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総裁記者会見要旨(9月19日)

2000年9月20日
日本銀行

―平成12年9月19日(火)
午後 3時から約45分間

【問】

最初に、今日午前中官邸に行かれて総理にお会いになったと聞いているが、差し支えなければ、そのご用向きと総理との間でどのようなやり取りがあったのか、お教え願いたい。

【答】

特にご用向きというほどのことはないが、総理はずっと夏から海外に行かれたりして、お会いして直接お話しする機会がなかったので、こちらから申し入れていたし、向こうからも丁度この日ならということで、今日午前中伺った訳である。閣議が少し延びたりして、あまり時間はなかったが、久方ぶりにお会いして色々お話をしてきた。主として、内外の金融経済の動きについて、私の方から説明をして、聞いて頂いた。

【問】

ゼロ金利解除に関しては、何かやり取りされたのか。

【答】

それについても勿論説明したが、そのことは前にも書面でお届けしてある訳だし、その後もマイナスの影響というのは出ていないから、冷静に市場は受け止めているということで、総理も納得しておられるようだった。

【問】

先般、4−6月のGDPが出て、数字自体は良い数字かもしれないが、やはり公共工事に頼っている部分が多く、民需へのバトンタッチがなかなかうまくいかないとか、最近の景気を示すデータをみても、足許の景気がどうも弱いのではないかという見方が一部で出ているようである。総裁ご自身は足許の景気、それから今後の景気の先行きについて、どのような考えを持っているか、お聞かせ願いたい。

【答】

景気の現状はやはり企業収益が改善しており、設備投資は、この間出た4−6月のGDPの数字をみると、やや下がっていたようだが、機械受注の数字を見たり、生産の数字を見たりすると、緩やかに回復していることは間違いないと思っている。

具体的に申し上げると、輸出や設備投資の増加を背景にして、生産は増加を続けており、企業の収益や業況感も改善基調を維持している。一方で、家計の所得環境は改善基調を維持している。厳しい中にあった訳だが、企業活動が回復するに伴って、雇用者所得の減少傾向には歯止めがかかっている。雇用自体も失業が頭を打ち、求人が増えているし、一人当たりの給与も6−7月は賞与を入れても増えている。そういうことで、雇用者所得の減少傾向には歯止めがかかったと考えて良いと思う。

このように、企業部門の改善が徐々に家計部門にも波及してきている。景気は、緩やかに回復を続けていく可能性が高いとみている。足許特に弱いという感じは、私は持っていない。

4−6月のGDPについて言えば、全体として2四半期連続で高めの成長となった訳であるが、個別項目をみると四半期毎の振れが大きく出ている面があるが、1−3月と合わせて均してみると、国内民間需要が経済活動を支えている姿となっていると思う。

物価面をみると、需要の弱さに由来する潜在的な物価低下圧力は大きく後退している。ただ、技術進歩や流通合理化の影響などで、物価は、当面、概ね横這いないしやや弱含みで推移していくものと考えている。ここへきて、原油が上がったりしているので、そういうものはいずれ物価の指数にも出てくるかもしれない。

ゼロ金利政策解除の影響については、金融資本市場は総じて落ち着いて推移しており、市場では冷静に受け止められたものと思う。金融情勢全般あるいは実体経済活動に与える影響については、現時点で判断することはまだ時期尚早かもしれないし、引き続き情勢を注意深く見ていきたいと思っている。当面の景気動向については以上である。

【問】

次に、先般のゼロ金利解除の際には、「デフレ懸念の払拭が展望できる情勢」をひとつのメルクマールにして政策変更を行っていた。ある意味で、外から見ると非常にわかり易いかたちになったと思う。今後の金融政策の運営に当たって、次の目標としてこんなものがメルクマールになる、というようなものが何か今の時点であるのか。そういうものを常に掲げて今後の金融政策を行っていくのか、その辺の考え方を伺いたい。

