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総裁記者会見要旨(12月21日)

1999年12月22日
日本銀行

―平成11年12月21日(火)
午後4時30分から約45分

【問】

本日、12月の金融経済月報が公表されたが、その中で、日銀は景気判断を一歩前進させた。総裁から景気の現状認識を改めて伺いたい。それから、円相場が102~103円台で推移しているが、円高の景気への影響についてはどのように判断しているか。

【答】

今日発表した金融経済月報については、皆さんも夕刊に書いて頂いているようだが、景気に関する現状認識は、次のようなものである。「景気は、足許、輸出や生産を中心に、下げ止まりから持ち直しに転じている。こうしたもとで、企業収益の回復が続くなど、民間需要を巡る環境は、徐々に改善しつつある。もっとも、民間需要の自律的回復のはっきりとした動きは、依然みられていない。」

これまでのゼロ金利政策や、政府による一連の対策が経済活動を下支えするもとで、輸出が海外景気の好転を背景にして増えてきた。それから、減少傾向にあった設備投資にも下げ止まりの気配がみえてきた。こうした需要動向、あるいは在庫調整の進捗を背景にして、生産も増加を続けており、この結果、企業収益の改善が明確化してきた。企業の業況感の改善も続いている。12月の短観では、これまでの円高進行のもとでも、企業は増益計画を維持しているわけで、収益の状況がかなりしっかりしてきたことが確認されたように思う。

以上を踏まえて、第1に、景気の現状判断について「持ち直しに転じている」という表現を使った。第2には、民間需要を巡る環境について「徐々に改善しつつある」と評価をして、この2つの点において、判断を幾分前進させたと言えるかと思う。

もっとも、先行きについては、設備投資に対する企業の慎重な姿勢は続く可能性が高いと思う。また、個人消費も、当面は回復感に乏しい状態が続くとみられる。このように、目下のところ、民間需要が自律的回復に向かう展望はまだ得られていないということだと思う。

物価は当面、概ね横這いで推移するとみられるが、只今申し上げた経済の先行きの展望を踏まえると、物価に対する潜在的な低下圧力についても、前回は根強く残っているというような表現を使ったと思うけれども、引き続き留意はしていく必要があるというふうに表現している。

こういった情勢判断のもとで、先週末の金融政策決定会合においては、ゼロ金利政策を継続するということを決定した次第である。

それから円高の影響であるが、確かに、夏場以降の円高の進行にもかかわらず、12月短観をみると、企業の今年度の収益計画は増益を見込んでいるし、企業の業況感も改善している。

この背景としては、次の2つのことが挙げられると思う。ひとつは、このところの世界景気の回復が、円高の輸出に及ぼすマイナスの影響をある程度緩和しているということ。2つ目には、わが国企業は、グローバルな生産体制の構築とか製品の高付加価値化などの努力を重ねて、為替変動に対する抵抗力がこれまでに比べて強くなってきているということ。

また、それ以外にも、本行のゼロ金利政策や、政府の一連の経済政策、さらには企業のリストラ努力などが、企業収益をしっかりと下支えしているということも見逃せない。

ただ、マイナス面であれプラス面であれ、為替変動の影響があらわれるには時間がかかるという面もあるので、引き続き十分注意深くみていきたいと考えている。

【問】

日銀は2000年問題に対応するため、既に多額の資金を供給している。年末まであと10日程となったが、今後の資金供給姿勢、それから銀行券の準備状況について伺いたい。

【答】

2000年問題については、日本銀行や金融機関で、これまでにシステム面の対応は一応終わり、現在は、危機管理計画を機動的に発動するための年末年始体制について、最終チェックを行っているところではないかと思う。金融界におけるこうした所要の作業は順調に進んでいると見ている。

流動性対応の面でも、本行が年末越えオペによる資金供給を極めて積極的に進めてきた結果、市場には大量の流動性が供給されている。また、個別金融機関においても、長めの資金調達を早くから計画的に進めてきたことによって、年末年始の流動性確保に目処がついたという状況かと思う。

