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総裁定例記者会見要旨(5月20日)

1999年 5月21日
日本銀行

―平成11年 5月20日(木)
午後 3時から45分間

【問】

今日公表された「金融経済月報」をみると、「足許の景気は下げ止まっているが、回復へのはっきりとした動きはみられていない」と4月に比べて先行きについて——企業の収益とかリストラの動きとかをみて——やや弱気の見方があるのかという気もするが、景気認識は4月とどのような点が変わったのか。

金融政策は(現状)維持となっているが、こういう景気認識の中で、一部の審議委員からは、「量的緩和の可能性があるのかないのか」という意見も出ていると思うが、次の金融政策についてはどのように考えているか。

また、前回の会見で「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまで、現在の政策を続ける」旨おっしゃったが、今後、デフレ懸念が払拭されたか否かを、どのようなところでみようとしているのか。

【答】

最初のご質問の「景気の下げ止まりがどうなっているのか」——表現がはっきりしない——という点であるが、結論的に申し上げると、景気の下げ止まりが、時間の経過とともに、よりはっきりとしてきたということを、今回の政策決定会合(で確認し、)あるいは今日発表した月例報告——「金融経済月報」——で書いたつもりである。

ただ、「先行きの回復へのはっきりとした動きがみられない」という点では、これまでの見方と変わっていない。

次に、「経済および金融情勢の先行きをどういうふうにみているか」ということであるが、設備投資が減少基調を続けているほかに、個人消費も全体として回復感に乏しい状態が続いている。しかし、公共投資については、高水準で工事が進捗しているほか、住宅投資は持ち直しているということで、生産面について言うと、在庫調整が進捗しているため、最終需要がこれから増加していけば、それが生産の増加に結びつきやすくなってきたという状況は申し上げられると思っている。

金融面については、長・短期金利が一段と低下してきているし、株価も総じて——一進一退はあるが——底固い動きとなっていると思う。何よりも出来高が非常に多いということは明るい要素だと思っている。

また、企業金融を巡る逼迫感というのは和らいできていると思う。今日、明日の企業の決算報告等で色々会社によって差が出てくるとは思うが、全体としてそういうことは申し上げられると思っている。こうした金融面での環境の改善が景気に対して徐々に好影響を及ぼしていくことが期待されている訳である。

しかし、企業収益が引続き低迷しているということのほか、家計の雇用・所得環境というものが悪化しているし、生産性の上昇に繋がると期待される一方で、やはり短期的にはリストラ等で雇用等にマイナスの影響が出てくる可能性もある。これらの点を踏まえると、現時点では民間需要の速やかな自律的回復は、依然として期待しにくい状況であると申してよいと思う。

こういった実体経済の見通しから考えると、物価は——現時点ではCPIは前年比ほぼゼロ近辺で推移している訳であるが——、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢には至っていないというふうに私どもは判断している。

一昨日の金融政策決定会合では、以上のような金融経済情勢に対する認識を踏まえて、討議を尽くしたうえで、当面の金融政策運営について、2月12日に決定した金融市場調節方針を引続き維持するということで決まった訳である。

日本銀行は、今後とも、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまで、「オーバーナイト・レートを事実上ゼロ%で推移させていく。そのために必要な流動性を供給していく」という現在の政策を続けていくつもりである。

ご質問の「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢とは、具体的にはどういうことなのか」ということであるが、これは、ただ一つの指標をみて、それで分かるというものではないし、ア・プリオリに一定の条件を示せるというものでもないと思う。まさしく先行きの景気見通しや金融状況、その他物価を巡る様々な要素やリスクをすべて勘案して、的確に判断していくべきものというふうに考えている。

このように、どうしても総合的な判断を要することであるので、私どもとしては、毎回の金融政策決定会合で真剣に議論を重ね、判断に誤りのないよう討議している。そうした判断や議論の模様を、「金融経済月報」や「議事要旨」にその都度書き込んで、国民の皆様の前に明らかにすることにしている訳である。これが現在の金融政策運営のフレームワークであると言ってよいかと思う。