【答】

ゼロ金利政策解除の際の公表文でもお示ししたが、当面の金融政策運営面に当っては、金融緩和スタンスは継続していく。また、物価の安定を確保するもとで、引き続き景気回復を支援していく方針であるということを申し上げたが、引き続きそのスタンスは変わっていない。

したがって、当面は、民間需要の自律回復力の強さとかその持続性、そのもとでの物価の動向などを注意深く見守っていきたいと思っている。

その他、当然のことではあるが、金利機能を活かして市場の活性化を図っていくということが、これからの私どもの課題のひとつだと思う。構造改革などをするといっても、やはりそれを支えていくのはこういう競争原理、あるいはそういうことを通じて生産性が上昇していくということが必要ではないかと思う。

先日の決定会合の議論については、議事要旨をお読み頂きたいと思う。

【問】

日銀として物価についての総合的・総括的な考え方を近々示される用意をして、かなり議論を詰めてきているかと思うが、近々出されるものの中で、日銀としては、例えば米国FRBのように物価についての見通しとかを今後外へ公表する考えはあるのか。

【答】

物価の安定に関する総括的検討については、先般他の場所でも聞かれて答えたが、10月には決定会合で了承を得た上で、取りまとめ結果を公表したいと考えている。

お尋ねの見通し公表問題についても、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」という金融政策の目的を十分果たし、同時に金融政策運営の透明性を高めていくためにどのような方策が考えられるのか、といった観点から、いま真剣な議論が行われているところだと申し上げられると思う。

したがって、この段階で、取りまとめの内容、方向性について申し上げるのは差し控えたいと思う。

【問】

ユーロが非常に安くなっている。欧州も蔵相会議を開いて色々対応策を考えているようであり、今週末のプラハでのG7の会合でも、当然この辺が議論になると思う。その背景については、欧州からアメリカへの資金シフトがユーロ安をもたらしているとか、色々な議論があると思うが、少なくとも欧州経済のファンダメンタルズが非常に良いにも関わらずユーロが安いということについては、総裁はどういう受け止め方をされておられるか。また、その裏返しとして対ユーロでみて円高になっているが、これが実体経済に与える影響をどうみているのか伺いたい。

【答】

為替相場の動向や水準の評価については、ちょっと具体的なコメントは差し控えさせて頂くが、ユーロ安というのは、私もいまひとつ理解が十分出来ない。色々な政治的、経済的背景が後ろにあるのだと思うけれども、どうして他国の景気に比べて少し経済の数字が良くなかったというふうに見られたのか・・・。それと欧州からかなりアメリカに直接投資などが出ているということも聞いているし、そういったものが重なって安くなったのだろうと思っているが、これも私は確信を持っていない。今度プラハへ行き、ヨーロッパの中央銀行の幹部の方々に直接お聞きしてみたいと思っているところであるので、帰るまでちょっとお待ち下さい。

【問】

長期金利の問題について少しお聞きしたい。今日も首相との会談の後、記者団の質問に対して総裁は、長期金利は今落ち着いているとコメントされたようだが、良い長期金利の上昇、つまり景気の回復期待からの上昇というのがある一方で、他方で国債増発による国債の需給悪化懸念から長期金利が上昇するという問題もある。そういう意味では、補正予算で、国債増発の議論も出始めている中で、先行き長期金利の上昇が回復過程にある景気に対して悪い影響を与えるのではないかという懸念がある。その辺を含めて長期金利の問題について総裁がどうお考えかお聞きしたい。

【答】

長期金利は今のところは落ち着いていると思うが、基調的な動きとしては、先行きの景気とか物価についての見方を反映して変動していくものであるし、短期的には、株との関係とか様々な思惑があって変動するものなので、そういった意味でのコメントは差し控えたいと思う。

仮に長期金利の上昇が景気や物価動向を反映している場合、行き過ぎには留意しつつも、受け容れていくべきものであろうと思う。景気が良くなって金利が上がっていくのはある程度やむを得ないところだと思う。一方、将来の財政運営に対する懸念が強まって、そこから金利が上がっていくということであれば、財政運営のあり方について、国民的な観点から見直していくきっかけとすることが適当ではないかと思う。