こうした諸準備の順調な進捗を反映して、一時は上昇傾向にあった年末越え金利も、12月初以降は急速に低下してきた。ここへきてまだカバーをしていない所が動いたりして、若干上がってはいるけれども、大勢としては落ち着いた推移になってきたと言って良いのではないかと思う。

日本銀行としては、今後年末にかけても十分な流動性供給を実施していく方針であるほか、万が一、個別金融機関において不測の事態が生じた場合でも、必要な資金供給を適切に行っていく方針である。また、年末に向けての個人や企業の現金需要についても、本行では、既に十分な用意を行っている。銀行券も年末でボーナスが出たといったこともあって、若干発行が増えているけれども、それ程目立ったものではないと思っている。

預金者や企業におかれては、是非、冷静な対応をお願いしたいと思う。

年末年始の具体的な作業のやり方についてご関心があるかと思うが、私どもでは、1月1日午前0時から翌2日にかけて、営業所設備とか通信機器の点検をして、日銀ネットをはじめとする本行の各種コンピュータ・システムのテストなどを順次実施していく計画である。

また、12月31日から1月4日までの間、24時間体制のインフォメーション・センターを本店内に設置して、日本銀行内外における問題発生状況を速やかに把握できる体制を敷く予定である。

対外的な情報発信については、設備・システムの点検結果等に関して記者レクやインターネットのホームページを通じて積極的に開示する方向で検討しているところである。

要員面の対応については、12月31日から1月1日にかけての越年時に本支店全体で約600名の職員が出勤する予定である。余計なことだが、私自身も31日夜から1日未明にかけて出勤するつもりでいる。

【問】

為替の介入のやり方を巡って12月1日に出された総裁談話については、若干マーケットがその解釈を巡り、ある種の憶測を呼んだといわれているが、改めて不胎化、非不胎化について日銀のスタンスがどのように変化しているのか、していないのか、考えを伺いたい。

【答】

日本銀行は、かねてから、ゼロ金利政策のもとで、介入資金も含めた様々な資金の流れも利用しつつ、金融機関が必要とする以上の資金を市場に残す調節を行ってきている。

12月1日は、ちょうどその2日前に行われた為替介入の資金決済日に当たり、内外の市場の一部で、日本銀行の金融調節に対する関心が高まっていたように思う。このため、総裁談話として「介入資金も利用して豊富で弾力的な資金供給を行っている」という方針を、改めて明らかにしたつもりである。

「不胎化から非不胎化へとスタンスを変えたのか」というお尋ねであるが、「不胎化」という言葉が、介入資金の一本一本を個別のオペで吸収するという意味であれば、日本銀行は、そもそも、そうしたオペレーションは行っておらず、「不胎化」「非不胎化」という区分自体、日本の場合は非現実的であるし、やや不毛の議論ではないかと考えている。談話は、介入資金の決済日という機を捉え、そのような根強く残っている誤解を解くために発表したものである。

【問】

本日、金融審議会の答申が発表されたが、2001年3月末をもってペイオフ解禁を延期するか否かの問題は、政治的議論に委ねられた格好になっている。ペイオフ解禁の問題について、日銀はどういうスタンスであるのか。

【答】

私どもとしては、かねてから現状のペイオフの特例措置を延長していくのは、次の3つの点で適当でないと申してきたつもりである。ひとつは、保護措置のようなことで、金融機関あるいは預金者のモラルハザードが発生しないかということ。もうひとつは、かえってコストが増大するのではないかということ。3つ目は、我が国金融システムに対する国際的な信認回復や不良債権問題克服の遅れを招くということになりはしないかということ。5年も前から2001年3月までの特例措置でいこうと言ってきたわけで、それをここでまた先に延ばすというのは、内外の信認にもかかわる問題ではないかと思っている。また、一部の業界に限って特例措置を延長するというのは、業態間の資金シフトを発生させる可能性があるし、そのことによって大きな混乱を招きかねないほか、業態間の公平を欠くということもなってしまうのではないかと懸念する。

