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田谷審議委員記者会見要旨 ( 2月22日)

平成13年 2月22日・栃木県金融経済懇談会終了後の記者会見要旨

2001年 2月23日
日本銀行

―平成13年 2月22日(木)
午後 5時10分から50分
於 宇都宮グランドホテル

【問】

本日の金融経済懇談会の模様如何。

【答】

経済の現状については、いくつかポイントが出たが、そのうちで2つお話ししたい。ひとつは、価格破壊が相当進行しているということ。いろいろな事例が出され、やはりこれはデフレ的状況ではないか、こうした状況には日本銀行に適切な対応を取ってほしいという要望があった。もうひとつは、世の中の人ほとんどが悲観論に陥っているが、経済についてみると暗い所ばかりではないのではないか、経済の先行きについて何らかの安心感を与えるようなメッセージが出せないものか、という要望があった。これと関連するかもしれないが、中期的に日本経済がどの程度成長出来るのかという点についても、日本銀行としての見方を出してはどうだろうか、それも経済にとってプラスに働くかもしれないというお話があった。

このほかでは、金融機関の代表者の方をはじめ、ほとんどの方から出されたのが、現在懸案になっている不良債権処理の問題。まず、ペイオフが1年後に迫ってきている状況下では、不良債権処理のスピードを早めていく必要があるのではないかということ。ただ、みなさん異口同音におっしゃったが、相手がある話でもあり、同時にかなりの数の金融機関が関係しているため、メイン行が判断してどうこうできる話でもない。時間もかかるし、様々な問題が出てくるということであった。

次に、最終処理が今までなかなか十分なスピードで進んでこなかったのは、債権の流動化が難しかった——要するにマーケットがなかった——ということではないか、との指摘が随分多くの方から出た。たとえば、競売にかけた場合、一般の方がなかなか参加できないという問題もあるし、かなり極端な価格で落札される例があるようだ。しかし土地を購入する立場からは、落札した土地を買って開発しようとしても、多くの規制をクリアするためには10年以上を要する場合もある。また、どういった値段をつければ商品化したものを売れるかというと、今度は客観的な価格付けが求められるため、競売で成立した価格も含めた事例を参考にして価格が決められる。そうすると、なかなか売りにくいといった問題を抱えているということであった。

第3に、税法上の問題もあるとのことであった。損金算入は、相手企業が完全に破綻するまでは難しいということもあり、どうしても債権がバランスシート上に残ってしまうという問題がある。最終処理をする場合は、様々な省庁が協力してスキームを考えていただきたい、という意見があった。最終処理といった場合、時として倒産ということにも結びつくので、地域経済に対する影響というものも十分に考えなければならないという発言もあった。

ここで、不良債権処理とは少し離れるかもしれないが、私がリスクテイク能力低下の原因である不良債権の処理スピードを早めなければいけないと申し上げたところ、金融機関の方から「リスクテイク活動は最大限進めようとしているが、どうしても資金需要がない。最大限の努力で優良な貸出先を見つけて、貸出を増やしたいのだがどうもそういう状況にない」という話があった。

最後になるが、ロンバート型貸出という制度について使い勝手を考えてほしい、借入に際して後ろめたさが入るような条件が設定されてしまっては困る、という話もあった。

非常に短くまとめたが、たとえば価格破壊については様々な事例を伺ったので、今後の参考にさせていただきたいと考えている。

【問】

不良債権処理について、日本銀行としてもそれなりの対応をすることが必要になるかも知れない、という発言があったが、具体的に想定している対応如何。

【答】

不良債権の最終処理が進んだ場合には、時として倒産ということも起こってくる。マクロ経済の面から仮にデフレ圧力が高まる状況が想定されるということであれば、それに対応するのが私どもの仕事の一部であると考えており、そういう意味で申し上げた。具体策を頭に描いて申し上げたわけではない。

【問】

不良債権処理に対する政策対応の時期如何。3月末に金融庁などが不良債権の最終処理の促進策をまとめようとしているが、そういったものと同時に、日本銀行が何らかの措置を取るべきだと考えているか、あるいはそういった処理が進むにつれてデフレ圧力が高まった段階で、そういう判断をすべきと考えているのか。