どちらのケースでも、金融政策でもって長期金利を直接コントロールしようとすることは適当でないし、また可能でもないと思う。

いずれにしても、先程も申し上げたように、私どもとして心がけていくべきことは、やはり市場の拡大、流動性の強化ということを図っていくことにより、財政の赤字、あるいは国債等について吸収力を持った市場にしていくことが大切ではないかと思う。

【問】

財政の懸念から長期金利が上がるとすれば、財政運営のあり方について国民的な観点から見直していくことが大切だということを、今日会った森首相にも伝えたのか。

【答】

伝えていない。まだ、補正もはっきり出ていないし、来年度予算のことも分からないので、ものが言える段階ではないと思う。

【問】

いずれは、こういった見方を伝えていくつもりか。

【答】

それは情勢を見たうえでないと分からない。ただ、我々の役目としては、やはり国債、債券を──あるいは株、手形もそうだろうが──吸収できる市場を作っていくということが、これからの大きな課題だと思う。さっきから言っている市場の活性化ということも含まれていると考えていいと思う。例えば、国債をひとつとっても、日本は今360兆円、——世界全体の残高の36%と言われている。一方で、誰がその国債を持っているかを見ると、他の国と比較して目立つのは、外国の投資家が持っているのは6%で、これは非常に低いし、家計が直接持っているものもアメリカなどと比べると非常に少ない。投資信託などを通じて、あるいは銀行に預金して銀行が国債を買っているといったような、間接的な投資になっているのだろうと思う。そういうことも、これから直接投資のウェイトがもう少し増えていって然るべきではないかと。1,368兆円の家計の金融資産があって、そのうち、いわゆる現預金が55%、アメリカは現預金10%であるから、非常に高い。その代わり、債券、投資信託、株式がアメリカの場合58%、日本の場合14%しかない。こういうところがシフトして、市場を大きくしていくことがこれからのひとつの課題ではないかと思う。外国人についても同じで、外からも入りやすいようにしていくことが必要だと思っている。

【問】

三菱東京フィナンシャルグループの経営構想の発表の席上で、三菱信託銀行が公的資金の返済について検討したい、当局とも話をしていると説明したが、金融システムの再建が今どの程度まできているかという問題と絡めて、すでに一部の経営がかなりしっかりしているところについては、公的資金の返済が可能な状況になっていると考えているか。

【答】

それは、ちょっと銀行によって違うし、今再編の真っ最中であるから、どこが返せるか返せないかというのは、この段階では非常に難しいし、言いにくいことだと思う。返せる銀行があるならば返して、それから、十分それに代わるだけの自己資本を持たなければだめだと思う。そういうふうに展開していけばいいと思うが、今がいいかどうかというのは、それぞれの銀行によって違うので、何とも言えない。

【問】

重ねて伺うが、例えば日銀の金融政策についての説明の中にも、「海外経済等の外部環境に大きな変化がなければ」という留保条件がついていたと思うが、そういうところも含めて、一旦投入した公的資金を返してしまえば、また再び何らかの波乱要因があった場合に、もう一度下さいとは言い難いし、理解も得難いと思うのだが、そういうことも含めてもう一度(公的資金の返済についての総裁の考えを)聞かせてほしい。

【答】

公的資金の返済というのは、私どもに返してもらうものではないし、各銀行がそれぞれの立場で判断して返せると思ったら返してよいものだと思うが、当面やはり常識的に考えれば、再編で4大銀行、4大グループに編成替えがされていく過程で、いつかの段階でできることだとは思うが、今まだそこまで行かない前にやるのがいいのかということになると、私は分からない。

【問】

短期の金融市場では、年末に向けて大蔵省の国債の売り現先拡大による資金吸収と、即時グロス決済の導入によって市場の資金がかなり不足するのではないかという懸念が出ている。日銀としては年末に向け、どのような調節方針を採られるのか伺いたい。