信用組合の問題については、先般、信用組合移管円滑化構想ができ、日銀に融資を行うことが依頼されたが、私どもはお受けできないと申した経緯がある。私どもとしては、銀行だけでなく、信用組合等についても、極力早期に不良債権処理を完了するとともに、必要に応じて資本基盤の強化を図ることによって、金融システムの安定化を図っていくことが極めて重要な課題だと認識している。ただ、協同組織金融機関においては、株式会社である銀行とは異なって、資本調達の上で制度面を含めて種々の制約があるのは事実である。従って、私どもしても制度の見直しを含めて協同組織金融機関の資本増強円滑化のための措置を早急に講じていく必要があると考えている。そういった点について、金融監督庁と私どもの認識にはあまり相違がないのではないかと思っている。

【問】

金融経済月報では、2ヶ月連続で景気判断をやや上方修正し、特に今回の判断では幾つかのところでだいぶ強い判断が垣間見られるように思えるが、総裁自身は「デフレ懸念の払拭が展望できる情勢」というのはなかなかまだ掴みにくいという判断なのか。需給ギャップ等いくつかの点をみると物価の判断についてもだいぶ変わってきたように思えるが、「デフレ懸念の払拭」についての話を伺いたい。

【答】

「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまでゼロ金利政策を続ける」と言い始めたのは今年の4月ではなかったかと思う。日本経済の状況がかなり改善していることは間違いないわけだが、また同時に、生産・所得・支出という経済の循環メカニズムの中で重要な役割を果たしている企業収益が、ここにきてかなりしっかりしてきたということは、明らかに前向きの材料であろうと思う。

ただ、これが個人消費や企業の設備投資など、実際の支出活動に結びついていくかどうかということについては、まだ明確な展望が描けていないように思う。このために、物価に対する潜在的な低下圧力については、引き続き留意すべき段階にあると先程申し上げた次第である。

こういう現段階では、まだ「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢」には至っていない、というのが先週の決定会合における多数意見であったわけである。

【問】

2000年度の政府の経済見通しについて、実質1%成長という数字が出ているが、その中で「年度下期について、民需を中心として本格的景気回復軌道に乗る」という判断が示されている。無理にけしかけるわけではないが、年度下期にそのような民需主導の本格的景気回復軌道に乗るような情勢が見えてきた時というのは、ゼロ金利解除のひとつの判断の時期になるのか。

【答】

GDPの伸びが数字で出てくるのはかなり遅れる──もちろんそれがひとつの大切な材料であることは間違いないが。本年度が0.6%、明年度が1%と言われているが、ご承知のように、80年代はだいたい約4%平均だったと思うが、90年代に入って平均すると1%である。97、98年度がマイナスになって、今年度0.6%、明年度が1%になるといった動きは、数字から見れば、やはり正常化してきたということが言えるのではないかと思う。ただ、私どもの方は、それに少し先んじて、デフレ懸念の払拭が展望できるかどうかというのは、もう少し色々な面から判断して、その都度決めて参りたいと思っている。であるから、明年度1%というのは、私はそんなに不可能な数字ではないのではないかと思っているが、今まで支えてきた財政とゼロ金利──金融の潤沢な供給──、これが消えて、需給ギャップを消していくようなかたちでの新しい需要が出されていけるかどうか、あるいは消費者が明るくなって消費を増やしていくような方に移っていくかどうかというのは、まだ今の段階ではそこまでいっていないと思うので、その辺は、毎月の決定会合を契機に良く調べて参いりたいと思っている。

【問】

先日の会見で、Y2Kに絡んでいわゆる33条による有担保の貸出については、経営責任を問うなどということは一切しないと明言されたが、37条の無担保貸出についても同様のお考えをお持ちか。

【答】

37条というのは、予期できない非常事態が起こった時に貸出ができるという条項であるが、Y2Kといったようなケースで特定の銀行が資金ショートを起こすというようなことは、やはりかなり特異な事例だと思うし、担保を持っていてお借りになるのは勿論であるが、ない場合にもそういうことができるように、予め私どもとしては準備を進めているわけである。

【問】

37条についての経営責任──経営者なり金融機関の責任──についてはどうか。

【答】

そこはケース・バイ・ケースであろうが、普通はそういうことで資金ショートが起こっただけで経営責任を問うというのはやや厳し過ぎるのではないかと私は思う。そういう懸念を持たせないために、不安を持たせないために、この間ああいうことを申し上げた次第である。