【答】

まだ不透明な部分が大きいと思う。デフレ圧力が高まることが想定されたら、と申し上げたが、デフレ圧力が高まってしまってはもう遅いと思う。そういうものがかなりの高い確率で予測できる段階で、考えるべきだと思う。

私が本日申し上げたかったのは、経済をあるがままにみて、何らかの対応が必要であると思ったら、如何に手段が限られていようともタイムリーに対応を採るという1点に尽きる。3月末までに、金融庁や経済産業省、国土交通省による連絡協議会が何らかの指針を出すのではないかと考えているが、そうした協議の行方を見守っていくとしか申し上げられない。その際、金融庁その他の省庁が金融機関や企業が抜本的な処理——リストラや再編といったことになると思うが——を進めるインセンティブを与えていくことになるのではないか。そうした動きを注視してみていこうと思う。

【問】

インセンティブというのは、税制や公的資金を含めてイメージしているのか。

【答】

必ずしもそうではない。経済産業省や国土交通省などは構造改革の指針を提示することが可能ではないかと思うし、金融庁や経営健全化計画に則って経営をしている金融機関のサイドとしては、経営健全化計画に絡む指針に関連したものになってくるのではないかと思う。歯切れが悪いかもしれないが、日本銀行が責任ある分野ということではないので、注意深くみていくといったことに尽きる。

【問】

それなりの対応の具体的なイメージは、とくに頭にないということだが、冒頭挨拶を通して読むと、量的な金融緩和もひとつの選択肢としてあるのかという印象を受けたが、如何か。

【答】

私は当初からそういうものを完全には否定してない。ただ、るる申し上げたように難しい。しかし、これはできない、あれはできないということを最初に申し上げるべきではない、というのが私の考えである。

【問】

具体的な対策は頭にないというが、不良債権処理に伴いデフレ圧力が高まることが予想された場合、金融緩和は当然あり得るかと思うが、量的緩和も選択肢には入っているのか。

【答】

当然そうだ。

【問】

冒頭挨拶では、量的緩和を行った場合のプラス効果、マイナス効果についてかなり詳しく話したが、量的緩和のマクロ経済への理想的な波及経路についてはどのように考えているか。

【答】

波及経路は、量的緩和と必ずしも結び付けて考える必要はないと思う。例えば、銀行の準備預金が増えたとして、その時金融機関がどのような行動を取るかはその時の経済状況によるだろうし、その時の銀行のバランスシートの状況によると思う。バランスシート上の資産がかなりの程度固定化しているという状況では、前向きな貸出は難しくなってくる。その時のバランスシートの状況、経済状況、金利の水準、債券相場の状態などすべてが関係してくるので、今、具体的に何か言えと言われても無理だと思う。

【問】

今の段階で非常に細かく言うのは難しいということだが、量的緩和と言おうが言うまいが、今、言ったようなことに効果を持たせるためには、銀行側あるいは産業側の最終処理というのが不可欠であるという認識だと思う。そういう状況ではなくて、日銀だけ金融緩和に追い込まれた場合、その効果についてはどのように考えているか。

【答】

今おっしゃられた「追い込まれる」というのは、表現として気になるが……。全ての条件は所与のものとして、日本銀行として最大限何ができるのか、メリットとデメリットを考えて、何をすべきなのかを常に考えるということに尽きると思う。

【問】

懇談会の中でも、価格破壊が進み、デフレになっているという話があったということだが、そういう状況の中で、人為的にインフレを起こすことは望ましいと考えているか。

【答】

必ずしもそうではない。私は、基本的には、先程も申し上げたように、物価がかなり低下してきているのは供給要因によるところが大きいと思う。ただ、このところ需要サイドの要因も無視できなくなってきていると思う。消費者物価指数にしろ卸売物価指数にしろ、下がっているという現象に対して、何をもって、どういう基準で評価するかというと——皆さんもご承知のことと思うが——それによって企業収益がどうなっているか、またそれに対応して所得がどう動いているか、ということがキーポイントになっているのではないか。現在のところ、2001年度の企業収益(上場企業)は、下方修正されつつあると思うが、まだプラスだと見ている。ちょっと分かりにくいのは、今年度の下期が下方修正されたことで、来年度の伸び率を押し上げてしまうことになるという点であり、このため具体的な数字は固めてはいないのだが、2〜3か月前に考えていた数字よりは低くなっているだろうと思う。ゼロ金利政策を解除した時と同じだが、企業収益と雇用所得をもって判断していきたいと思う。