【答】

年末の問題というのは──昨年はY2Kがあったが──今年はRTGSを懸念して年末越えの金利が上昇しているということだと思うが、年末越え金利の上昇というのは、例年この時期くらいからみられ始めることではないかと思う。日本銀行としては、RTGSの円滑な実現に向けて関係各機関と密接な連係を取りながら万全の対応を講じつつある状況で、今後もそれを続けていくことになると思う。

金融調節面では、現在の金融市場調節方針の下で、年末越えの取引を含めて、安定的な市場の地合いが形成されるように適切な対応を行っていく方針である。

【問】

大蔵省の売り現先に関しては、既定どおり市場で資金を調達できなかった場合は、日銀が相手となって資金を出すという形でよいのか。

【答】

(大蔵省との)話し合い(によって作ったスキーム)はそのまま残っていると思う。

【問】

先日の新聞インタビューで総裁は年内の更なる利上げを聞かれた際、否定的な答えだったと思うが、年内の更なる利上げは、総裁自身の考えとしてはありえないか、確認させて頂きたい。また、総裁は金融緩和スタンスを続けると言っているが、もし仮に更なる利上げを行っても金融緩和スタンスが続いていると考えてよいか。

【答】

先日の新聞インタビューでは、「市場には年内の再利上げの観測もあるが、どう思うか」という質問に対して、「ゼロ金利を解除したばかりだし、今の経済状態では次の利上げは考えられない。今は市場を活性化させることで精一杯だ」と答えた。8月にゼロ金利政策を解除したばかりだし、現在は金融経済情勢を注意深く見極めていく段階にあると思う。日本銀行としては、金融緩和スタンスを継続することによって、物価の安定を確保しつつ、引き続き景気回復を支援していく方針である。先週の金融政策決定会合においてもこうした考え方が多くの委員に共有されて、当面の金融市場調節方針を現状維持とするということが決定された訳である。

また、一般的には、金融の緩和や引締めの度合いというのは、経済全体の状況と照らして判断すべきものだと思う。ゼロ金利政策を導入した昨年の2月時点と比べると、経済情勢は明らかに改善してきている。企業収益や設備投資は増えてきている。このために民間の成長率見通しもかなり上方修正されてきている。このような経済の改善の程度に比べて、コールレートの引き上げ幅は0.25%と極めて小幅であり、金融面から景気回復が十分にサポートされる環境は維持されていると判断している。また、これまでのところ、金融機関の貸出姿勢とか、企業金融の緩和傾向にも、大きな変化は生じていないと思う。

日々の金融調節においては、ゼロ金利政策を解除したために、所要準備を大幅に上回る資金を市場に滞留させる必要がなくなったということだが、こうした資金余剰幅の縮小はそれ自体が経済活動に影響を及ぼすわけではないと思う。また、マネーサプライの伸び率低下には、収益の改善に伴って企業のキャッシュフローが厚くなっているということ、あるいは金融システムの不安が後退していくことによって予備的に資金を保有しておく必要性が低下してきているということも影響していると思う。こうした状況を踏まえると、マネーの伸びだけでもって、金融情勢を判断するといったことは、適当ではないと思う。

また、余談になるが、先般のゼロ金利解除に伴い、直ちに銀行が預金金利を引き上げた。家計の預貯金金利は僅かではあるが上がったわけで、私も驚いたのだが、かなり多くのご年配の友人や知人の方々から激励の手紙を頂いた。これは、金利が少し上がったからということもあるかもしれないが、やはり、明るくなったということを言いたかったのではないかと思う。年金生活者あるいはご年配の方々にとってはそれだけ明るいニュースだったのかと認識した次第である。

【問】

堺屋経済企画庁長官は、年度下期景気腰折れ懸念というか、個人消費の弱さを背景として景気の先行きについて弱気の見方をされており、冒頭の総裁の景気判断、金融政策決定会合での景気判断とはやや違いがあるようだが、そこはどう受け止めておられるのか。

