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政策委員会議長記者会見要旨 ( 2月 9日)

2001年 2月10日
日本銀行

―平成13年 2月 9日(金)
午後 6時30分から35分

【問】

ここ最近政府や与党の間で、株価対策に絡んで量的緩和をして欲しいといった要請が出てきたように思う。株式市場の方でもそういった期待が高まっていたと思うが、そういった要請、市場の期待と今回の措置との関係についての総裁の考えを伺いたい。

【答】

量的金融緩和を回避するためにやったというものではない。日本銀行はこれまでも、内外の中央銀行の歴史に例を見ない、非常に低い超低金利で金融市場に対して潤沢な流動性を供給してきたつもりである。

今回の措置は、金融市場調節の柔軟性を高めるということと、幅広く安定的に資金供給を行うことで、金融面から景気回復を支援する力を強化していきたいという狙いで実施したものである。その意味では、市場において流動性調達に関する安心感が更に高まって、金融資本市場全体や実体経済の安定確保に繋がるものと期待している。

量的緩和については、これをマネタリーベースなどの量に目標値を設けて、金融調節を行う方式ととらえるとすると、そうした政策運営を採用することは、今適当でないというのが、政策委員会の判断である。

【問】

今回の会合では誰がこの案を提案したのか。あるいは、委員の賛成はどの程度得られたのか。

【答】

これは議長案である。もちろん政策金利自体は0.25%ということで据え置いている。これは景気が緩やかに上昇している訳だから、もちろん輸出が減少したりして、少し景気回復のスピードが減速しているが、コールレートは平均的に0.25%にして調整していくということを前提にして、今までやってきた短期国債買切りオペ、これは返済圧力がかからないもので、もっと積極的に活用していこうということと、全店手形オペ──これも既に制度としては導入されている──を、比較的長めの短期資金を地方所在の金融機関も含めて幅広く安定的に供給していくということで、3月中にオペ対象先の選定手続を開始し、7月頃から実施することとした。

新設することを決めた「ロンバート型貸出」は、欧州などには非常に行き渡っている言葉だと思う。ブンデスバンクが長く使っていて、ECB(欧州中央銀行)も、名前は違うけれども同じことをやっているし、米国連邦準備制度にも同じようなシステムがある。日本銀行の方でどこの銀行にいくら貸すということを決めて貸すことが、これまでの銀行に対する貸付であった。今度の場合は、取引先から、「これだけの資金を貸してくれ」ということを日本銀行へ言ってきた場合に、日本銀行に担保を置いている範囲内であれば、翌日返済ということを一応の前提にして、公定歩合──新しい公定歩合だから0.35%であるが──でお貸しする。もちろんロールオーバーも出来ることになると思うが、そういう細かい条件については、次回の決定会合で決めて、3月中には実施するということで、期末に何が起こっても大丈夫なようになっていくと思っている。

【問】

ロンバート型貸出によって、短期・長期の市場金利あるいは株価に与える影響をどう期待しているか。

【答】

このようなかたちで市場への資金供給、流動性供給の安定化、困った時には日本銀行が待ち構えていて、いつでも貸してくれるという安心感があれば、それだけで市場の安定化に非常に役立つと同時に、流動性が加えられるというふうに思っている。

【問】

公定歩合はアナウンスメント効果があるが、これを引き下げたということは、日銀が景気認識を後退させたということか。

【答】

景気は、緩やかな上昇過程を辿ってきた訳だが、輸出が減ったりして、ここへきて減速が見られるということと、もうひとつは、昨年の10月末に出した「経済・物価の将来展望とリスク評価」では——別に標準シナリオの枠を変える必要はないが——海外で何が起るか分からない、内外の証券市場で変化が起るかもしれない、という大きな二つのリスクを書いていたが、その二つがかなりリアライズされて、起こってきつつあるといったような現状の情勢を考えて、こういう新しい手を加えたというふうに考えて頂きたいと思う。リスクが景気の下振れを強めていくようなことがあれば、現行のコールレートの誘導水準のもとで、金融面から景気回復を支援する力を何らかのかたちで強化する必要があるという判断をした。