今申し上げたようなことを纏めると、量的緩和といったようなことが効果を持つのかということ、またその副作用としてどのようなことがあるのかといったことについても、引続き十分慎重に考えていかなければならないことだと考えているが、私どもとして今申し上げられることは、ゼロ金利政策というものの考え方は、1つには金融政策面でできることはすべてやっているということ、2つめには、それをデフレ懸念の払拭が展望できる情勢になるまでは続けるつもりであるということ、3つめには、しかし財政の規律を失わせて、将来に禍根を残すような政策になってはいけない——こういうものは採るつもりは全くない——ということ、それから4つめは、構造改革の進展が大切であると考えていること、——私どもが一番期待していることであるが——、こういった点について引続き対外的にきちんと説明をして参りたいというふうに考えている。

金融政策というのは永続的な効果を持つもので、ゼロ金利と言っても、それをずっと続けていくということは、ちょうど財政が補正予算、公共投資などで一挙に景気、需要を膨らませるといったような効果はないにしても、金融の場合は永続的な効果を持っていくものである。ゼロ金利でずっと続けていくということは毎日毎日のことであるが、この低金利が貸し手にも借り手にも効いている訳で、そういう所謂バランスシートの残高に対して——ストックに対して——効果を持っていくものであって、それをずっと続けていくということはそれだけでも大きな意味がある。この点は財政が——税制は別であるが——所謂フローの面で直ちに効果を持つのとは違った面があるということを、私自身も改めて認識している訳である。

このゼロ金利をデフレ懸念がなくなるまで続けていくということで、「それ以上何もないじゃないか」というふうなムードはないのではないか。その効果は毎日毎日そうやって続けて機能していると申してよいのではないかと思う。

【問】

山一證券が近く自己破産を申請するというような動きが出ており、特融が焦げ付く可能性が高い。大蔵省や証券業界もこの問題について非常に関心を持っていると思うが、日銀としてこの山一に対する特融を今後どのように回収するつもりなのか。あるいは大蔵省とか証券業界との交渉についてどのような立場で臨もうとしているのか。

【答】

山一證券については、おっしゃったように、私どもは特融を行っているので、非常に注意深く動きをみている訳だが、現在まだ顧客資産の返還、自己保有資産の処分等が進んでいる段階であり、同社の最終的な処理にはまだ時間を要するものというふうに考えている。同社の財産の状況についても、今後さらに変動する要素があるものと理解している。

こうした中で、特融の返済財源をどうするのかということだが、まず基本的には山一證券の資産処分代り金がこれに充てられると思う。また資産処分等の過程で仮に山一證券が債務超過となってしまった場合、平成9年11月の同社の廃業方針発表の時に「大蔵大臣談話」が公表されており、政府において、本件の最終処理を含め、寄託証券補償基金の法制化やその財務基盤の充実、機能の強化等を図り、十全の処理体制を整備すべく、適切に対処したいというふうに言っておられる訳である。

こういう対応の一環として、昨年6月に成立したいわゆる金融システム改革法で、本件の最終処理について、「投資者保護基金」を活用できる仕組みが整備されて、昨年12月1日から施行になっている。

私どもとしては、こうした仕組みの中で、最終的には「大蔵大臣談話」の趣旨に沿って、万一の場合においても特融の返済が確保されるものというふうに考えている。

昨日、山一證券の劣後ローンについて債権者との和解に到達したということが報道されている。5月19日に裁判所からの和解勧告及び和解案の提示を受けて、各当事者ともこれに同意して和解が成立したと聞いている。この和解は確かに一つの前進であろうかと思うけれども、今回の和解は裁判所からの和解勧告、それから和解案の提示、これによって各当事者がこれに同意して成立した訳だが、訴訟当事者でない私どもの立場からは、和解の内容、それに伴う山一證券の支払金額などについてまだ言及する立場にはないので、これは差し控えさせて頂くが、少しずつ前に動き始めていることは確かだと思う。

【問】

特融はあくまでも返済を100%受けると、大蔵大臣も過去にそういうことを言っているから、そうされるものだと思うということで、毀損するということは認められないという立場で、大蔵省とも話をするということか。

【答】

大蔵省もそういうつもりで非常に努力をしておられるのだろうと思うが、まだ見通しをはっきり申し上げる段階まではいってない。私どもとしては、「大蔵大臣談話」というものが出ている訳だから、その線で特融が返済されることを今でも期待している訳である。