【問】

先日のG7の声明では、日本に対して一層の金融緩和を求める記述があるが、すぐに新たな手段を講じなければならないという国際的な圧力が存在しているのか。

【答】

私は政策委員として、ふたつの立場のどちらかを選択することに直面している。ひとつは標準シナリオを維持してリスクの高まりを注視するという立場、もうひとつは、そもそもリスクが顕現化しているので標準シナリオの維持は難しくなってきているのではないか、という立場である。このうち私は後者を取る状況になってきたと思う。

ただ、「経済・物価の将来展望とリスク評価」ぺーパーの中で、1.9%〜2.3%という実質経済成長率を今年度の委員の大勢見通しとして出したわけだが、非常に難しいのは、国民所得統計が大幅に改訂になり、しかもベースとして使った第2四半期の数字がこれからも改訂されるという点である。そういうものを全部ひっくるめて、今の成長率が何%くらいだったら標準シナリオから下に行っているのかといったことを話し出すと、非常にこんがらがってしまうが、それらをすべて捨象し、単純に考えて1.9〜2.3%という基調としての見方を今、維持できるかというと、私は難しいと思ったので、ああいうことを申し上げた。

なお、G7で金融緩和を求められたのではないかということだが、必ずしもそうではないのではないか。声明を読んでみると、「潤沢な流動性供給を引き続き確保するべき( should continue to ensure…)」と書いてあるので、必ずしも新たに更なる金融緩和をせよとか、何らかの対応を金融政策が採るように、ということは求められていないと思う。物価が下がっているとか、いろいろなものと併せ読んで、日本銀行として何らかの対応を求められたのではないかという観測が随分出たが、素直に読めば、流動性の供給はきちんとして下さい、ということと、もうひとつは、やはり不良債権処理、金融システム問題について対応を図るべきではないか、という読み方の方が多かったように思う。>

【問】

必要とあらばいくら手段が限られていても、という話があったが、ゼロ金利政策の復活については、今現在どのように考えているか。

【答】

今現在は難しいと思う。それでは、デフレ・スパイラル的な状況が今後想定されるか、というと、確かに懸念材料があるにはある。例えば、毎月勤労統計の現金給与が前年比マイナスになっているとか、家計調査の可処分所得も12月はマイナスになっているとか、企業収益が——私は依然として来年度は今年度比プラスとは言ったが——下方修正されてきている、ということなどを考え合わせると、将来どうか、と言われると、それは分からない。

【問】

シナリオを下方修正せざるを得ない、ということであれば、ゼロ金利を解除した論理に素直に従えば、ゼロ金利に戻すべきだということではないのか。

【答】

チョイスはそれだけではないと思う。

【問】

それは、ゼロ金利は特別だ、ということなのか。

【答】

特別だということも一部あると思う。ただ、ひとつ申し上げたいのは、とんでもなく特別なことだ、とか、だから特別なことが起こらなければやらないとか、特別なことが起こらなければ解除しない、という考えは硬直的だと思う。しつこいようだが、今、与えられているオプションの中で、最大限、最適な政策は何かということを考えることが求められていると思う。

【問】

あえてゼロ金利ということでないとすると、懇談会の冒頭挨拶で、「買い切りオペ増額によって追加的に供給された信用を吸収せず、結果的にゼロ金利政策を採用したと仮定して」といった発言をされているが、これはゼロ金利政策よりも、それ以外の量的緩和的なことを先に考えるべきだということか。

【答】

必ずしもそういうことではない。ゼロ金利は、ある意味で量的緩和の必要条件かも知れない。どういう資産を日本銀行が買うにせよ、量的緩和がマネタリーベースの伸び率を高めるということを意味するのであれば、日本銀行がある程度の確度をもってコントロールできるのは準備預金であるから、量的緩和とは準備預金を増やすということになる。このケースでは、足許で資金を吸収しないこととなるので、その限りでは、オーバーナイトの金利は下がっていくわけであるから、その意味で申し上げた。

