが起こってくる惧れを生じさせる面を持っている訳である。

それで時限的な措置を延長するかどうか、ペイオフの延長ということが盛んに議論され始めているけれども、これは最終的には立法府を通じた国民の判断に委ねられるべきものだと思う。

ただ、私としては、2001年3月末に向けて関係者が全力を尽くして不良債権問題の克服に当たることが重要であると考えている。その意味で安易に各種の時限措置の延長を視野に入れるということは、先程申し上げた副作用を生じ兼ねないということから、適当ではないと思う。

一方で、2001年4月以降のセーフティー・ネットのあり方については、社会的・経済的コストの少ない、かつ早期に問題を解決し得るような制度をデザインしていくことが重要な課題だと思う。預金保険の対象範囲のあり方といった問題についても、──金融債の問題だが──こうした観点から幅広い観点で検討されていくべきものだと考えている。

日本銀行としても、現在具体的なアイデア──これが良いといったようなもの──を持っている訳ではないけれども、今後、海外の事例や、これまでの破綻処理の経緯などを踏まえて、2001年4月以降のあるべきセーフティー・ネットのデザインを作成することについて、積極的に参画していきたいと考えている。

これは、中央銀行として当然今から考えておかなければならない課題のひとつではないかというふうに思っている。金融審議会でこの問題を検討することになっているはずだから、──もう始まっているかもしれないが──それなどにも私どもからも出て、活発な議論が行われて、制度のデザインができていくことが、2001年4月以降の金融システムへの安心感を与えるものだというふうに思う。

【問】

先般破綻した国民銀行に対する特別融資であるが、今回新たに通常のいわゆる並手金利に0.25%のリスク・プレミアムを上乗せした訳だが、政策委員会で色々義論もあったように聞いている。今回リスク・プレミアムを適用することとした判断基準並びに今後における方針如何。

【答】

今回の国民銀行に対する特融についてのご質問であるが、日本銀行では、本行資産のあり方とかこれまでの破綻処理の経験などを踏まえて、信用秩序の維持に資するための信用供与のあり方について、現在見直しを進めている。この点に関連して、先般3月18日に講演をした時に私はふたつのことを申し上げたと思う。

ひとつは、特融についての4原則の運営方針を今後更に明確化して、こういう条件を満たしたものなら貸しても良いということを決めておくこと、もうひとつは、リスク・キャピタルの供与、すなわちリスクが日本銀行に残る場合には、一段と慎重に対応すべきであるということを申し上げたつもりである。

特融というのは、特別の融通であるから、普通の日銀貸出ではない訳である。信用秩序維持のための、いわゆる「レンダー・オブ・ラスト・リゾート」(最後の貸し手)として日本銀行が行う貸付けは、金融調節上の目的で行う通常の貸付けとは本来性格を異にするものであるということは、もうお分かり頂けると思う。金融政策のスタンスを象徴する公定歩合というのは、本来金融調節上の目的を達成するために設定されたものであり、必ずしも日本銀行の行う全ての貸付けにそのままそれを適用するというものではない。これまで日本銀行はいわゆる公定歩合体系の中で「国債等を担保とする貸付利率」──これは今0.5%だが──と「その他のものを担保とする貸付利率(並手担保)」との間に0.25%の金利差を設けてきている。今般特融金利を見直すに際しては、先程申し上げたように、信用秩序維持のために行う貸付けと金融調節上の目的で行う貸付けとは異なるものであるという点を明確にするとともに、特融が担保の徴求を条件としていない貸付けであること、またこれは政府保証のないものであること、そういうものを並手担保と同じ条件で貸す訳にはいかないということを考慮して、更に0.25%を上乗せして、1%ということにした訳である。

【問】

先日の金融政策決定会合では、デフレ懸念が払拭されない限り、その次の金融政策決定会合まで、無担保コールオーバーナイト物金利をゼロ近傍に維持し続けることを決定したのか、それともデフレ懸念が払拭されない限り、更に長期に亘って維持することを決めたのか。

【答】

そこまでは決定した訳ではない。金融市場というものは、まったくの生き物であるから、いつ何が起こるかわからない。従って、おっしゃるように、次回の決定会合まで「これでいく」ということを決めた訳であるが、考え方としては、今のデフレ懸念が残っていく限りは、やはり、潤沢に資金を供給していく今のやり方でいく──しかも、今のやり方で十分、摩擦なしに市場の運営、あるいは調整が行われている訳であるから、「それで良いのではないか」という点が、多数の意見であったというふうに思う。