【答】

私は、今度の4−6月の数字をみて、やはりこれは、1−3月が年率で10.3%、4−6月が4.2%と、色々と中身で入れ繰りがあったり矛盾があったりするようなことがあるにしても、これだけの成長は、かなり大きな成長ではないかと思う。その反動がどういうふうにくるのか分からないが、今のところ7−9月に出て来た機械受注とか生産の数字をみていると設備投資は増えているに違いないと私は思っている。消費についても——確かにまだこれから分からないが——例えば、携帯電話とかパソコンとかの伸び方をみていると相当な勢いで伸びている。それから、自動車の登録台数をみても6月辺りはかなり伸びてきているわけで、それと同時に雇用所得も伸びているということ、一人当たりの名目賃金がやはりここにきてかなり伸びてきているので、こういったものが消費につながっていくということは、まず間違いないと思う。一進一退はあると思うが。

【問】

今日、官邸に行かれた際に、「ちょくちょく官邸に行きたい」という趣旨のことを述べられたと伝え聞いているが、どうか。また、何か政府との意思疎通について、お考えがあるのか。

【答】

いや、別に。これからも必要に応じて時々訪問致しますということは、総理および官房長官に申して別れてきたが、特にどういうふうにいくかということまでは決めていない。しかし、報告をした方が良いと思った時は、出来れば、お目にかかってお話をした方が良いと、今日お会いして感じた次第である。

【問】

原油価格の急騰の影響についてお伺いしたい。これまでのところ比較的冷静に受け止めていらっしゃるようだが、今後の物価に与える影響について今一度見通しをお伺いしたい。

【答】

原油価格というと、私自身も若い頃日銀でオイルショックを経験した。オイルショックというと非常に怖い感じだが、私は、今回の原油の値上げは、70年代のものとは性格がちょっと違うのではないかと思う——これは違っているかもしれないが。これも今度プラハに行って、直接サウジの中央銀行の方々と話をしたいと思っている。OPEC諸国では、石油は国有であり、石油を売った代金が国の歳入の主たるものとなっている。それが、歳出が増えて財政が赤字になる、あるいはもう少し輸入をしなければならないので外貨が要る、外貨準備を増やしたいというようなことになると、どうしても石油価格を上げるという格好で外貨の受け入れを増やすのだと思う。そういったことで、このところ大分上がっており、供給を増やすことによって下げていくということなのだが、どの位下がっていくかは予想がつきかねており、かなり長く続くかもしれないということも感じる。

ヨーロッパなどでは、ユーロが安いところに、原油が高くなるということで、社会問題のようになったり、色々なことが起ったりしているようだが、幸いに日本では比較的円が強いのでそんなに高くならないで済んでいるということもあるし、燃料のなかでの石油のシェアが減っているということもあろうし、備蓄もあるだろうし、状況が30年来でずいぶん変っているなということを感じている。アジア諸国でも為替に響いたり、物価に響いたりすることを恐れる動きがあるようだが、今のところ日本は比較的落ち着いているのではないかと思う。

ヨーロッパはたまたまユーロ安の時に原油が上がったので、物価には響くだろうなとは思うが、もう少し情勢をみてみないとなんとも言えない。いずれにせよ、日本の場合は、原油価格の上昇が、経済や物価に与える影響は30年前と比べるとかなり減ってきているのではないかと思う。最近の上げ方が非常に急だということは、日本経済に多少影響を与えるかも知れないが——直接ではなくても海外を通じて間接に影響を与えるかもしれない——いずれにせよ、原油価格の先行き、その影響については注意深く見ていく必要があると思う。

特に前回の時は、産油国へドル、すなわちオイルマネーが集中して、産油国がそれを色々と運用するというので、OPEC通いというかサウジ通いというか、皆がお金を借りに行ったり、預金を取りに行ったりしたわけで——日本も国債を買ってもらったが——そのような、このオイルショックというか石油価格の上昇によって、世界全体の資金の流れが変るといったことは、今度はないと思う。為替についても——特定の国々で急速な変化が起こる可能性はあると思うが——世界の為替市場全体に非常に大きな影響を与えるということはまず今のところはないと、大きなものはなくて済むのではないかと期待している。もう少し様子をみないとなんとも言えないが。

以上