【問】

最近、大阪の第二地銀である幸福銀行に早期是正措置が発動されたり、東京の第二地銀でも早期是正措置が発動されるのではないかというような情勢になっているなど、地域金融機関の経営がかなり弱体化しつつあると思うが、金融システムに対してこういう事態がどのような影響を与えるとの見通しを持っているか。また、その結果としてペイオフの解禁延期論が出てくる可能性もあると思うが、ペイオフの制度について今後どのような検討がなされるべきだと考えているか。

【答】

今おっしゃたように、東京の国民銀行や関西の幸福銀行など、色々な問題が出始めているが、地域金融機関についても、3月期決算のとりまとめ作業の中で各行とも積極的な不良債権処理に取り組んでいるというのが今の現状かと思う。

そのうえで一般論として申し上げるならば、まず不良債権処理に伴って、資本基盤が脆弱になっていく地域金融機関、これらについては、基本的には、やはり自助努力によって資本増強を行っていくのが必要なことだと思う。また再建可能ではあるが、自助努力だけではちょっと足りない──資本基盤の強化が図れない先については、やはり公的資金の投入を申請することになってくると思う。これが有力な選択肢になると思う。他方、仮に、再建が困難というような場合には、預金保険法とか金融再生法などの枠組みによって、速やかに処理を進めていくべきものと考える。

いずれにしても、現時点で重要なことは、個々の金融機関が早期に不良債権問題を克服するために全力を尽くしていくことかと思う。こうした速やかな対処ということと、もう一つは、そうした過程において万が一にも金融システムの安定が損なわれることのないように、その点は十分配慮していく必要があると思う。

従って、一部地域金融機関の経営問題が表面化していることを理由にして、2001年3月末までの時限立法──各種の時限立法、ペイオフの解禁もあるが、──こういうものを安易に延長することを視野に入れることは、今の段階では適当でないと考えている。

【問】

先日のG7共同声明には、「日本の内需主導の力強い成長を支援するためにはあらゆる景気刺激策が必要」といった趣旨の文言が盛込まれていたが、この「あらゆる景気刺激策」には財政だけではなく金融政策も含まれるという認識か。また、「力強い成長」のためにはゼロ金利政策以外の金融政策も必要か。

【答】

私も日米の蔵相、それからグリーンスパン議長とも一緒になった蔵相・総裁で話し合った会合、あるいはG10、暫定委員会にすべて出席して、必要に応じて発言もしたが、今回のG7会合の中で米国サイドが日本に要請を出したという感じは全くない。共同声明には「any available tools」という表現があったが、ご承知のようにあのようなステートメントというのは事前にもう出来てしまっている訳であるから、「これが何を指すのか」と言われても言いにくい。会合自体ではアメリカ側からは一切要求は出ていない。二国間の会合の時にも日本の金融はうまくやっているという言葉もあった。そういうことで、私どもが今やろうとしていること、やりつつあることについて、米国側は十分な認識を持っているというふうに思っている。米国側の新聞にはそういった意味のことが書いてあったように思うが、日本の報道では「要請があった」とか「何か強い対立があった」といったような表現を見掛けた。あれを読んで、「ちょっとこれはおかしいのではないかな」と思ったのが実感である。ずっと今回は始めから終わりまで立ち会っていたから、それはそういう事態ではなかったと思う。

今度、ルービン財務長官が辞めてサマーズ氏に代わるが、このお二方は全く同様の考え方をずっと持っておられるし──表現は今度の方のほうが少しきついかもしれないが──それなりにはっきりおっしゃる。私も財界の代表幹事をやっていた頃からサマーズ氏とは良くお会いをしていたし、電話なんかも頂いたりもしたし、よく存じ上げているが、別にサマーズ氏になったからまたきつくなってくるといったことは──表現はきついかもしれないが──ないのではないかと思う。

【問】

共同声明の中に、現に「あらゆる可能な手段」といった文言があった訳で、これに金融政策が含まれるのかという点はどうか。

【答】

any available tools」というのは、これから何をやれということではない。そういう表現が確かにあったが、「これが何を意味しているか」ということについては何も説明がなかったし、要求もなかった。