【問】

「デフレ懸念が払拭された」と判断する時の条件は何か。

【答】

それは、条件と言われても困るが、この辺は、私どものいわゆる長年の経験や、専門的な見方で──勿論、意見はその時分かれるかもしれないが──判断できると思っている。

【問】

総裁は講演などで構造改革の必要性を訴えていると思うが、構造改革と金融政策の関係について、どのように位置付けているか。

【答】

日本経済にとって必要なのは、まさに構造改革であって、政府もそのことを認識されて、「産業競争力会議」をスタートさせた。どうすれば競争力のないものをなくして、前向きのものに新たな投資が起こっていくようにしていけるかについて、税制など色々なことに関する議論がこれから始まると思う。

景気がやや小康状態、下げ止まったという状況が、このままいつまでも続けられるかということについては、私は自信がない訳で、景気を上向きにしていくものは、民間の企業家と家計のコンフィデンスであると思う。それに必要なものはやはり構造の改革であると思う。

というのは、需給ギャップがまだ非常に大きく残っている。供給サイドで今まで持っていた過剰設備・過剰雇用・過剰負債は、いずれも80年代から90年代初めまでのいわゆるバブルの後遺症と言えると思う。企業の中でそういうものが残っている限り、なかなか採算を良くしていくという訳にはいかない。過剰債務をどのようになくしていくか、そして過剰設備をどのように崩して新しい需要にミートした設備投資を行っていくか。それから、企業の中での過剰雇用者を同じ企業の中で前向きの方に向けていくこともできるであろうし、そうでない場合にはある程度転業してもらうことも必要になってくる訳である。特に、製造業については、今言った3つのことが絶対必要であると思う。

また、今非常に問題なのは、国民所得の約7割を占めている非製造業部門の採算性が非常に悪いということである。この大部分は非常にきつい規制の中で利益がとれるようになっていた。金融などもそうであるし、通信・交通・教育もそうであろう。生活に密着した室内デザイン、理髪、化粧といった類のものも含めて、こういうものを本当に需要者は求めており、お金はかなりある訳なので、自分たちの欲しいものが満たされるのであれば、採算性のある企業ができてくるだけでなくて、家計の消費の方もこういうものに出ていくであろうと思う。

3つ目に、高齢化が始まっている中で、90年頃から貯蓄がどんどん増えているが、これをもう少し消費を増やしていく方向に進ませていくためには、先行きの生活の安定化、年金とか医療とかを整えるとともに、高齢者でも余生を楽しんでいけるような、あるいはもっとそれぞれの生活を楽しめるという意味での生活水準の上昇があってしかるべきである。

そういう3つのことが、構造改革の対象であると思う。そういうものを早く作り出していくことができれば、今ある需給ギャップは解消していくだろうと思う。それは、かなり時間のかかるものもあるだろう。規制緩和などでまだ残っている規制をどんどん撤廃していくことなども、今度の会議は行うようなので、そういうことに早く手をつけて頂きたいということを申し上げたい。そういうことが進んでいけば、企業家の方も、消費者の方も、動いていくことになるだろうと思っている。それまで今の小康状態を進めていくことが、当面、私どもに課された課題であると思っている。

【問】

破綻した国民銀行についてであるが、日銀は昨年の5〜6月に考査をしているが、その時点で債務超過は見抜けなかったのか。

【答】

考査は10年5〜6月に実施したものが直近である。これは10年3月末の資料を基準にして考査をした訳である。考査結果についてここで明らかにする訳にはいかないが、同行の資産内容が極めて厳しい状況にあったことは十分日本銀行としても認識していた。

私どもとしてはこうした状況を踏まえて、不良債権の適切な償却・引当の実施と、自己資本の増強を含めた経営改善を強く促した訳であるが、同行でもこれを受けて経営建て直しのための方策を模索しつつあったところであるというふうに承知している。

昨年9月期決算では、前回考査における考査結果が必ずしも適切に反映されていなかったというふうに認識している。私どもからは、その旨を同行に伝え、同時に、不良債権の適切な償却・引当の実施と経営体力を含めた早期の経営改善を強く求めてきたところである。