【問】

「政策金利であるオーバーナイト金利は、0.25%据置き」と言ったが、公定歩合というのは、もうすでに政策金利でないという位置付けか。

【答】

公定歩合は、公定歩合である。政策金利というのは、アメリカのFF(フェデラル・ファンド)レートと同じで、実際に毎日、市場調整をしている標準のオーバーナイト物コール金利である。

【問】

ロンバート型貸出制度のために独自に金利水準を設定して、公定歩合については、据え置くという選択肢はなかったのか。

【答】

今、0.25%のオーバーナイト物コールレートというのは、安定して動いているし、これは、変える必要がないと思っている。何か起った時に、あるいは今のように下振れリスクが起こってきた時に、それに対して市場に流動性を与える道をつけるという意味では、今回のような措置が必要であったと思う。

そして、公定歩合を0.5%から0.35%まで下げたが、これによって(オーバーナイトレートが)0.35%を上回ることはない。したがって、そういう意味でも、今のコールレートが安定化していくのではないかと思っている。

【答<増渕理事>】

私から補足すると、政策金利、オーバーナイト・コールレートをどの水準に誘導するかということが、今の金融政策の中心である。

公定歩合によるロンバート型貸出を新設することによって、公定歩合はどういう意味を持つかというと、コールレート変動の上限を画すことによって、市場金利の安定を確保する。そういう役割というか機能を担うということで、あえて言えば、公定歩合の意味がこの制度を導入することによって変化するということが言えると思う。

【問】

公定歩合での日銀貸出というのは、いわゆる38条以外にも現在少額ながら残っていると思うが、その部分についても今回の措置で金利は下がるという理解でよいか。

【答】

これはごく一時的な預金保険機構等への貸出であるが、それは公定歩合になっているから、これは恐らく変わっていくと思う。

【問】

ロンバート型貸出のロールオーバー期間を次の決定会合で決めるということであるが、仮にロールオーバーの期間が長いとターム物金利の上限も設定することになるのではないか。

【答<増渕理事>】

その点については、私から申し上げたいと思う。お配りした発表文の後ろに骨子として書いてある通り、貸付期間はオーバーナイトであるが、一定の日数まで基準貸付利率によるロールオーバーを認めるということだけは、本日決まったが、その一定の日数というのがどの位になるかというのは、これから検討して、細目として決定することになる。2月28日の次の決定会合で決定するということになる。

【問】

細かい話で恐縮だが、担保について、共通担保を認めるという考えはあるか。新たに担保を設定するのか、それとも今既にある担保にするのか。

【答】

今取っている担保を移すなら移すで構わないが、これはこれの特定の担保ということになるのではないかと思う。

【答<増渕理事>】

共通担保をそのまま使うということではなくて、当面はそれと別建ての担保ということになる。ただ、将来的には担保の共通化を図るように検討していきたいと今の時点では考えている。この辺も細目として決定されることになるはずである。

【問】

一部では、公定歩合を0.125%引き下げるとの報道もあったが、引き下げ幅を0.15%にした根拠は何か。

【答】

0.15%というのは、今は15 ベーシスとか20ベーシスとか、そちらを使うことが多い。かつては4分の1とか、8分の1とかいうのがあったのであろうが、特にこういうふうに金利が低くなって、1%以下でものを言う時には、やはりベーシス・ベースでやった方が便利かと思う。金融市場の円滑な機能の維持、あるいは短期市場金利の安定化に万全を期して、金融面から景気回復を支援していくという意味で、引き下げ幅を0.15%とすることが適当であると判断した訳である。市場の動向とか新しい制度の機能を踏まえて、今後も公定歩合とコールレートのあり方については、検討を続けていきたいと思っている。