【問】

ケース・バイ・ケースということは、Y2Kの問題が仮に何事もなく過ぎ去った後も、今後37条一般についてケース・バイ・ケースで臨むといったお考えということで良いか。

【答】

Y2Kについて、担保を事前に積めということを先般申し上げたわけである。

【問】

若干、品のない話かもしれないが、大蔵省OBの榊原さんが総裁の進退問題についてなぜか色々と話をしておられる。総裁のお考え自体は国会答弁などでも述べられたところだと思うが、基本的な考えを改めてお聞かせ頂きたい。

【答】

基本的な考えということを言うほどのことでもないと思うのだが、あの時は、あの発言があった翌日に、ちょうど国会で半期報告をして、大蔵委員会で民主党の上田清司先生が真っ先にあの問題をご質問になったので、「多分、私の立場を心配して叱咤激励をして下さったのだろう」とお答えしたわけである。先生も、「それは大人のご答弁だ」とおっしゃって下さったので、そういうことだとお受け取り頂ければと思う。

【問】

この1年を振り返られると、どういう年であったか。

【答】

今年は、去年の今頃のことを考えると、やはり、随分空気が明るくなっていると言えると思う。どういう数字を見てもそうしたことが出てくるのであるが、例えば、株価は、13,000円くらいから18,000円になっているし、ひどい時は0.6%くらいあったジャパン・プレミアムも現在は殆どゼロになっている。為替も、102円か103円というところまで来ている。長期金利も2~2.5%まで上がるということが起こったが、今はご覧のように1.7%台で落ち着いている。

輸出は、これだけ円が強くても伸びているし、その円が強いということが、またアジアに非常に歓迎されている。アジアの経済新生の背景には、円が強いから日本に輸出が出るし、第三国でも日本と競争力の面でそうひけをとらないで伸ばせるといったようなことがあるわけで、これはアジア諸国あるいは中国を含めて、非常に歓迎されているように思う。

そうしたモノの面のほかに、資本の面でも、7兆とか8兆といったネットの外人による株買いが出てきているし、銀行・証券や企業に外資がどんどん出てくるということもある。最近は、土地を買いに来ているという話があるくらいで、昨年の今頃は、海外から、日本経済は信頼できないと思われていたかと思うが、今はむしろ日本は信頼できる、日本は買いだということで、色んな物が買われ、資本が入ってきている。

国内は、さきほども申し上げたように、もうこれで安心というものではないが、外から日本を見る目がそういうふうに変わってきているということは、これはやはり明るいことだと思う。

その背景には、やはり、金融システムの安定化とか、あるいは銀行の不良資産が整理されて、あるいは引当金が積まれて、リストラの流れの中で金融再編がかなり急速に進んだことなどが挙げられようが、これらは、この1年の非常に大きな変化ではなかったかと思う。

また、一時的に国有化された日長銀の買い手が決まったり、日債銀についても近くそうしたことが行われるとか、あと、まだ地方銀行などで多少の再編の流れもあるだろうし、中央でもまだ色んな動きが出てくると思われれるが、こうした流れというものは、日本経済が立ち直ってきたというひとつの象徴ではないか。

そのほかに、金融の面で強調したいのは、FBの市中公募が決まったことでFBとTBだけですでに40兆円のマーケットができている。これが3~4月には70兆円くらいになると思うが、このように市場が大きくなっていけば、多少国債の発行が増えても、市場で吸収されていくものだと思っている。

円の国際化がそうしたかたちで実現してきているということは、円がかなり使い勝手のよい通貨になりつつあるということだと思うし、為替市場をみても、ここ数ヶ月は、ドル、ユーロ、円のせめぎ合いといった現状ではないかと思う。その中で、円が終始強い立場にあるといったことは、これはやはり、日本への信認があると考えて良いかと思っている。