【問】

公定歩合について伺う。国民銀行に対する特融の金利が公定歩合ではなくなったり、預金保険機構向けの(貸付)金利を公定歩合とは違う金利にしようとお考えになったり、あるいは臨時貸出制度の金利を下げたり、公定歩合を適用しない日銀の貸出が増えているが、これを踏まえて日銀の公定歩合の存在意義を如何に考えているか。あるいは公定歩合の引下げは金融緩和策として有効だとお考えか。

【答】

現在、原則として金融調節は日銀貸出ではなく、マーケットに対する流動性の供給を入札方式のオペで行っている。日銀から出て行く資金の大部分は、公定歩合ではなくて、むしろ市場の金利を反映した入札の方式でやっているということである。

しかし、私どもでは、公定歩合というのはあくまでも金融政策運営のスタンスを示すものというふうに位置づけており、この基本的な考え方は変わっていない。勿論、中央銀行の貸出というのは、個々の金融機関に対して相対で資金を供給するための手段であるから、これをどのような目的・条件で実行していくかということによって、マーケットの状況とか、市場参加者の行動にも変化が生じ得る訳で、そういう意味で中央銀行貸出のあり方については全体として統一的な考え方が必要であると思う。

ただ、このことは日銀貸出の金利がバリエーションを許さないということではないと思う。例えば、対象金融機関の信用力とか担保の有無というようなことによって金利水準に差を設けていくということが適当な場合もあるというふうに考えている。

イギリスなどは今もう公定歩合をなくしているが、私どもはやはり公定歩合というものが中央銀行の信用供与のひとつの基本的な政策運営を位置づける、言ってみれば印であると考えている。

【問】

山口副総裁のインタビューの中で金融政策についても言及されているが、その中で量的緩和について「金融仲介機能が低下しているから、量的緩和をやっても効果はない」旨おっしゃっているが、総裁の見解如何。

【答】

量的緩和というのはどういうことを意味されているのかは分からないが、今の無担保コール・オーバーナイト物金利を0.03%まで下げていくような資金供給のやり方というものが十分私どもが求めている、デフレを防ぐための潤沢な資金供給——その供給が中期物・長期物にまで及んで、あるいは銀行の貸出金利にも及ぶ、あるいはそういうものが債券や国債の価格を引き上げていって長期物の金利が下がっていく、株価も上がっていくという効果を十分果たしている——であるから、今ここで新たにどういう量のターゲットか知らないが、考える必要はないというふうに考えている。

「金利だ、量だ」というのは学者が色々考えて、色々な理論を出されるのは結構なことだと思う——参考にもなる。また評論家がそういうことを色々おっしゃることも参考になることではあるが、現実に市場に対してどうやって金融政策を打ち出していくか、資金を出していくかということは、中央銀行がその日その日の市場、その時その時の市場の変化をみながらやっていくことであって、それが金利であるか量であるかは——いつも私が「コインの裏表である」と申しているように——、朝準備預金がどれ位あるか——これは量で括る訳であるが——、日中の動きは金利をみながらやっている訳である。「量だ、金利だ」と分けて考えることに余り意味を感じない。今やっていることで当面は十分であると思っている。

【問】

関連するが、金融政策決定会合の議事要旨をみていると、今量的緩和をやるべきかという議論と、量的緩和をどのようにやったら良いかとか、それは効果があるかといった研究のテーマのような一般論としての議論が交錯しているような印象を持つ。その結果、マーケットでも日銀が量的緩和を近々やるのではないかとみている人も出ているようであるが、量的緩和を巡る金融政策決定会合の議論によって、市場の見方に何か誤解を与えるようなことになっているとは思っていないか。

【答】

別に量的緩和についても議論はしているし、しかし、先程から申し上げているとおり、当面の我々のやるべきことは、今の2月12日以降ずっと続けているディレクティブで(あり)、第一線に指示を与えて、それを満たしてもらえばそれで円滑にいけるという自信を持っている。これがいつまで続くかは、勿論、先程申し上げたとおり分からないが、量のことも金利のことも十分考えてやっているつもりである。

【問】

国債の買い切りオペについてであるが、原則としては成長通貨の範囲内ということになっているが、実際はその範囲をもう超えているというふうな指摘が出ているが、これについてはどうなのか。