【問】

為替相場についてであるが、月報をみると、「純輸出は横這い圏内の推移となっている」という表現があり、それに加えて、デフレ懸念を払拭するという、その2つの観点からみると、最近の円安は歓迎という立場なのか。

【答】

相場の水準について私から色々評価をしたりする立場にはない訳であり、コメントは差し控えたいと思う。

今少し円安になっているが、私はそう実体的に大きく変わっていく──米国でも少し変化が起こっているし、日本サイドで海外からの日本株の買い、あるいは日本から海外への、米国債などを買う方の金というのが、どちらもここ一両日少し減ってはいるのかと思うが、どの水準がいいかというような、今の水準は行き過ぎであるとか、──そういう感じは持っていない。大体この辺のペースで続いていく限りそう大きな変化はないんじゃないか、一進一退はあるにしてもそう大きな変化はないというふうにみている。安定的に推移していくことが望ましいということはいえると思うし、その場合の基盤になるのは両国の経済のファンダメンタルズだというふうに思う。

【問】

先程、金融政策について真剣に議論しており、適切に開示はしているという趣旨のことをおっしゃったが、一方で堺屋長官が根回しがうまくいったということを発言されているようで、一般的には「さもありなん」という気もしないではないが、堺屋長官の根回しというのはあったのか。あったとすればどういうふうにあったのか、その辺を、発言も含めて総裁はどのように受け止めているか。

【答】

2月の政策変更は、私どもの政策委員会がみずからの責任で判断し決定したものであるので、それ以外のなにものでもない。

改めて、新しい日銀法の下での政府との関係を述べると、金融政策に関して、政府に意見がある場合には、金融政策決定会合の場でこれを述べる、ということになっている。そうした意見も十分にお聴きしたうえで、金融政策運営については、日本銀行政策委員会が、独立した判断と責任で決定する。政府の意見や政策委員会での討議の模様は、これを議事要旨に明らかにして、そのことによって国民に対する透明性の確保を図る、ということになっている。

こういう枠組みが、政府におかれても尊重して下さっておられるし、企画庁長官の発言も決定会合で述べられたことに関しての言及であったというふうに思っている。

「金融政策運営に当っては、十分な流動性の確保に努め、適切な運営をお願いしたい。なお、そのための手段については、本会合の検討に委ねたい」ということは長官もおっしゃった。そのことは議事要旨にも載っていると思う。

根回しがあったかということについては、全くそういう事実はない。ただ今申し上げたように、企画庁も長官の発言は決定会合で述べられたことに関しての言及であったというふうにおっしゃっているし、企画庁の方もそういうことを私どもの前でおっしゃっておられるので、事前に色々動かれたということは全くない。

【問】

長官発言以降に、日銀の方から企画庁の方に何らかの申入れや抗議をされたのか。

【答】

抗議をした訳ではないが、記者に何かおっしゃったということで、それをまた訂正されたということが新聞に出ていたので、その経緯については聞いた。

【問】

米国の金融政策について、先のFOMCでバイアスを中立から引締め方向に変えたが、この背景をどうみているか。また、日本の金融政策あるいは景気に与える影響をどうみているか。

【答】

今回のFOMCの決定は「現状の政策スタンスを維持しながら、潜在的なインフレリスクを念頭において、引締め方向へのバイアスを採択していった」ということかと思う。去年の暮れに、「必要な場合にはバイアスを発表する」ことを決められたというふうに聞いている。米国では年に8回FOMCが開かれるが、その間に事が起こった場合に、執行部に「そういう方向で進めよ」という意味ではないかと思う。

私も、この間グリーンスパン議長にお会いし、またBISでもその後総裁会議があって説明を受けた。米国の株価は確かに非常に上がっている訳であるが、実体経済そのものについては、かなり安定した生産性の伸びがみられている。これは、言ってみれば、構造改革の成果というふうに考えてよいのではないかと思っている。ハイテク技術と光ファイバーの技術が、製造業でも、サービス部門でも、企業の中でうまく運用されて、それが新しい需要にミートするようにサプライをどんどん行っている。