【問】

選択肢という言葉を使われたが、ゼロ金利への復帰というのも、選択肢としてはあるということか。

【答】

否定はしないということだ。

【問】

少なくとも今ではない、ということか。

【答】

今、どう考えるか、ということを聞かれたので、今現在は考えていない、と答えた。

【問】

今月末の金融政策決定会合で、審議委員から何らかの提案をする、ということは考えているか。

【答】

将来の決定会合で何を言うかとか、どういう投票行動をするか、ということは、言ってはいけないということになっている。

【問】

今の段階で、リスクが顕現化しているので、標準シナリオの維持は難しくなっているとの立場を採った場合、何らかの金融政策の変更——ゼロ金利に限らず——、緩和策を採る必要があると考えているか。

【答】

私は、あると思っている。

何らかの政策対応を、現在、取る必要があるか、といわれたら、あるのではないかと思う。そういう意味で申し上げた。

【問】

今の話は、シナリオを下げる必要がある、ということか。

【答】

シナリオ、というのは、日本銀行政策委員会の大勢見通しとして出てくるものであるから、私個人の見方とはちょっと違う。4月に、また来年度についてのシナリオというものを数字で表すことになるが、その時私が出す数字は、9分の1でしかない。

【問】

先般出した政策対応以外に、追加的な政策対応の必要があるということか。

【答】

然り。

前回の政策決定会合でどういうことを言ったか、どういう投票行動をしたか、ということは全く申し上げられないし、次回の決定会合でどういうことを言うか、ということも、申し上げられない。ただ、現在の時点で何を考えているのか、ということを申し上げている。

【問】

政策対応を取る必要があるが、ゼロ金利政策ではない、ということか。

【答】

はい、そのように思う。

【問】

量的緩和ということの必要条件にゼロ金利がある、ということであれば、量的緩和をしてもゼロ金利政策に繋がるのではないか。

【答】

なかなかの三段論法ではあるが、明日、私がどういう考えになるか、ということは保証はしない。

【問】

「今、与えられるオプションの中で、最大限、最適な方法を考える」といわれたうえで、「今、追加的な何らかの政策対応を取る必要があるのではないか」が「それはゼロ金利ではない」ということであれば、具体的にどういうオプションがあると考えているのか。

【答】

金利もあるし、それ以外もある。まだ、ロンバート型貸出制度の細目も決まっていないわけで、これも次回の会合で決めることになるであろうし、そういうことも含めてということでご理解いただきたい。

【問】

選択肢として挙げられた量的緩和とか、ゼロ金利解除とか……。

【答】

皆さんが余りにもそういうことをおっしゃっているので、「いや、難しいのだ」、「正直に私はこう思う」、ということを申し上げた。ただ、混乱させてしまったかも知れないが、そういうものは難しいが、「取りうるオプションに入っていない」ということも言えない、ということを申し上げた。

【問】

不良債権の最終処理については、経済産業省ほかの行政が指針を示したのを見極めたうえで、ということか。

【答】

指針を出すかどうか、も全くわからない。私は、何らかの指針のようなものができるではないか、ということを個人的に考えているというだけの話で、そういう報道は——少なくとも私は——見ていない。

不良債権の最終処理の段階で、企業、事業の再編ということも起こり、一段のリストラの実施ということも入ってくるだろう。そういうものを促進する、といったら、どういう手段があるだろうか。省庁として、個別の企業に対してこうあるべきだ、といったガイダンスみたいなものがあるようにも思えない。とすると、どういうことが残るかというと、日本経済としての構造改革に向けて、企業、事業の再編をする時の手がかりになるようなものが出てくるのではないか、という個人的な感想に過ぎない。

【問】

選択肢として、ゼロ金利政策は常に持っているべき、ということか。

【答】

常に持っているべきというか、否定すべきものでもないのではないか、と思う。

【問】

長期国債の買い入れということも、選択肢としてはある、ということか。

【答】

全否定はできない。審議委員になった当初からそのように発言している。ただ、その時のマーケットにもよるし……。

量的緩和というと、日本銀行がお金を刷ってみんなに配る——そんなに単純ではなくとも、長期国債を大量に買うと——マネーサプライがどんどん増えていく、ということを考えている方が多いと思う。しかし、M2+CDにしても、どういう増え方をするかは予測が難しい。