【問】

昨年8月にゼロ金利政策を解除してから、わずか半年足らずでこういった流動性供給の改善とか、公定歩合引き下げを検討せざるを得なかったことについてはどう考えているか。

【答】

これは、やはり先程申し上げた通り、リスク評価というか外部要因がかなり入ってきているが、0.25%の金利自体は、十分その機能を果たしていると思うし、特に市場でゼロ金利をいつまでも置いておくのは、資本市場経済には反する。リスクのある金を、ただで貸すということは普通の状態では有り得ない。昨年8月には、ほぼ景気の回復基調が出始めたというふうに判断した。99年2月にゼロ金利にした時に比べて──あの時のデフレスパイラルの可能性がある、あるいは大銀行が破綻するといったような時期から比べると──、遥かに昨年の春頃から安定化してきたと思っている。そういう意味でも、今また緩やかな回復が続いている訳で、そういう状況の中で、これを動かす必要はないと思っている。

【問】

議長案に対する賛成票は何票だったのか。

【答】

票数は、まだ今日の決定で言えないが、多数決である。

【問】

全会一致ではないのか。賛成多数か。

【答】

全会一致かどうかも、それもちょっと申し上げる訳にいかないが、大多数で決まった。ロンバート型貸出の方は全員一致である。

【問】

ロンバート型貸出以外の短期国債買い切り等についても全会一致ということか。

【答】

ロンバート型貸出だけについて、全会一致と申し上げて良いと思う。

【答<増渕理事>】

一つだけ補足させて頂くと、資金供給方法の改善の中では、3つ書いてあるが、──短期国債買い切りオペ、手形オペ全店買入、そしてロンバート──その内で決定を要するのはロンバート型貸出だけである。短期国債買い切りオペ、あるいは手形オペ全店買入、これは既に制度として決定されている訳で、総裁が言ったのはそういう意味である。

【問】

公定歩合についてはどうか。

【答】

公定歩合については、全会一致ではなかったが、多数決である。ロンバートというのは聞き慣れない言葉かもしれないが、ブンデスバンクは長く使っていて、今、ECBが「マージナル・レンディング・ファシリティ」、日本語に訳せば、「限界貸付制度」という名前で使っている。(状況によっては)かなり大きな金額を貸している。

【問】

仮に、全ての金融機関がロンバート借入れに切り替えたほうがよいと思った場合、日銀としての財務の健全性を損なわない程度に、それだけの資金需要に応じることができるのか。

【答】

銀行だけではなく、取引先には証券会社もあるし、短資会社もあるが、そうした日銀の取引先で、日銀に担保を入れているところであれば、ロンバートのための担保に切り替えることができるし、新たに担保を積んで借りてもらうこともできる。それは、先程も言ったとおり、一応、オーバーナイトを原則にして、必要なら4日なり5日なり転がすことができ──その場合にはどのような条件を付けるかはまた別の問題だが──、困って飛び込んできた先には、その条件さえ満たしていれば、担保の範囲内で貸せるということである。

【答<増渕理事>】

一つ補足すると、オーバーナイトレートの誘導目標は0.25%で、新しい公定歩合は0.35%で共にオーバーナイトであるから、通常であれば、それを借りるという市場参加者はいないはずである。一時的な不測の資金不足といったことが起きた時に利用しようということになろう。その上で、総裁が申したように担保が必要であるから、その担保を超えて借りることができないということで、二重の意味で、自ずから限定されると思う。

【問】

昨日、内閣府が昨年7−9月のGDPが実際にはマイナス成長であったとの発表を行ったが、これを踏まえると、実際には、日銀はマイナス成長の時にゼロ金利を解除していたということも言える。そうしたこともあって、ゼロ金利解除の判断が誤りではなかったかという議論も出ているが、どうか。

【答】

昨日、ああいう改訂数字になった──年率で7−9月がプラス1.0%からマイナス2.4%に改訂された──が、振れの大きい統計であるだけに、これだけで景気のトレンドを判断することはできないと思う。