それに伴って、雇用も増えていくし、教育水準にかかわらずできる仕事がどんどん増えてきている。プログラミングさえしっかりしていれば、操作ができる。従って、かつては6~7%が自然失業率であったと言われていたが、今では4%を割るような失業率でも賃金がそんなに上がらないで済んでいるといったような説明を米国側はしておられた。これは素晴らしいと私も思っていたが、同時に一方でインフレのアップサイドリスクがあることも確かであると思う。これに対しては、常に警戒的にみておられる。さすが連銀だな、というように私は思っている。そういうウォーニングを出しながら、今の実体経済が非常に順調に伸びているのを続けていくということではなかろうかと思う。

経常収支の赤字については、今に始まったことではないので、急速にこれが直るというものではないと思う。賃金があまり上がらないで、生産性がどんどん伸び、GDPの伸びが結構続いているということについては、私は米国の構造改革が成功であったというふうに思う。この辺でそろそろ行き過ぎにならないようにという意味で、あのようなステートメントが出たのではないかと理解している。

いずれにしても、インフレのない持続的経済成長を続けていきたいという意思の表われという意味では、非常に健全なものであり、株価にとっても、為替にとっても、そう大きなマイナス要因になるものではないというふうに思っている。

【問】

先程総裁は構造改革の重要性を強調されたが、ゼロ金利を長期に続けることのデメリットというか、ゼロ金利政策が長く続くことによってむしろ構造改革を遅らせることになるのではないかという声も出ていると思うが、それについては、どのように反論されるか。

【答】

私は、むしろ企業がやる気さえ出せば、安い金利で設備投資の資金調達が出来る訳なので、マイナスになる要因はあまりないように思っている。そういうことを企業家が「よしここで立ち上がろう」と言って、株価も上がり、少し景気が明るくなってきた、先が何とか明るくなりそうだといったようなところで決断をする場合に、差し当たり必要なのは資金である。株式市場は潤沢であり、今日辺り相場が少し下がったと言っても、5億株を上回るような取引が出来ているので、株式市場は非常に順調に動いていると思う。企業は、銀行からの資金の借入れのほかにも、色々なかたちで、市場での調達によって、——増資とか社債を出すとかというようなことを行って——、構造改革を進めていってもらいたい。

今日の「産業競争力会議」でも話が出たと聞いているが、構造改革の3つの柱は、バブル以来の過剰設備、過剰雇用、過剰債務というものがサプライサイドにある訳で、これを直していって、前向きの競争力のある企業を作っていくということである。その過程で、雇用に摩擦が起こることはやむを得ないものであろうかと思うし、それに対応する手を政府と民間が一緒になって今色々考えていて、必要なところから手を打っていくということが動き出しているのは、明るい動きであると思う。

今おっしゃったようにゼロ金利というか金利が安いことがマイナスになるという事態が起こるようなことになれば、それはまた新しい事態であって、私どもは、いつでもこれを動かす用意がある。そういう空気が出来てくるまで、「デフレ懸念がなくなるまで」という表現を使っているが、そういった意味で、構造改革の芽がふき始めるということを一日も早からんことを願って、今の政策を続けているというのが偽らざる気持ちである。

本日、新聞朝刊に、調査統計局長が、構造改革と今の問題などをよく説明して書いているので、関心をお持ちの方はお読みになって頂きたい。

【問】

確認であるが、先程円/ドルがこの水準が続く限り、あまり大きな動きは考えにくい旨おっしゃったが、その通りか。

【答】

今の水準は、これまでの水準よりは少し円安・ドル高になっているが、これは決算発表があったり、米国で連銀の発表があったりしたようなことも関係していると思う。今日米国でルービン(財務長官)、サマーズ(財務副長官)、グリーンスパン(FRB議長)が議会で証言されるというふうに聞いているし、3月の貿易収支なども今日発表になると聞いているので、そういうような数字が出てどういうふうに動くか、基本的には私は大きな変化はないと思う。

むしろ、外の動きがどういうふうになっていくのか、──欧州の方も少しずつ落ち着いてくるような感じがするが──外でどういうことが起こるかということの方が、先が読めないだけにそういう不安はまだ残っていると申し上げても良いかと思うが、今のところ相場が大きく動くというものではないというふうに思っている。

以上