【答】

これについては、今のところ1回2,000億円を2回ということで月4,000億円ずつ増やしている訳で、──ここのところ、金融システムの不安といったようなことがあって、銀行券の動きなどがやや不規則になっていたこともあったと思うが、──やや中期・長期にみると、これ位の、月間4,000億円位を出していくということで、銀行券の増加額と大体見合っていくのではないかなと、──今の成長率でいけば──そういう見方を持っている訳で、今のところその方針を変えて、他のルールによるということはしないということである。

買い切りオペを止めるなんていうことは一切言っていない訳であり、買うことは買うし、その他の調節はその他のオペレーションでやるということである。レポ・オペは随分活発にやっている。

【問】

国民銀行の破綻処理について、あのような形で金融整理管財人を送って、新しいスキームを適用した訳であるが、それ以降の株価であるとか金融システムの状況の評価・分析如何。

【答】

国民銀行の破綻については、やや唐突な感じがあったかもしれないが、先の長銀、日債銀とは随分スケールが違う訳であるし、私どもの方もこの銀行はかなり前から注目をして動きをみていた銀行のひとつではあるが、金融再生委員会の方で取り上げられて手早く金融再生法の適用で処理するという(ふうに)──これは初めてのケースであるが、──決められた訳で、これは私は良かったと思っている。

先週の木曜、金曜日あたりにかなりの預金の引出しがあり、──これはプレスがかなり派手にお書きになったというようなこともあったんだと思うが、──4日間で1,000億円を超える預金の引出しがあったということである。特融の方も、私どもは日曜日に出てきて皆で議論をして、決めてすぐ総裁談話を出して大蔵大臣にもお答えした訳で、昨日、今日と既に特融をかなり出している。そういうことで、今の預金の引出しというのは、私はいずれ止まるだろうと思っている。大きく記事が出て、関係者というか預金者などはびっくりされたかもしれないが、それがああいう引出しの殺到に繋がったんだと思うが、私はその他に及ぼす影響というのはそんなに大きくないとみている。

【問】

今の質問に関連して、2点お伺いする。まず、国民銀行の1,000億円を超えるような預金引出しというのは、セーフティー・ネットが完全に整備された中で起きた訳で、そういう預金の引出しがあったということをどう捉えているか。

また、2001年4月以降の新しいセーフティー・ネットを考える必要があるという話の関連で、興銀が個人向けの金融債について預金保険の保護対象にすることを提案している訳であるが、こういうことについてどうお考えか。

【答】

やはり日本の一般国民のこれまでの長い経験からいって、銀行が潰れるということはまず頭の中になかったことだと思う。それがここ2〜3年の間にかなりあちらこちらで起こり始めて、初めのうちは先程申し上げたようなセーフティー・ネットもなかったので、かなりゴタゴタして長くかかったということもあるが、今度のケースのように早く動いて手を打っていけば、段々国民の方々も慣れてこられるのではないかというふうに思う。

今回のケースは突然新聞に大きく出たということもあって、関係者が慌てて殺到したという感じを私は受けているが、──いずれ何らかの手は打たなければならなかったかもしれないが、──こういうケースもひとつの経験として私どもには非常に参考になるケースだと思う。しかし、早く手が打てたので、何とかなっていくというふうに思っている。

また、あと2年足らずで今までのような保護がなくなってくるといった場合に、預金者が銀行を選ぶというのは当然の動きだと思う。そうなっていかなければ従来のような護送船団方式というか、弱い者に合わせて行政が強い行政指導をしていくというようなやり方というのは、これはもう通用しないものであるから、弱いところはどうしても預金が集まらないというようなことは当然起こってくる訳である。そういう意味でも取り付け騒ぎが起こったり、株が暴落したりというようなことは、その後続いて起こっていく訳で、そういう場合にペイオフだけでなく、もっと早く手を打っていくアメリカなどにあるような制度で、当局と一緒になって処理していけるようなやり方ができてくることが望ましいと私は思って、ああいう発言もした訳だし、皆そう思っているのではないかというふうに思う。アメリカではペイオフを使うのは5%位だといっているから、他の方法で破綻銀行の処理をやっている訳である。企業である以上破綻が起こるのは自然の成り行きだと思う。

興銀のケースは、私はちょっとよく事実を知らないので、お答えし兼ねるので、担当の者にでも聞いて頂ければと思う。

以上