最近の日本経済の状況についても、日本銀行としては、輸出・生産の増加スピードが落ちてきた、スローダウンがあったものの、企業収益はよいわけだし、設備投資も増え、回復のメカニズムは崩れてはいないと思っている。ただ、先程も申したように、世界経済の減速とか、内外の株式市場が不安定であるという2つのダウンサイドリスクが出てきたので、今回の措置を取ったというようにご理解いただきたい。

今後も、動きを十分注視して、更に手を打つなら打つといったことになると思う。

【問】

ダウンサイドリスクのうち、内外資本市場、特に株式市場についてはゼロ金利解除が悪影響を与えたとの議論があるが、その議論についてどう思うか。

【答】

ゼロ金利を解除したのは8月11日だが、ご覧になればわかると思うが、8月末にかけて株はずっと上がっている。9月の初めからアメリカの株が急落し、それにフォローして、日本もIT産業を中心に株が下がっていった。それをみても、ゼロ金利解除とは関係ないとご理解頂いてよいと思う。

【問】

無担保オーバーナイトレートと公定歩合の差が、今回の措置で結果的に10ベーシスポイントしかなくなったが、今後恒常的に10ベーシスポイントを維持するというように考えてよいのか。

【答<増渕理事>】

今回は公定歩合が0.35%、誘導目標が0.25%ということで、10ベーシスの差であるが、将来のことは──私が答えることではないかもしれないが──、それが固定的であるとは考えられないと思う。市場金利の水準などによっても変わり得るものだと思う。

【問】

重ねて伺うが、欧州の場合は市場金利とロンバートの差が1%ぐらいあるが、日本でもいずれはそれぐらいを目処にスプレッドを設けると理解してよいか。

【答<増渕理事>】

それぞれの置かれたマーケットの状況とか、もちろん金利水準もそうだが、どれくらい準備預金を積まなければいけないかとか、どういうふうに決済資金の流れがあるかということが影響すると思うので、これは、あくまで日本のマネーマーケットの状況に応じて、考えていくということになると思う。

【問】

今回10ベーシスポイントしかないということになると、確かに流動性の面で安定感をもたらすことは確かだが、逆に金融機関の資金繰りの面でモラルハザードを招くのではないかとの懸念もあるが、どうか。

【答<増渕理事>】

オーバーナイトレートの誘導水準は0.25%ということで、日々ご覧になれば、それから大きくはずれることがないように調節がされているわけで、今ご指摘のような点は、この格差があれば心配ないということで、決定がされたと認識している。

【問】

改めて確認したいが、教科書的にいうと、日銀の金融政策はオーバーナイトレートの操作、公定歩合の操作、準備率の操作で運営されていると理解されているが、先程、増渕理事から公定歩合の意味合いが変わったとの話があったが、今日の公定歩合の変更は政策変更ではないのか。

【答】

公定歩合を変えたのであるから、そこは政策変更と言ってよいのでは。

【問】

政策変更であるけれども、今までの公定歩合とは意味が違うということか。

【答】

ええ。

【問】

政策変更だけど今までの公定歩合とは意味が異なるということであるが、これまでも、いわゆるペナルティー的な意味合いも公定歩合の貸出にはある──例えば、破綻銀行に対する融資とかの局面で──と日銀は説明してきたと思う。今後公定歩合にどういう意味合いを持たせていくのか説明して頂きたい。

【答】

公定歩合というのはひとつのシンボル的なものかも知れない。今度の場合でも0.35%にして、そんなにたくさん駆け込んでくるとは思わない。市場の資金量もかなり豊かなのだから、大体は無担保コールで調達必要なものは調達できていくのではないか。ただ、何か起こったり、あるいは急に資金が必要だという時には、こちらの窓口に駆け込んでくることができるようにしたということだと思う。

以上