そのうえで、たとえば、ひとつのもっともありそうなケースは、ということで申し上げたが、仮に、超過準備が積み上がった状態になったとする。それによって、かなりの部分固定化したアセットサイドが、今のままの状態で、——本日の懇談会で栃木県の方々から伺った話に戻るかもしれないが——金融機関としては、極力優良貸出先を見つけて、何とか貸出を増やそうとしているのに、貸出が増えない状態にある。貸出が増えないままで、どういう経路で預金が増えるのか。

普通の状態であれば、日本銀行が日銀信用を金融機関に出せば、金融機関からすれば金利ゼロのアセットを持っていることになるから、なるべく収益をもたらす資産を持とうとする——通常の場合であれば、貸出をする。貸出をすれば、貸出を受けた先がどう使おうとも、銀行部門に預金として戻ってくる。現金と預金の合計をマネーサプライと呼んでいるわけであるから、正常な状態であれば、今議論しているような量的緩和はそもそも必要ない。金利を若干下げれば、貸出行動も増えるし、マネーサプライも増える、ということになる。今、議論しているのは、いってみればコーナー・ソリューション——極端なケース——であり、こういう状況下では、マネーサプライのコントロールが非常に難しい、ということはご理解いただきたい。

【問】

物価を判断するにあたっては、企業収益と雇用者所得の動きが重要と発言されたが、景気全体をみていくうえで注目すべきポイントは何か。

【答】

企業収益を問題にする場合は、経済のメカニズムで先行するところをみなくてはならない。現在の景気回復というのは、かなりの程度、輸出に引っ張られたものであった。そこが少しおかしくなってきた。輸出から生産、そしてそうした生産の状態を背景とした設備投資、ということであるから、こういうものを分析することが企業収益を考えるうえで非常に大事になってきている。

局面、局面によって、何に関心を集中させるべきか、ということは異なってくると思う。ゼロ金利解除——デフレ懸念払拭の展望——という時は、企業収益と雇用所得というのが、駄目押し的な確認のために、非常に大事であったということである。

アメリカなどと違って、日本では、雇用所得はどちらかといえば、景気遅行指数であり、なかなか景気と一致して動きにくい数字である。こういう点にも注目して、いろいろな数字を見ている。現時点では、景気回復局面が続くのかどうか、ということが問題になっており、仮に続くとしてもそのスピードが問題になってきているわけであるから、そういう雇用所得をもたらす先行的なところをみている。また、株価の動きも注意してみている。

【問】

信用創造機能が回復していない限りは、長期国債の買い切りをしても、効果はわからないということかと思うが、それでも何らかの政策対応が必要であり、それはゼロ金利ではない、長期国債買い切りオペも全否定はできないが、それ以外に頭の中に秘策というようなものはないのか。

【答】

私はそんなに頭は良くありません(笑)。冗談はさて置き、金融の信用創造機能が落ちている——落ちている、というと語弊があるかも知れないが——弱っている状況下で、そういうものは考えないのか、考えるのか、と言われれば、どういう状況下であっても考える。分かっていただきたいのは、ある政策手段は、ある固定の条件がないと採れないものかというと、そんなことはないと思う。与えられた状況の下で、しかも手段が限られた中で、何ができるか、ということを考えて、それをタイムリーに取っていく、そういうことをするという信認を作る、ということが大事なのではないかと思う——ちょっと偉そうなことを言ったかも知れないが。

【問】

今日も、バブル崩壊後の最安値になるなど株安が続いているが、今の株価の動きについてどう思うか。

【答】

銘柄入れ替えの問題があるので、水準についてはあまり問題にしないとして、まずはNASDAQ市場の動き——これは、最近、IT関連企業の収益の先行指標のような役割を果たしているのではないか——、また実際に出るか出ないかは別にして、持合い解消売り圧力というもの、そして収益見通しという点が、株価の動きの背景になっていると思う。そういうふうに私は理解している、という以上に申し上げることはないが、一面で、株価の動きというのは、ひとつの景気先行指標——現在の先行指標には入っていないが——ともなりうる指標であると思う。マクロの統計は、得てしてタイムラグをもってしか利用可能ではないし、マーケット情報というものも使っていくということが、私自身は必要だと思っている。

以上