これからの課題は、そうした円を中心とした国際金融市場をもっと大きくし、かつ流動化して、円の国際化が進んでいくことになれば、貿易決済、あるいは資本取引にしても、多少の円高で大変だと騒がれないで、抵抗力が付いていくのではないかと期待している。そうしたことを考えると、この1年というものは、経済面でかなり大きな変化があった1年だなと思っている。

【問】

今のお答えの中でジャパン・プレミアムについてお話されたが、実際にロンドンのインターバンク・マーケットではディスカウントになってきている。それについてのお考えを聞かせて頂きたい。

【答】

このところ、Y2Kでちょっとプレミアムが出たことはあるが、今ディスカウントになっているとすれば、それは、これから円が、日本が買いだということの現われのひとつとみて良いのではないかと思う。

私も去年の初め頃から、自己査定をして、(不良債権を)消していかなければいけないとか、あるいは再編を進めなければいけないとか、随分そうしたことを言ってきたつもりであるし、ペイオフの問題を含めて、グローバル・スタンダードの、どこへ出しても対等に競争のできる銀行を作っていかなければいけないということを言ってきたつもりだが、1年経ってみると、そうしたものが少しずつ進んだなと思う。

これは、金融もそうだし、これからは構造改革が私どもの課題の最大のものだと思う。IT産業がかなり動き始めているし、日本人は元々想像力もある国民だと思うので、そうしたものが大きな企業だけでなくて、自分達の力で新しい産業を作っていくということが今起こりつつあるような気がする。そうしたものが成長していけば、さきほどから申し上げている「デフレ懸念」というものが消えていくのではなかろうかと思っている。

【問】

今のお答えに関連して、ソニーとかイトーヨーカ堂といった業態が決済銀行業務に強い関心を持っているが、金融再生委員会等、政府サイドはこの問題についてやや慎重である。小畑理事は先日の国会答弁で前向きなことをおっしゃっていたが、総裁ご自身の意見如何。また、68年振りにアメリカで金融制度改革法が成立し、これをきっかけに証券も銀行も生保も保険もあらゆるものが業務を行えるという、明らかにヨーロッパを意識した強い銀行になっていこうとする動きが出ているが、その日本への影響や総裁ご自身のお考えをお伺いしたい。

【答】

イトーヨーカ堂とかソニーとか、個別の問題についてのコメントは差し控えさせて頂くが、金融サービスのあり方についての一般論ということで言わせて頂ければ、こうした決済専門銀行とかインターネット銀行とか、あるいはインターネットによる証券取引といった新しいタイプの金融サービスのあり方を模索する動きが出てきた。こうした動きは、金融サービス業における競争をさらに活発化させていくとともに、利用者の選択の幅を広げるという点でも、望ましい動きではないかと思う。

ただ他方で、事業法人が銀行を保有するということに関しては、最近金融制度改革が行われたアメリカでも、利益相反が生じやすくなるというようなことや、銀行に供与されるセーフティネットが事業法人の競争条件を歪める懸念はないのか、といったような議論がされているようである。

日本でも、新しい金融サービスが構想される場合には、こういった点も含めて、金融サービス業者に対する信頼を確保するための仕組みを工夫していくことが、金融市場の健全な発展を図る上で大事なことではないかと思っている。私としては、良い動きだと思っている。

(アメリカの金融制度改革法については、)随分長い間、アメリカもこれを守ってきたのだろうが、金融サービス業務というものが非常に多角化し、利用者の立場を考えても、これまで幕をそこに立てていた必要がなくなってきたということではないかと思うが、日本でもそういった方向がこれからとられていくのではないかと思う。

【問】

積み上幅1兆円とか、じゃぶじゃぶの資金供給というのは、2000年問題の年末越えといったことが相当強くあったと思うが、年明け後のスタンスはどのようなものとなるのか、基本的な考えを伺いたい。

【答】

1兆円というのが、暫く固定しているように捉えられ——確かにそうだったのかもしれないが——これを少し動かすと、色々余計な波乱や思惑を呼ぶといったことがあったのだと思う。金融市場局で、毎朝、市場の動きをみて決めるのが原則であるから、年内は十分に資金を供給しなければならないが、余ってくれば、1兆円でなくても良いということは十分起こり得ることだと思っている。

以上